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人手不足を追い風に変える製造業の競争力強化施策

2020年10月2日

人手不足を追い風に変える製造業の競争力強化施策

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日本の製造業が抱える大きな課題は人手不足で、さらに深刻化すると考えられます。人手不足の現状と、課題を解決して企業の競争力を強化する方策について考えます。


1.深刻化する人手不足

中小企業庁がまとめた「中小企業白書」2020年版のデータにより、中小企業の人手不足感を業種別に見ると、2013年にすべての業種で従業員過不足DI(*1)がマイナスになっています。その後もマイナス傾向は強まり続け、足元では改善が見られるものの、現在に至るまでいずれの業種も人材獲得に苦戦していることがわかります(図1)。

*1 従業員過不足DI(Diffusion Index:ディフィージョン・インデックス) 従業員が「過剰」の企業の割合(%)から、「不足」の企業の割合(%)を引いた数値。

図1:業種別従業員過不足DIの推移

図1:業種別従業員過不足DIの推移

出典:別ウインドウが開きます中小企業白書 2020年版(中小企業庁)

少子高齢化がさらに進み、労働人口の減少が加速すれば、製造業はその影響を直接的に受けます。人手不足の状況を、企業側はどのように見ているのでしょうか。経済産業省から刊行された2019年版「ものづくり白書」では、2017年12月に調査した人材確保状況を、前年(2016年12月)データと比較しています(図2)。

図2:製造業における人材確保

図2:製造業における人材確保

出典:別ウインドウが開きます経済産業省 「ものづくり白書」2019年 経済産業省によるアンケート調査(2017年12月、2016年12月実施)

製造業における人材確保状況について、「特に課題はない」と回答した企業は、19.2%から5.8%へと大幅に減少し、「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」という回答は22.8%から32.1%へと増加しています。また、94%もの企業が、人材確保に何らかの課題を抱え、人材不足が深刻化していることがデータでも裏付けられています。

2.日本の製造業を取り巻く環境

「ものづくり白書」では、このような厳しい人手不足のなかで、日本の製造業が直面している課題を指摘しています。

第4次産業革命の進展

近年では、あらゆる産業でデータが活用されるようになっています。製造プロセスや情報分析の全部または一部をIoTやAIに置き換えることで、人手を介さずに、高品質な製品を、より低コストで市場へ供給できる可能性が高まります。第4次産業革命が製造業に与えるインパクトは非常に大きく、製品の品質やコストに留まらず、これまでは実現が不可能と思われていた社会の実現が可能となり、それに伴い、産業構造や就業構造までもが劇的に変化する時代を迎えました。

資料:経済産業省 「ものづくり白書」2019年

資料:別ウインドウが開きます経済産業省 「ものづくり白書」2019年

なお、第4次産業革命(Industry 4.0)については、下記コラムで詳しく解説しております。

別ウインドウが開きます(コラム)第4次産業革命“発祥地”の今を覗いてみる

3.製造業の競争力強化に向けた 4つの方策

「ものづくり白書」では、日本の製造業を取り巻く環境の著しい変化や潮流を踏まえ、第4次産業革命下における製造業の競争力強化につながる4つの戦略が示されています。

1)プラットフォーム型サービス:市場シェアやデータを活かしたビジネスモデルの展開

製品や製造工程を通して集まる良質なビッグデータを蓄積して共有知化すれば、特定分野において他社を圧倒することができます。自社製品の高い市場シェアと、精緻な生産管理と製造技術を背景にした、質の高いサービスの提供が、製造業にとって重要な戦略となります。

2)「部素材立国」:重要部素材の強みを活かした世界市場の開拓・拡大

日本の製造業は高度な部素材に強みがあります。完成品のシェアを大きく低下させた品目においても、それを構成する部素材については60%以上のシェアを維持するものが存在し、技術力、現場力に裏打ちされた品質の高さが世界市場で評価されています。高機能部素材分野での強みを維持して生かしていくことが、日本の製造業の活路を開きます。

第4次産業革命の中核技術となるIoT、AI、ロボットなどの技術が社会に定着するには、モノづくりの強さが前提となります。今後は、モノづくりとデータの融合を進め、企業の強みとすることが、市場の開拓と拡大に必要不可欠です。

3)スキルを持った人材が活躍できる場や組織の構築

デジタル化への対応に向けて積極的に取組んでいるか、取組もうとしている企業ほど、組織改革にも積極的に取組んでいる傾向が見られます。デジタルデータの利活用を推進していくには、従業員のITリテラシーを高めるだけでなく、業務の進め方や組織・人事の在り方を見直すことが必要です。製造、IoT・AIのスキルを持つ人材を育て、彼らが活躍できる場や組織づくりを実現できるかどうかが、製造現場におけるIoT・AI活用の成否をわけます。

