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国交省が説くトラック事故の再発防止と予防策

2019年10月28日

国交省が説くトラック事故の再発防止と予防策

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トラック運送の安全を巡る課題

トラックによる貨物運送は、日本の物流の中心にあります。公益社団法人 全日本トラック協会の報告書「日本のトラック輸送産業-現状と課題-2019(*1)」によれば、国内貨物の総輸送量は年間約48億トン(2017年度)で、トンキロ(*2)換算で4,150億トンキロ(同)に上り、そのうちのトラック輸送分担率はトンにして全体の約9割、トンキロでは約5割におよぶといいます。

1 参考:別ウインドウが開きます全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業-現状と課題-2019」
*2 トンキロ:トン数に輸送距離を乗じた値で、輸送の仕事量を表す単位。

こうしたトラック運送の業界において、大きな課題のひとつとされているのが、運行の安全確保です。上記の「日本のトラック輸送産業-現状と課題-2019」のなかでも、安全対策は、業界の最重要課題と明言されています。

これまでも行政(国土交通省)と全日本トラック協会などの業界団体、そしてトラック運送事業者は一体となって重大事故の削減に取組み、過去数年来、事業用トラックによる死亡事故(事業用トラックが第1当事者となる死亡事故)は減少傾向にあります(図1)。

図1:事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数推移

図1:事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数推移

※上記件数は、軽トラックを除いた件数
出典:警察庁「交通事故統計」をもとに編集部で作成

また、2019年に入っても、この死亡事故件数は減少傾向を示し、1月から5月の累計で85件と前年よりも8件減らしています(図2)。

図2:事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数推移(2019年5月までの数値)

図2:事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数推移(2019年5月までの数値)

出典:別ウインドウが開きます全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業-現状と課題-2019」
出典:別ウインドウが開きます警察庁「交通事故統計(月次)」(2019年5月)

こうした流れを加速させる一手として、国土交通省(国交省)ではドライバーによる過失の一層の低減をトラック運送事業者に求めています。その背景には、重大事故の絶対数こそ減っているものの、「ドライバー(乗務員)に起因する重大事故」はあまり減っていないという問題があるようです。

重大事故の3割は「乗務員に起因」

国交省が2019年1月に公表した「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(平成30年度)[第2分冊](*3)」によると、2017年度中に発生した、自動車運送事業にかかわる重大事故発生件数は5,305件で、うち1,894件(全体の35.7%)が事業用トラックによるものだったといいます(図3)。

*3 参考:別ウインドウが開きます「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(平成30年度)[第2分冊]」

図3:事業の種類別の重大事故発生状況(2017年度中)

図3:事業の種類別の重大事故発生状況(2017年度中)

出典:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(平成30年度)[第2分冊]」

また、上記の図3を見ると、重大事故のなかで「乗務員に起因するもの」が、1,930件と全体の3分の1以上(36.4%)を占め、事業用トラックにおいては、乗務員に起因する重大事故件数(1,003件)が全体(1,894件)の半数強(53.0%)を占めていることがわかります。

ここでいう「乗務員に起因する重大事故」とは、ドライバーの「運転操作不良」(=運転ミスや危険運転など)や「乗務員の状態」「健康状態」「積載物」「応急処置(のあり方)」などによって引き起こされた重大事故のことです。国交省によれば、こうした重大事故件数は、過去10年近くの間、バス、ハイヤー/タクシー、そしてトラックなど、すべての自動車運送事業において横ばい、ないしは増加傾向が見られるといいます(図4)。

図4:自動車運送事業種類別の重大事故発生状況の推移(乗務員に起因するもの)

図4:自動車運送事業種類別の重大事故発生状況の推移(乗務員に起因するもの)

出典:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(平成30年度)[第2分冊]」

上記の図4を見ると、事業用トラックに関しては、乗務員に起因する重大事故の発生件数は横ばいの状況にありつつも、長期的に件数の推移をとらえると、減少の傾向をたどっていることがわかります。とはいえ、絶対的な発生件数は、ほかの事業用車両に比べて突出して多く、その意味で、乗務員に起因する事故発生を抑制することは、トラック運送業界にとって非常に重要な課題であることがわかります。

その重要課題を解決するための方策は、事故対策・安全運転に関するドライバーの意識の向上や理解の促進をはじめ、乗務員の労務負荷の低減、健康管理、点呼時における健康/体調チェック、酒気帯びチェックの徹底などと多岐にわたります。

また、全日本トラック協会の「トラック事業における総合安全プラン2020(*4)」を見ると、ドライブレコーダーなどから情報を収集して、ドライバー個々の運転特性を把握したり、事故の傾向を分析したり、安全運転指導などに活かしたりすることも、事故抑制に向けた重要な取組みとされています。

こうした情報の収集と活用の大切さを唱えるのは、国交省も同じです。同省では、事故の再発防止と予防に向けて、「事故/ヒヤリ・ハット」情報を収集し、分析・活用することの重要性を唱えており、そのための手順書として「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方~事故の再発防止・予防に向けて~(*5)」を公開しています。そこで以下では、この手順書の要点について簡単にご紹介します。

*4 参考:別ウインドウが開きます全日本トラック協会「トラック事業における総合安全プラン2020」
*5 参考:別ウインドウが開きます国土交通省「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方~事故の再発防止・予防に向けて~」

事故、ヒヤリ・ハット情報をリスク管理に活かす

国交省が編纂(へんさん)した「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方~事故の再発防止・予防に向けて~」は、情報を使った「リスク管理」の手順を示した冊子です。冊子では、そのリスク管理の手順が図5のように図解されています。

