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“メディア情報リテラシー”が企業の存亡につながることも

2021年4月12日

“メディア情報リテラシー”が企業の存亡につながることも

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インターネットによって、企業も個人も自由に情報発信ができる今、ビジネスにおいても重要性を増す「メディア情報リテラシー」について、法政大学の坂本旬教授にお話を伺いました。


1.誰もが「メディア」としての自覚をもつべき時代に

最近、テレビや新聞、インターネットなどで「メディアリテラシー」という言葉をよく目にするようになりました。ビジネスでもプライベートでもインターネットを使う人が増え、日々多くの情報に触れられるようになった今、情報を正しく読み解く力、使いこなす力が注目されています。メディアリテラシー教育を専門とする法政大学キャリアデザイン学部の坂本教授は、この言葉を次のように説明します。

法政大学キャリアデザイン学部 坂本 旬 教授

法政大学キャリアデザイン学部 坂本 旬 教授

「メディアリテラシーとは、メディアからのメッセージを読み解く力です。メディアが発するメッセージは、誰かがある意図を持って編集していて、必ず作り手の価値観や視点が反映されています。同時に、多様な人々がそのメッセージを受け取り、多様な受け止めかたをします。そのため、同じ内容のメッセージであっても、作り手の意図通りに伝わるとは限りません。情報の受け手は、メディアからのメッセージを正しく受け取り、公正に判断するために、メディアリテラシーを高めることが必要です」

そもそも「メディアリテラシー」は、テレビなどのマスメディアが発するメッセージからの悪影響を防ぐために、教育現場を中心に広まった概念だといいます。

「ただ、現在はSNSなどを通じて個人でも簡単に情報発信できます。あらゆる個人や組織が、メディアとしての機能をもつようになったといえます。そのため、誰もがメディアとしての責任を自覚し、自分が発信したメッセージが人々にどのように受け取られるかを考えなくてはならない時代になっているのです」

2.世界的に注目されている「メディア情報リテラシー」

メディアから発信されるメッセージを読み解くのが「メディアリテラシー」ですが、最近ではこれに似た言葉として、「情報リテラシー」「ニュースリテラシー」「デジタルリテラシー」なども耳にすることがあります。これらはどのような違いがあるのでしょうか。

「これらの言葉はそれぞれ重なる部分はありますが、少しずつ視点が異なります。情報リテラシーはインターネットだけではなく、本や新聞などアナログの媒体も含めて、情報を収集・分析・評価・発信するための能力です。

ニュースリテラシーは、ニュースに特化した情報分析力です。デジタルリテラシーは本来、ITを活用するための幅広いスキルですが、最近はインターネット上の情報の読み解きなども含む概念になっています。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)ではこれらのスキルをすべてひっくるめて『メディア情報リテラシー』と呼んでいます」

ユネスコ『教師のためのメ ディア情報リテラシー教育カリキュラム(Media and information literacy curriculum for teachers)』(2011年)

※ユネスコ『教師のためのメ ディア情報リテラシー教育カリキュラム(Media and information literacy curriculum for teachers)』(2011年)

それでは、なぜ今「メディア情報リテラシー」が注目されているのでしょうか。坂本教授曰く、ここ数年で一つのきっかけとなったのは、2016年11月のアメリカ大統領選挙とのことです。

「選挙戦の中で、個人サイトやSNSなどを通じてフェイクニュースや候補者への誹謗中傷、不確かな情報などが広まるようになりました。直近の2020年の大統領選挙でも、同様のトラブルがありました」

このように、不確かな情報に振り回されてしまう人が多いことは、データにもあらわれています。

「たとえば、共和党支持者の44%が『世界的なIT企業の創業者が新型コロナウィルスのワクチン摂取キャンペーンを利用して、人々への追跡用マイクロチップの移植を考えている』などという陰謀論を信じているとの調査結果があります。さらに、スタンフォード大学が若者を対象に行ったオンライン情報評価能力調査では、10代の多くが嘘のニュースを見分けられないという結果が出ています。メディアやネットの情報を批判的に捉え、真偽を見分けるリテラシーを養うことは、世界的に急務です」