4)技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施

日本の製造業のなかでも、人材確保や事業継承といった課題が深刻な中小製造業においては、技能のデジタル化への対応と徹底的な省力化の実施が、企業を成長に導く鍵となります。

中小企業における製造・生産現場の技能のデジタル化への取り組みは、「技能者の勘や経験を数値化して、データベース化している」が52.1%、「技能者の動きをビデオや画像に収めている」が35.6%、「技能者の勘や経験を数値化して、機械化している」が34.7%、「人工知能を活用して、技能者の勘や経験を学習させている」が3.6%となっています。このことから、「技能のデジタル化と徹底的な省力化」に関心が集まっていることがわかります(図3)。

図3:中小企業における製造・生産現場の技能のデジタル化への取り組み

図3:中小企業における製造・生産現場の技能のデジタル化への取り組み

資料:別ウインドウが開きます経済産業省 「ものづくり白書」2019年

中小企業が、国内だけでなく、世界の製造業と戦っていくためには、ITの活用が鍵となります。日本におけるIT活用は、海外の動きに比べて遅れていることが指摘されています。海外の製造業ではIoT・AIのような最新技術を取り入れることに積極的で、事業効率や品質の向上を実現しています。また、企業規模が小さいことによる不利も解消されつつあり、「デジタル化」「グローバル化」は、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を高めていきます。企業の在り方を大きく変える可能性があるにもかかわらず、日本の中小企業は、下記の調査結果のように、半数以上が、IoT・AIなどの「IT活用」に関して消極的なのです(図4)。

図4:従業員規模別に見た、IoT・AIの導入状況(2017年)

図4:従業員規模別に見た、IoT・AIの導入状況(2017年)

資料:別ウインドウが開きます経済産業省 中小企業庁 2019年版「中小企業白書」 中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革

IoT・AIを導入しない理由には、「導入後のビジネスモデルが不明確」が最も多く、ITを使って何をしたらいいかわからないことが主な原因となっています。

図5:従業員規模別に見た、IoTを導入しない理由(2017年)

図5:従業員規模別に見た、IoTを導入しない理由(2017年)

資料:別ウインドウが開きます経済産業省 中小企業庁 2019年版「中小企業白書」 中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革

大企業では、IT活用が、生産工程の合理化や、働き方改革(多様で柔軟な働き方の導入)を目的にしているのに対し、中小企業では、これまで「暗黙知」とされて、習得までに時間を要した熟練技能を体系化し効率的な習得を可能にするために、熟練技能のデジタル化、省人化、自動化を目的にする傾向があることも考えられます。

4.技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施

企業内で技能重視という土壌をつくり、腰を据えて熟練技能の見える化、デジタル化による技術継承に取組む姿勢が、短期間に一人前の技能者を育成し、人材の定着を促します。そして、製造業の中核技術にあたる熟練技能のIT化と徹底的な省力化は、企業の生産性を高めます。

一方で、バックオフィスにおける事務作業のIT化も見逃すことができません。中小企業では、バックオフィスを少ない人員で支えている企業も多く、オフィス業務が特定の従業員に集中し、一人が何役もの業務をこなす傾向があります。このように属人化したバックオフィスの業務をデジタル化し、省人化・自動化を実現する有効な手段として、RPA(*2)が注目されています。しかも、大規模な設備投資が不要なことも中小企業にとって魅力的です。

*2 別ウインドウが開きますRobotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション

RPAは、定型的なデスクワークを自動化するものです。たとえば、メールやFAXで送られてきた注文書の内容を社内の基幹システムに転記して入力する作業など、定型的で反復性の高い事務業務の処理にRPAを活用すると、大きな省人化・自動化効果が期待できます。

また、バックオフィスに限らず、生産計画、製造、販売・物流、保守サービス、製品開発、設計など幅広い業務でもRPAの活用が可能です。人による業務をRPAに移行すれば、担当者が不在の間にも自動的に業務が実行できるようになります。

5.製造業の競争力強化への取組み

製造業の競争力強化につながる4つの戦略は、時間をかけて実現するのではなく、経営主導でスピード感と危機意識を持って取組むことが求められています。その点、中小企業には、大企業にはない、小回りとスピードがあります。これまでに製造現場で蓄積されてきた熟練技術者の知見などの「現場力」をデジタル化し、「現場力」を維持・強化することは、企業の競争力強化を、より一層加速するでしょう。

製造・生産現場からバックオフィスまで、IoT、AI、ロボット、RPAなどのさまざまなITを活用することが、深刻な人手不足を追い風に変え、現場の徹底的な省力化を進め、生産性を向上させます。人手不足の影響を受けやすい中小企業では、これからのIT活用がますます重要となってきます。

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