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docomo Open House'24―共創プロジェクトを、ここから一緒に。―

01. まえがき

  • ドコモは,「docomo Open House'24―共創プロジェクトを、ここから一緒に。―」を ...

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    ドコモは,「docomo Open House'24―共創プロジェクトを、ここから一緒に。―」を,東京国際フォーラムで2024年1月17日から18日まで,オンライン上で2024年1月17日から2月29日まで開催した.本イベントでは,5G Evolution & 6Gに代表される通信技術をはじめ,コミュニケーション,都市デザイン,交通,生成AI,メタバース・XRといった技術を紹介した.

    2021年以降,本イベントはオンライン上でのみの開催や完全招待制での開催としてきたが,今回は特設サイトから申込みをしたお客さまも会場での参加が可能な形での開催とした.

    本稿では,本イベントの開催模様と,いくつかの展示について解説する.

02. 東京国際フォーラム会場展示

  • 本イベントでは,東京国際フォーラムにおいてパートナーおよび ...

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    本イベントでは,東京国際フォーラムにおいてパートナーおよびドコモグループによる31の展示を行った(表1).今回のイベントでは,「ハテナって未来をよくするヒントだ。」をキーメッセージに,それぞれの技術を開発する起点となった,開発者の志を表現した「問いパネル」を掲示し,その問いを通じてドコモがパートナーとともに創り出していく未来像を展示した.また,会場には開発中のさまざまな機器・装置を設置してデモを行い,それぞれの技術やサービスを体感することができる展示を行った(写真1,2).

    本イベントは,テレビ放送在京キー局におけるニュース,情報番組をはじめ,合計16番組で取り上げられるなど,大きな注目を集めた.

    また,今回は特設サイトから申込みをしたお客さまも来場することができる形としたが,申込み開始からおおよそ1カ月で満席となるほどの好評であった.

    会場では,エントランス付近に本イベントのキービジュアルおよびステートメントを配置し,共創創出への期待を発信した.また,2025年に開催される大阪・関西万博に向け,NTTグループのパネルやパビリオンのミニチュアモデルを設置し,大阪・関西万博に向けたNTTグループの取組みを紹介した(写真3

    また,エントランスから入場してすぐの場所にプロローグシアターとして大型の映像スクリーンを配置し,佐藤 隆明常務執行役員(CTO)R&Dイノベーション本部長による「Welcome Speech」を上映し,パートナーとドコモグループとの共創に向けた志を発信した.

    各展示ブースでは,それぞれの展示技術を開発する起点となった,世の中に対するふとした疑問を「問い」として記載した「問いパネル」を掲示することで,来場者の展示技術に対するイマジネーションを広げ,技術者ではない者にも分かりやすく伝わるよう工夫を行った(写真4,5).また,お客さまとの対話を重視した展示会をめざし,時間帯ごとの来場者数に上限を設けることで,説明員からの丁寧な説明やデモを実際に体験することができるよう来場計画を設計した.

    また,会場の出口付近では,すべての展示の問いパネルを並べた空間を用意し,実際に見た展示を思い出し,技術開発・共創への思いを持ち帰ってもらうことで,今後のさらなる共創へ繋がるような工夫を施した.

    表1 展示リスト
    写真1 装置(左:草刈り機,右:どこでも電磁障害調査ツール)
    写真2 装置装置(左:ロボット遠隔保守 ,右:SISOチャネルサウンダとMIMOチャネルサウンダ)
    写真3 エントランス
    写真4 会場の様子、写真5 会場に展示した問いパネル

    なお,本会場では来場者にはアンケートの回答をお願いした.そのアンケートにおいて好評であった3つの展示について,以下に紹介する.

    (1)AIと人間がシームレスに共存するメタコミュニケーション空間

    ドコモは,自分自身の個性を再現した分身NPC(Non Player Character)*1や,自分に寄り添ってくれる個性豊かなNPCなどを用いて,メタバース上での新しいコミュニケーションの形に取り組んでいる.これは,「人間とAIは親友になれるのか」という開発者が感じた問いから生まれた取組みである.自分の分身NPCを介して他ユーザと仲良くなるきっかけを作ったり,NPCに記憶をもたせることでNPC自体と仲良くなったりするなど,AIと人間が持続可能な関係性を築ける世界の実現をめざした技術である.

    これを実現するために,個人性を再現する「Another Me®」構成技術群(zero/few-shot音声合成,個人性再現対話,Another Me基盤など),人に寄り添い音声で対話を行うための技術群「LLM付加価値基盤[1]」「音声DX基盤[2]」「顧客理解技術」などを開発している.

    本展示では,メタバースサービスのMetaMe上で実際にNPCと会話をするデモを行った(写真6,7).仮想空間上に現れる「おこじょ」のキャラクターと会話するデモでは,ユーザの悩みに前向きな回答をするような寄り添った会話のデモが好評を得た.

