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ブロードバンド無線アクセスにおけるMIMO多重法を用いた5Gbit/s超高速パケット信号伝送屋外実験〜2.超高周波数利用効率50bit/s/Hzを実現する適用技術

約50bit/s/Hzの超高周波数利用効率を実現するために、以下の技術を適用した。

112送受信アンテナのMIMO多重法
264QAMおよびチャネル符号化率R =8/9のターボ符号化
3最尤判定(MLD : MaximumLikelihood Detection)注意1に基づく信号分離アルゴリズム

12を適用することにより、周波数帯域幅が100MHzのOFDM無線アクセスにおいて、パイロット信号などのオーバーヘッドを除いた伝送速度は4.915Gbit/sである。さらに、3の高精度信号分離技術を用いることにより、他の信号分離法と比較して所要受信SINRを大幅に低減できる。

この信号分離法で、特に多値変調を用いた場合にMLDで課題となる高い演算処理量を低減するために、著者らがこれまでに提案した、演算処理量削減型のQR分解注意2およびMアルゴリズム注意3を適用したMLD法( 以下、QRM−MLD (complexity reduced MLD with QR decomposition and Malgorithm)注意4法)[5]にシンボルレプリカ候補注意5の信頼度情報を用いる適応生き残りシンボルレプリカ候補選択法(ASESS : Adaptive SElection of Surviving Symbol replica candidates)注意6[6]を適用した。ASESS を用いるQRMMLD法では、象限検出注意7を用いた簡易なシンボル注意8ランキングにより得られるシンボルごとの信頼度情報に基づき、信号分離に必要なユークリッド距離注意9の計算回数を削減することにより、スループットをほとんど劣化させずに演算処理量を大幅に低減できる。前述13の無線伝送技術を用いて5Gbit/sの伝送速度を実現する場合、ASESSを用いるQRM−MLD法では演算処理量を、処理量削減を行わないMLD法の約2×1017分の1に、オリジナルのQRM−MLD法と比較して約15分の1に低減できる。

  • 注意1 最尤検出 : MIMO多重法における信号分離法の1つ。全受信アンテナブランチの受信信号を用いて、各送信アンテナブランチのデジタル変調(本稿では64QAM)における送信信号点すべての候補の中から、もっとも確からしい信号点の組合せを選択する方法。
  • 注意2 QR分解 :任意のm行×n列複素行列Hを、m行×n列のユニタリ行列Qとn行×n列の上三角行列Rの積、H=QRに分解する数学的手法。
  • 注意3 Mアルゴリズム : 各ステージ(送信アンテナ)において、N個のシンボルレプリカ候補の中からM(≦ N)個のシンボルレプリカ候補を選択することにより、順次シンボル候補の絞込みを行う方法。
  • 注意4 QRM−MLD : MLDと同様、各送信アンテナブランチの送信信号点すべての候補の中から、もっとも確からしい信号点の組合せを選択する方法で、QR分解およびMアルゴリズムを適用したもの。演算処理量を大幅に削減できる。
  • 注意5 シンボルレプリカ候補 : 各送信アンテナブランチの送信信号点候補、および推定した伝搬路(チャネル)の振幅および位相の変動量を用いて算出される受信信号点候補。
  • 注意6 適応生き残りシンボルレプリカ候補選択法 : 象限検出(注意7参照)を用いた簡易なシンボルランキングにより得られるシンボルごとの信頼度情報と累積ブランチメトリックに基づいて、信頼度の高いシンボルレプリカ候補を順次選択する方法。
  • 注意7 象限検出 : xy平面内において、原点を中心としたx軸およびy軸で区切られた4領域のいずれに位置するかの判定を行うこと。本稿の象限検出は、受信信号の同相成分および直交成分の符号の検出だけで簡単に行える。
  • 注意8 シンボル : 本稿では、誤り訂正符号化およびデータ変調マッピングを行った後の信号単位。
  • 注意9 ユークリッド距離 : 空間上に存在する2 つの点の間の最短距離。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.15 No.2に、掲載されています。