docomo Today

高品質かつ経済的なネットワークの実現とOREX事業の拡大に向けて

小林 宏(こばやし ひろし)
常務執行役員 ネットワーク本部長

2023年5月12日,ドコモは決算説明会において「高品質かつ経済的なネットワークの実現」「Open RANサービスを海外オペレータに提供し,収益拡大を推進」という発表を行いました.発表内容としては「高度化・効率化・安定運用のベストミックスを追求」「ネットワーク技術の収益化」という2つの軸で説明しました.本稿ではその発表を基に,ドコモのめざす今後について述べたいと思います.

(1)高度化・効率化・安定運用 のベストミックスを追求

  1. 現在ドコモでは5Gネッワークの高度化を,5G SA(Standalone)*1の拡大とそのネットワークを活用したネットワークスライシング*2の実現により進めていきたいと考えています.また,そのネットワークで実現できるさまざまな第5世代移動通信システム(5G)ならではのサービスの企画も進めています.5Gについては,高速・大容量,高信頼・低遅延,多数端末同時接続の実現のために,「瞬速5G」(Sub6とmmW(millimeter Wave)を活用した5Gエリア)を中心としたエリア展開を進めていますが,さらに5Gの魅力を向上させるためには5G SAとネットワークスライシングが欠かせないと考えています.それに加え,5Gならではのサービスの提供に向け,4G周波数の5G化について適材適所に拡大していき,そこでの5G SAの適用も考えています.
  2. ネットワーク運用の効率化も非常に重要なテーマです.ドコモは2030年カーボンニュートラルを宣言しています.ドコモでは,電力の多くをネットワークで消費しています.そこで,基地局スリープ制御やネットワークを構成する設備自体による低消費電力化に加え,基地局への太陽光パネルの設置,またオフサイトPPA(Power Purchase Agreement)*3の活用によりCO2排出量の削減を進めています.インフラ設備については,他事業者との協調領域としてシェアリングを促進していきます.協調領域についてはさまざまな取組みを他事業者とも模索し,通信業界全体の発展に寄与していきたいと考えております.
  3. 安定運用については,通信事業者の責務としてしっかり進めていきます.

(2)ネットワーク技術の収益化

ネットワーク技術の収益化を図るため,グローバルベンダと連携し,ドコモのネットワーク技術によって最適化されたOpen RANサービスを海外オペレータに提供していきます.Open RANによりさまざまな機能を構成要素ごとに組み合わせることが可能となり,市場の多様なベンダ製品を柔軟に取り込むことができるようになることで,ネットワークをベンダによる制約を受けることなく狙い通りに,また低コストで実現することが可能となります.そのようなシステムの導入を世界のオペレータが望んでいます.そこにドコモは応えます.

以上のようなさまざまなことを実現するため,組織体制を変えました.ネットワークの構築運用組織とR&D組織を一体化することで,ネットワークの高度化・効率化・安定運用を迅速に実現できるようにしました.具体的には,無線ネットワークとコアネットワークの開発部署を中心にネットワーク本部と一体としました.この組織再編により,OREX(Open RAN Ecosystem Experience)*4事業の拡大に寄与するさまざまな機能の実現を加速することもできます.

そして,ネットワーク品質についても,従来の設備監視を中心としたネットワーク運用からネットワーク全体のサービス疎通確認を中心としたサービス監視に重点を変えます.そうすることでサイレント故障への対応強化や被疑箇所の早期発見を図り,安定した通信サービスの維持に努めていきたいと考えています.

ここで述べたことは直近の未来の内容でありますが,さらに将来の技術についてはR&Dイノベーション本部で引き続き検討をしていきます.

ネットワーク本部とR&Dイノベーション本部は密に連携し,引き続き日々進化をし続け,世の中の発展に寄与していきたいと考えています.

  1. 5G SA:5Gのシステム構成の1つ.5G無線基地局と5GC(5G-Core)で5Gを提供する.すべて5Gシステムのため単独(Stand-Alone)構成と呼称される.5G特有の機能を利用可能.
  2. ネットワークスライシング:ネットワークインフラ上に,特定のネットワーク機能とネットワーク特性を提供する論理ネットワーク(スライス)を構成するネットワークアーキテクチャ.異なる要件をもつユースケースやビジネスモデルに特化したスライスを作成して提供・運用することで柔軟なサービス提供を可能にする.
  3. オフサイトPPA:太陽光パネルなどを用いた発電を発電事業者が用意する敷地で行い,その電力を,送電網を経由して使用,購入する契約.
  4. OREX:ドコモと多様なグローバルベンダが連携して提供するOpen RANサービスブランド.
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