図5:事故の再発防止・予防のリスク管理手順

図5:事故の再発防止・予防のリスク管理手順

出典:国交省「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方~事故の再発防止・予防に向けて~」

この冊子では、図5にあるリスク管理の手順に沿いながら、各手順を実際にどのようにして行うかが資料をもとに解説されています。たとえば、「3. 根本的な原因の分析」に関しては、「事故、ヒヤリ・ハットが発生した原因」を、以下の5つの視点で究明するよう推奨しています。

①ドライバー側の原因
②事故の相手側の原因
③ハード面の原因(車両故障など)
④周囲の環境にある原因(道路環境、天候など)
⑤安全管理・運行管理上の原因

先に示した図5にあるとおり、こうした原因究明の出発点は、分析対象となる事故/ヒヤリ・ハットに関する詳しい情報を収集することです。

冊子では、そのための方法として、ドライバーからの事故報告書/ヒヤリ・ハット報告書に加えて、当事者/関係者にヒアリングをかけたり、ドライブレコーダー映像をチェックしたりするのが良策としています。

なお、ここでドライブレコーダーが記録した全映像を点検するのでは時間がかかります。そこで、ドコモのサービス「別ウインドウが開きますdocoですcar」のように、通信型ドライブレコーダーを使って、事故/ヒヤリ・ハットが発生した前後の映像だけを自動で切り出し、クラウドなどに保管できるソリューションを使います。こうすることで、目的の映像だけを容易に集められるようになります。

原因分析の進め方

前節で述べたような要領で、事故/ヒヤリ・ハット情報を集めたのちには、それを分析して原因を究明します。国交省の冊子では、その分析方法がいくつか紹介されていますが、そのひとつに「なぜなぜ分析」があります。

これは、発生した事故/ヒヤリ・ハットに焦点をあて、それらの発生原因を、順序を追って「なぜ」「なぜ」と考えていきながら、漏れなく突き止めていく分析方法です。冊子では、この分析の進め方(書き方)について、図6に示すような具体例を使って紹介しています。

図6:「なぜなぜ分析」の進め方(書き方)例

【発生した事案】トラックドライバーCが、左折するため青信号で交差点に進入したところ、電柱の影から飛び出してきた歩行者と衝突した。

【分析の書き方例】

図6:「なぜなぜ分析」の進め方(書き方)例

出典:国交省「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方~事故の再発防止・予防に向けて~」をもとに編集部で作成

以上のようなかたちで、事故/ヒヤリ・ハットの原因を究明したのちには、それらを回避するための施策を策定して、遂行していく段階に入ります。このとき、優先して対策を講じる対象として、冊子では以下の4つを挙げています。

① 死亡事故などの重大事故の原因
② 重大事故が発生する可能性が高いヒヤリ・ハットの原因
③ 多発する事故、ヒヤリ・ハットの主な原因
④ 多くのドライバーなどの関心が高い事故、ヒヤリ・ハットの原因

また、実際の対策を作成・展開する際のポイントとして、「予算や人員体制の実情を踏まえながら、対策の実現可能性を検討すること」「対策としてドライバーに対する注意喚起・指導を行う際には、具体的に何を行うべきかを明確に示すこと」「ドライバーへの注意喚起・指導だけではなく、ハード(車両・機器の整備など)や環境(危険個所の周知など)、安全管理(運行手順の改善)などにも配慮すること」といった要点を挙げています。

潜在リスクを掘り起こす

一方、以上に示したリスク管理の手順は、すでに発生した事象(事故、ヒヤリ・ハット)に対応するためのものですが、国交省の冊子では、それだけではリスク管理としては不十分と指摘します。つまり、リスク管理を徹底させるうえでは、潜在的なリスクを掘り起こし、それに対する対策も練っておく必要があるということです。

トラック運送における潜在リスクの掘り起こし方法としては、運行ルートが決まっている場合と、そうではない場合の2とおりが示されています。このうち、運行ルートが決まっている場合には、以下のような方法によって潜在リスクを掘り起こし、対策を講じることができると冊子では説明しています。

① 事故やヒヤリ・ハットが多発している場所・場面を洗い出す。
② その場所・場面で事故やヒヤリ・ハットが多発している理由を明確にする。
③ 自社の営業エリアのなかで、同じ条件にあるところを探す。
④ 上記「①~③」について、地図に印を付けるなどして、注意を喚起する。

これに対して、運行ルートが決まっていない場合、上記の方法は使えません。そこで、さまざまな場面を想定しながら、どのような場所・場面に危険があるかを察知する訓練をドライバーに対して行います。これによって、ドライバーが同様の場面に遭遇した際に、危険をいち早く察知して、事前に避けられるようにするというわけです。

この危険予知訓練の手法として、国交省の冊子では、事故/ヒヤリ・ハット発生時のドライブレコーダー映像を使う方法を紹介しています。これは、ドライブレコーダーの映像を複数のドライバーに見せながら、衝突などが起こる直前で映像を停止し、「この先何が起こるか」「何に注意して運転すべきか」について意見を交わさせるというものです。この訓練によって危険予知の能力を向上させることができると、冊子では指摘しています。

先に触れたとおり、トラック運送の安全確保は業界の最重要課題であり、ドライバーを数々のリスクから守る施策です。その施策を強化する一手として、事故/ヒヤリ・ハット情報を活用したリスク管理を検討してみてはいかがでしょうか。

全日本トラック協会では、前出の「トラック事業における総合安全プラン2020」のなかで、事業用トラックによる「交通事故死者数200人以下(2016年累計270人)」「人身事故件数1万2,500件以下(同1万4,600件)」「飲酒運転ゼロ(同37件)」という目標を掲げています。事故/ヒヤリ・ハット情報を起点にしたリスク管理によって、この業界目標の達成に大きく貢献できるかもしれません。

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