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STORY 01(牧場編)

Location Net(牧場編)

ISSUE

背景・課題

放牧の課題に、技術はどこまで寄り添えるか

ISSUE 背景・課題 ISSUE 背景・課題

屈指の透明度を誇る摩周湖の山麓に位置する北海道川上郡弟子屈町(てしかがちょう)は、酪農が盛んな地域です。JA摩周湖弟子屈町営牧場(以下、弟子屈町営牧場)では、町内の酪農家から1200頭もの若牛(わかうし)※を預かり、約900ヘクタールの放牧地で足腰の強い乳牛に育て、人工授精して酪農家に戻すという預託放牧を手がけています。放牧事業の課題について、「最も手間がかかっていたのは、頭数管理でした」と弟子屈町営牧場の牧場長・小濱威徳様は語ります。これまで約160頭でグループを作り、1日1回スタッフが2人がかりで(目視で)頭数管理していました。その際、管理頭数と実際のカウントが1頭でも異なるとグループすべての牛の認識番号を確認し、「どの牛がカウントできなかったのか」を突き止めなければなりません。広大な牧場で牛を探すことも含め、この業務負担が大きかったのです。以前より「酪農分野におけるITソリューションの可能性」について小濱様と対話を重ねていたドコモ釧路支店では、この課題解決に、無線技術や位置情報管理などの技術を応用できないかという仮説を立てました。

同社では研究開発部門と法人営業部門が組織横断的に混成チームを構成し、お客さまの課題解決に取組む「トップガン」プロジェクトを推進しています。仮説に基づき、早速ソリューション提案に向けた検討をはじめました。

※若牛(わかうし)・・・生後8カ月までの妊娠していない育成期の牛

KEY TECHNOLOGY

主要技術

蓄積された実績・ノウハウから技術転用の可能性を見極める

KEY TECHNOLOGY 主要技術 KEY TECHNOLOGY 主要技術

ドコモは、同社が展開するIoT(モノのインターネット化)サービス「ロケーションネット」をベースとした解決策を検討しました。ロケーションネットは、近距離無線技術「Bluetooth Low Energy(BLE)」を搭載したタグを人やモノに装着することで児童や高齢者の見守り、業務機器の位置把握などを可能にするサービスですが、この技術を牛の頭数管理に応用できないかと発想したのです。その方法は、放牧牛を識別している番号札(牛耳標)に専用のBLEタグを取り付け、放牧エリアに設置した検知器でBLEタグからの信号を受信し、頭数管理を効率化するというものです。しかし検証を行うにあたり、多くの問題が浮かび上がりました。電源のない放牧地では検知器にモバイルバッテリーを使用しますが、毎朝バッテリーを交換する手間が想定されます。また、タグをつけた牛の位置情報を検知するために、東京ドーム220個分の広さに相当する牧場をすべてエリア化(検知可能な環境)することがそもそも困難であることがわかりました。

トップガンチームは何度も牧場に足を運び、小濱様と対話を進めるなかで、牛が集まる「水飲み場」に注目。「水飲み場をエリア化すれば、検知の問題はクリアされるのでは」と両者のなかでイメージが膨らんだことで、実証実験への道が開かれました。

TRIAL

実証実験

技術が放牧を変えていくという手応えを得た「実証実験」

TRIAL 実証実験 TRIAL 実証実験

2017年10月から11月の3週間にわたり、選定した21頭の放牧牛にBLEタグを取り付け、「ロケーションネット」による実証実験を実施しました。実験では、検知されたタグの情報を位置情報プラットフォームに蓄積、スマートフォン専用アプリによって放牧牛の居場所を把握することができ、頭数管理を瞬時に行うことができました。ソーラーパネルを用いることで検知器のバッテリー交換の負担もなくなり、「ロケーションネット」の技術が牛の頭数管理にもおおむね活用できることがわかりました。

また実証実験を通して、新たな問題や改善事項も明確になりました。タグの落下やタグへの浸水などによる故障が原因で検知できなくなることがあり、タグの機能改善(素材強化や耐水性補完など)が必要でした。一方では、この仕組みが「入牧」や「退牧」など2〜3日かかる作業へも展開できるという期待も生まれました。

PARTNER

事業パートナーの声

技術の活用がもたらす「情報集約型酪農」への転換

PARTNER 事業パートナーの声 PARTNER 事業パートナーの声

ドコモと弟子屈町営牧場は、さらなる技術の可能性拡大へと取り組んでいます。たとえば、タグに台帳機能を付加して牛の個体情報(預託元の情報や生誕年月日、病歴など)を記録できるようにしたり、脱柵(牛のパドックからの脱走)時に捜索できる探索機能などを開発中。また、弟子屈町営牧場では今後、牛の生体情報をも把握することで、人工授精のタイミングをいち早く察知したり、病気を未然に防ぐなどの用途にも応用したいと考えています。牧場長の小濱様は、今回の実証実験について「弟子屈町営牧場の運営を効率化することだけが目的ではなかった」と振り返ります。「誰かが先陣を切って新たな技術の導入に取組むことで、それが全国の牧場、酪農家の生産性の向上や運営改善につながればいい。これは、そのための第一歩でした」。

小濱様のこうした志と、「技術で課題を解決し、その成果を業界全体に還元していきたい」というプロジェクトチームの方向性が一致したからこそ、実りある実験結果に結びついたのだと確信した瞬間でした。この一歩を、大きな産業構造の転換につなげられるよう、トップガンプロジェクトの取組みはこれからも続きます。

(取材日:2018年3月7日)

※「ロケーションネット」は2018年10月1日に「Location Net」に名称変更いたしました。

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