3.2 DCNを活用したネットワークスライス選択技術

「5G時代に向けた将来コアネットワーク」目次

  1. 提供手法
    要求条件に応じたネットワークスライスによりサービス提供することを述べたが、実際にはスマートフォンや車載端末などにおいて、1つの端末で特性が異なる複数のサービスを利用することが想定される。その場合サービスごとにネットワークスライスが作成されると、1つの端末に対する制御を複数のネットワークスライスが担う必要があるため、処理の複雑化が懸念される。従って端末の移動を管理する機能や端末の認証を行う機能はサービスごとではなく端末ごとに切り出して行われることが適切と考えられる。つまり、ネットワークスライスは端末管理スライスとサービススライスから成り立ち、端末は1つの端末管理スライスと利用するサービスに応じた1つまたは複数のサービススライスに所属することになる。

  2. DCN応用の提案
    現状のEPCネットワークからの連続的な拡張を考慮した場合、端末にアクセスさせるCNを端末特性に応じて専用のCN(DCN)に振り分ける技術が有望であると考える。なお、この手法は5G無線を収容する将来CNにおける端末管理スライス選択に適用可能であると想定されるものの、現時点では現存ネットワークにおけるCN選択手法として仕様化されている。DCN振分け技術を応用したネットワークスライスの選択手法について、図5を用いて概要を説明する。以下では主にLTEのエンティティ名で解説する。

    図5 DCNを応用したネットワークスライスの選択

    図5 DCNを応用したネットワークスライスの選択

  3. SSFによるネットワーク選択
    前述の通りDCNへの振分けは端末特性に応じてネットワークを選択する手法であり、その制御は主に図5におけるSSF(Slice Selection Function)※15によってコントロールされると見なせる。SSF相当の機能は、LTEにおいては端末からのアタッチ※16を最初に受信するMME(Mobility Management Entity)※17に実装されるが、5G無線アクセス収容時には基地局(eNB)への配置、また独立ノードとして実装されるなど複数パターンが想定される。なお、5G無線アクセス収容時にはこれらeNB機能が5Gの基地局(5GNB)として実装されることも考えられる。

  4. 切替え手順
    SSF(MME)は端末からのアタッチ要求を受信した際に、HSS(Home Subscriber Server)※18から端末識別子であるUE Usage Typeを取得し、この値より適切なCN(ネットワークスライシングにおける端末管理スライス)を選択する(図5①~④)。なお、5Gにおいては、スライス選択基準としてUE Usage Typeのみならず新たなパラメータによりサービスごとにスライスを選択することが可能になると想定される。
    UE Usage Typeの値より適切な端末管理スライスへの収容が必要と判断した場合、SSF(MME)は端末から受信したアタッチ要求を当該端末管理スライス内の別のMMEに転送するため、eNBに対しアタッチ要求をカプセリングしたリダイレクト要求メッセージを送信する(図5⑤)。eNBは指定された所望の端末管理スライスのMMEにアタッチ要求をリダイレクトすることにより、端末が適切なMMEとの間でアタッチ処理を実施することが可能となり(図5⑥)、その後のサービスも適切なサービススライスにより提供されることとなる(図5⑦)。

  5. DCN応用の課題
    DCNの振分け技術を応用して端末管理スライスを選択する手法については、端末識別子であるUE Usage Typeが加入者情報という契約情報として管理されているため、従来のSO(Service Order)※19の手順を踏襲して、オペレータが契約情報の変更という形で収容先のスライス選択を自由に制御できるというメリットがある。そのためDCNの振分け技術は、ネットワークスライシングの実現に向けて有望な技術として考えられるものの、一方で効率化やさらなる検討が必要と考えられる課題事項も存在する。

    1. 第一の課題は、SSFの手順効率化である。3GPP Release 13の仕様ではSSF相当の機能はMMEに具備されるため、所望の端末管理スライスのMMEにアクセスするためには、端末管理スライスの選択を行うMME(SSF)をいったん介す必要がある。5G時代のCNでは、例えばSSFをRAN側に配備させると、所望の端末管理スライスのMMEを一度で選択可能となり、手順を効率化できる。ただしこの場合、UE Usage TypeをRAN側に配信する手法や、RAN側で端末を識別する手法が課題となる。
    2. 第二は、サービススライスの割当て手法の実現である。DCNの振分け技術には、ユーザデータ別の送信に関する振分けに相当する機能は含まれないため、現状ではAPN(Access Point Name)単位※20で接続ルートを分けることが有効となるが、同一APNで複数サービスが提供される場合、この手法では適切なサービススライスを選択することができない。APN以外をキーとしたサービススライス選択手法の検討が課題である。
    3. 第三は、各スライスのノード構成の決定である。端末管理スライスは主にC-Plane※21の機能を、サービススライスは主にU-Plane※22の機能を具備するため、現状のLTEの各エンティティの機能配備を見直し、スライスを構成するノードを最適化することが課題となる。

ネットワークスライシングの具体的な実現手法についてはまだ検討中のため、上記に記載した以外にも、さまざまな改善検討が必要であり、DCNの応用とは別の実現案が提案される可能性もある。今後の議論の方向性を注意深く見守る必要がある。

  1. SSF:サービスが接続すべきスライスを選択する機能。
  2. アタッチ:移動端末の電源投入時などにおいて、移動端末をネットワークに登録する処理。
  3. MME:eNBを収容し、モビリティ制御機能などを提供する論理ノード。
  4. HSS:3GPP移動通信ネットワークにおける加入者情報データベースであり、認証情報および在圏情報の管理を行う。
  5. SO:顧客情報管理システムで契約情報などが変更された場合に、顧客情報システムからネットワークノードにその情報を通知・反映すること。
  6. APN:3GPPに準拠したドメイン形式の文字列で表す接続ポイント名。
  7. C-Plane:制御プレーン。通信の確立などをするためにやりとりされる、一連の制御処理を指す。
  8. U-Plane:ユーザプレーン。ユーザデータの送受信処理を指す。

3.3 仮想化によるスライス制御技術

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.23 No.4(Jan.2016)に掲載されています。

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