1. まえがき

「5G時代に向けた将来コアネットワーク」目次

ドコモ5Gホワイトペーパー[1]では、図1に示すように、2020年においてはサービスの高度化・多様化が進み、車・住宅・ウェアラブルデバイスなどあらゆるモノが無線でネットワークに接続し、自動的かつ知的に情報収集や管理制御を行えるようになると予想している。

図1 5Gで想定されるさまざまなサービス

図1 5Gで想定されるさまざまなサービス

図2は各サービスを端末台数とサービス要求条件により領域分けしたものである。5G時代のネットワークに求められるサービス要求条件は多岐にわたるが、現在のネットワークではスマートフォンやフィーチャーフォンのトラフィックが大半を占めている。そのため、それらトラフィック、つまり図の領域Aに適したネットワークを構築しすべてのサービスをそこで提供しているが、この領域は今後の技術や装置の発展により、領域Bに拡大していくと思われる。

図2 端末台数・サービス要求条件の拡大

図2 端末台数・サービス要求条件の拡大

一方、IoT(Internet of Things)※1サービスの展開に伴い、大量の低スペック端末で構成される「スマートメータ」「環境センサ」のようなサービスを安価に提供することが求められる領域Cや「工場機器自動制御などの産業サービス」「車車間通信による渋滞回避などの交通システム」のようなユーザ数は汎用セルラサービスのように多くはないが、遅延や信頼性などの特定要件において高要求条件を有する領域Dのサービス提供が今後求められるようになる。将来ネットワークでは、これらの広い領域にわたる多様な要求条件を持つサービスをより安価に提供できる手法が求められる。

このような背景から、無線アクセスネットワークにおいては、これまでの4G無線アクセス技術(LTE/LTE-Advanced)に加えて、さらなる高データレート化、大容量化、低遅延化を実現する技術として5G無線アクセス技術の実現が期待されている。

一方、既存のEPC(Evolved Packet Core)※2 [2]ネットワークでは端末種別や提供サービスによらず、同一アーキテクチャ、同一プロトコル制御のネットワークによりすべてのサービスを提供しているが、領域Cに属するサービスにおいては、本来不要であるハンドオーバ※3などがオーバヘッドとなり非効率となる。また、領域Dに属するサービスを提供する場合には、高い要求条件を満たすために帯域制御や優先制御といったQoS(Quality of Service)※4制御機能の拡張や高度なルーティング機能などの追加が必要となり、その影響は全ユーザに及ぶため、運用コストがさらに増加してしまうと考えられる。

このような課題を解決し、多様な要求条件を持つサービスを効率的に運用するため、ネットワークスライスと呼ばれる、端末種別やサービスによって最適化されたネットワークを複数作成し管理する技術(ネットワークスライシング)、およびサービスごとに適したネットワークスライスへの選択手法が検討されている。

本稿では、はじめに5G時代のネットワークのビジョンを示し、続いてその実現に向け検討中である5G無線アクセスの収容方式、およびネットワークスライシングの技術的詳細に関して解説し、仮想化技術を用いた制御アーキテクチャを示す。最後に、これらの技術を前提とした、標準化団体におけるユースケースおよび将来サービス要求条件、アーキテクチャの検討状況について紹介する。

  1. IoT:さまざまな「モノ」がインターネットやクラウドに接続され、制御・情報通信される形態の総称。
  2. EPC:LTEおよび他のアクセス技術向けに3GPPで規定された、IPベースのコアネットワーク。
  3. ハンドオーバ:通信中端末が移動に伴い基地局を跨る際、通信を継続させながら基地局を切り替える技術。
  4. QoS:サービスごとに設定されるNW上の品質。使用帯域の制御により遅延量や廃棄率などの制御が行われる。

2. 将来コアネットワークのビジョン

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.23 No.4(Jan.2016)に掲載されています。

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