3.2 5Gの要求条件

「3GPPにおける5G標準化動向」目次

  1. 線アクセス技術の利用シナリオごとの要求条件
    3GPPでは、利用シナリオごとに5G無線アクセス技術(5G無線)の主な要求条件を、表2に示すように定めている[3]。eMBB向けには、下りピーク通信速度20Gbps、上り10Gbpsを目標値と定めている。また、LTE-Advancedと比較して、3倍の周波数利用効率※9、より高速な移動速度下での通信、低遅延な無線伝送を達成する事を目標としている。mMTC向けには、上り160bpsの通信速度を提供できる基地局からの距離をセル半径とし、それを、基地局からの離隔距離に応じた伝搬損失※10(最大カップリングロス※11164dB)で定義している。また、10年の電池寿命をさらに超える目標を設定し、より多くのデバイスの収容が可能な無線を目標としている。URLLC向けには、0.5msの超低遅延(無線の片道伝送遅延)を目標としている。

    表2 5G無線の主な要求条件

    表2 5G無線の主な要求条件
  2. 5Gシステム全体の性能面に関する要求条件
    5G無線、コアネットワークを含めたシステム全体の性能面に関する要求条件も、ユースケースに応じて、データレート、遅延、信頼性、トラフィック密度、接続密度などが規定されている[4]。例えば、下りの実効データレートは1Gbpsであるものの、end-to-endの遅延は、V2Xなどの交通関連システムで10ms、遠隔制御で5ms、触覚通信で0.5msなどと非常に高い要求条件となっている。
    また、5Gシステム全体の要求条件として、以下の3つの代表的な要求条件が規定された。

    • (a)ネットワークスライシング※12のサポート
      • ネットワークは、1つもしくは複数のネットワークスライスから構成され、各々のネットワークスライスが独立した完全なネットワーク機能を有する。各々のネットワークスライスは、異なる機能・性能要求条件を満たし、ユーザごとやサービスごとに収容可能とする。また、1台の端末が複数のネットワークスライスに同時に接続することも可能となる。
    • (b)多様なアクセスの収容
      • 5Gコアネットワークでは、E-UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)※13および5G無線に加え、衛星や固定ブロードバンドアクセスを収容可能とする。
    • (c)さまざま条件時における効率的な提供
      • 5Gを提供するために必要となる装置の電力効率化や、ネットワークリソースの効率的な利用に関しても考慮されている。5Gでは、特に低遅延サービスの提供が注目されており、ゲートウェイ※14装置を移動端末に近いネットワークのエッジに配置するネットワーク構成も検討されている。また、電力供給の制限された地域で、必要最低限のサービスレベルのみが要求される市場に対し、低オペレーションコストでの提供も考慮されている。
  1. 周波数利用効率:単位時間、単位周波数当りで伝送できる情報ビット数。
  2. 伝搬損失:送信局から放射された電波の電力が受信点に到達するまでに減衰する量。
  3. カップリングロス:とある通信速度を提供できる基地局からの距離をセル半径とし、セル半径を、基地局からの離隔距離に応じた伝搬損失で定義されたもの。
  4. ネットワークスライシング:5G時代の次世代ネットワークの実現形態の1つ。ユースケースやビジネスモデルなどのサービス単位でコアネットワーク分割して最適化するアーキテクチャ。
  5. E-UTRA:3GPP移動通信網における高機能無線アクセス方式におけるエアインタフェース。
  6. ゲートウェイ:プロトコル変換やデータの中継機能などを有するノード機能。

3.3 5Gのサービス要求条件検討の最新動向

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.25 No.3(Oct.2017)に掲載されています。

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