3.メディア情報リテラシーが企業の存亡につながることも

政治の世界においてメディア情報リテラシーは重要ですが、ビジネスの場ではどうでしょうか。メディア情報リテラシーの欠如が企業イメージや企業価値を損ね、ときには企業の存亡につながることさえあると坂本教授は話します。

「たとえば、大企業のCMが人種差別や性差別を感じさせる表現だと批判され、炎上するケースなどがありました。このような場合、必ずしも企業側に差別の意識があるわけではないかもしれませんが、自覚がないままやってしまうということも問題です。

まずは、企業が発信するものはすべて、何らかのメッセージとして人々に受け取られるという発想をもつことが大事です。そのメッセージが人々にどのような影響を与えるのかをよく考え、表現などを慎重に検討する必要があります。特にジェンダーや人種、民族、思想などに関わることには細心の注意と配慮が必要です」

こうした注意点は、企業の代表として、もしくは広報などの立場からメッセージを発信する場合はもちろんのこと、従業員が個人として情報発信するときにも意識する必要があります。

「SNSの個人のアカウントからの投稿であっても、偽情報の拡散や、炎上などに巻き込まれないように注意しましょう。そうしたトラブルをきっかけに、どこの企業の社員なのかなども調べ上げられ、所属企業の信用失墜につながることもあります」

4.情報の真偽をチェックする「縦読み」と「横読み」

企業にとっても、個人にとっても、メディア情報リテラシーを養うことは重要です。そこで、偽情報や誤情報に振り回されないようにするための基本的なチェック方法を坂本教授に聞きました。

「インターネットなどで情報を閲覧するときは、必ず情報源を確かめるクセをつけましょう。その上で、信頼性を判断する『縦読み』という手法があります。私は『だいじかなチェック』と呼んでいますが、以下の図のチェック項目を確認しながらWebページを上から下までスクロールして読み解いていきます」

(※)アメリカ図書館協会の「CRRAPテスト」を元に坂本教授が作成

(※)アメリカ図書館協会の「CRRAPテスト」を元に坂本教授が作成

ただし、オンラインニュースは誰でもつくれ、作者や参照、日時も捏造することができます。そこで、「縦読み」だけでは、情報の真偽の判断が難しいケースには、「横読み」も併用することが有効だといいます。

「1つのページを上から下まで見て、チェックをしていくのが『縦読み』ですが、それに対して『横読み』は、一旦そのページから離れて、ブラウザのタブを新しく開いていき、様々なページをチェックしながら、その記事の内容が信頼できるかどうかを調べていく方法です。たとえば、その記事の執筆者の公式サイトを探してどんな人なのか調べたり、引用元とされている一次情報にあたってみたり、同じような情報が他のページでもっと詳しく掲載されていないか確認したりすることで、信頼性を評価していきます。

もう1つおすすめなのが、FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ・ジャパン)の公式サイトをチェックすること。FIJは日本でファクトチェックの普及活動を行う非営利団体で、怪しいネット上の情報を検証し、その結果を公開しています。こうしたサイトを日常的に見ることで、情報を見極める目を養いましょう」

情報に接する際には、こうしたチェック方法を活用して、誰がどのような意図の元に発信したものなのか、慎重に見極めることが必要です。それは、偽情報や誤情報などによるリスク回避のためだけではなく、社会に有益なメッセージを発し、企業価値をより高めるというポジティブな意味でも重要だと、坂本教授はいいます。

「メッセージとは、送り手とのコミュニケーション手段です。これまでも有益なメッセージを社会に発することが上手な企業は、ブランドイメージをあげ、企業価値を高めてきました。今後はメディア情報リテラシーが高く、創造性ある社会的メッセージをきちんと人々に届けられる企業が、ますます評価される時代になっていくでしょう」

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