    写真6 MetaMe、写真7 展示風景

    (2)FEEL TECH®―人間拡張基盤®を用いた味覚の共有―

    人が伝えたい想いや気持ちは,自覚している顕在意識だけであり,一般的に意識全体の10%程度と言われている.そこで「伝えたいことが,きちんと伝わる世界がつくれないか」という問いへの1つの取組みとして,ドコモが開発した「人間拡張基盤[3]」と,明治大学総合数理学部宮下芳明研究室とH2L株式会社が研究開発した味覚を再現する技術を連携させることで,相手の感じ方に合わせた味覚を共有する技術を開発した.

    本技術は,味覚に関するデータを把握するセンシングデバイス,相手の味覚に合わせた味に変換し共有する「人間拡張基盤」と,味覚を再現するアクチュエーションデバイス*2の3つで構成し実現する.具体的には,伝えたい味をセンシングデバイスで分析し,また共有する相手の味覚の感じ方を約25項目のデータを基に人間拡張基盤上で独自アルゴリズムを用いて推定し,それらのデータを用いることでアクチュエーションデバイスを通じて,相手に伝えたい味として再現する.

    本展示では,母親が作ったトマトスープの味を外出中の娘に伝送し,娘が味見を通じて感じた味を母親に共有するという味覚の共有が体験できるデモを行った.まず,来場者が味覚に関するアンケートに回答し(写真8,9),その結果を基に「人間拡張基盤」で個人差を変換し,娘が感じたトマトスープの味を来場者に合わせ再現して味わってもらった.

    本展示は,来場者だけでなくメディアからも大きな注目を集め,数多くのテレビ番組やWebニュースで取り上げられた.

    写真8 タブレットでアンケートに回答、写真9 展示風景

    (3)LLM付加価値基盤が実現する業務変革

    ChatGPTの登場以降,さまざまな企業が業務改革に向けたLLM活用に取り組んでいる.しかしその一方,汎用的なLLMでは社内独自の情報や専門知識を回答できない点や,非倫理的な発言・権利侵害・情報漏洩など,LLMをビジネス活用する上で信頼性・安全面に課題がある.このような課題を解決し,「ビジネスの現場に寄り添う生成AIはないか」という問いに答えるため,ドコモはLLMを選択できるようにして利便性を向上させ,また,倫理面での安全性を確保できるLLM付加価値基盤を開発した [1].倫理チェック機能により,一般的な非倫理的表現に加えて,企業発言としてリスクがある表現を含むか否かをチェックすることが可能である.

    本展示では(写真10),ドコモのコーポレートサイトの「よくある問い合わせ」を学習した「tsuzumi」によるデモを行い,ドコモのサービスについての問合せ(「irumoに関して教えてほしい」など)に正しく回答できることを示した(写真11).また,倫理チェック機能については,LLMが生成した出力(生成文)に対して非倫理的な内容を含むかチェックした上で,生成文がどの非倫理カテゴリに該当する確率が高いかや生成文のどの箇所が該当するかを表示するGUIのデモ動画を展示した.

    写真10 展示ブース、写真11 デモ画面(イメージ)
    1. NPC:ゲームなどにおいて操作者が操作しないキャラクターのことを指す.
    2. アクチュエーションデバイス:センシングデバイスが外界の物理運動などを感知して信号に変換する装置であるのに対して,アクチュエーションデバイスは内部の信号に応じてモータなどの物理運動を発生させ外界に働きかける装置全般を指す.

03. オンライン展示

  • 本イベントでは,東京国際フォーラム会場での展示だけでなく,オンライン上にも ...

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    本イベントでは,東京国際フォーラム会場での展示だけでなく,オンライン上にも特設サイトを開設した.このオンラインでの展示では,会場に足を運ぶのが難しい海外の人向けに日英切替えボタンを配置し,すべての展示の英語での閲覧を可能とした.

    また,トップページには31の技術展示について「問いパネル」(写真12)を配置し,それらのパネルを各技術展示の詳細情報ページへのリンクとした.また,その先の各技術展示のページでは,着目した世の中の課題や開発者の展示技術に込める思いを伝えるとともに,展示技術に関する取組みの内容を紹介した.さらには,「技術説明資料」および開発者自身が展示技術について解説する「解説動画」を掲載し,サイトへの訪問者に,展示技術を分かりやすく伝えるよう工夫を行った(写真13).

    写真12 問いパネル、写真13 個別展示ページ

04. あとがき

  • 文献

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    • [1] 駒田,ほか:“ビジネスの現場に寄り添うLLM基盤技術,”本誌,Vol.32,No.1,Apr. 2024.
    • [2] 千葉,ほか:“音声DX基盤が拓く音声データの活用,”本誌,Vol.32,No.1,Apr. 2024.
    • [3] 宮浦,ほか:“新しいコミュニケーションを実現する人間拡張基盤,”本誌,Vol.31,No.4,Jan. 2024.
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