3. CU-DU functional split and open interface

「5G無線アクセスネットワーク標準化動向」目次

LTEですでに採用されている無線アクセスネットワークのアーキテクチャとして、1つの集約ノードから複数の分散ノードを張り出し、ユーザの移動に伴うCNシグナリングの抑制や、セル間連携によるパフォーマンス向上などを実現できるC-RANがある[3]。NRでも、このような利点から同様のアーキテクチャを用いることが想定されている。
現状のLTEに基づくC-RANでは、集約ノード—分散ノード間のフロントホールインタフェースとしてCPRI(Common Public Radio Interface)※17が広く用いられている。CPRIではフロントホールで伝送するレイヤ2※18信号フォーマットを標準規定しているが、その上で運ぶレイヤ3※19信号(データ、制御信号)などはベンダ独自実装としている。そのため、異なるベンダの集約ノードと分散ノードを接続するマルチベンダC-RANを実現するには個別にベンダ間の調整を行う必要があった。
NRでは、マルチベンダC-RANをよりオープンに実現したいというオペレータ要望を汲み取り、集約ノードをCU(Central Unit)、分散ノードをDU(Distributed Unit)と定義し、その間のCU-DU interfaceを3GPPにて規定することが検討されている。 また、CPRIでは各アンテナで送受信される無線信号をデジタル信号としてフロントホールで伝送しているため、フロントホールの所要伝送帯域は無線の周波数帯域幅とアンテナ数に依存する。NRでは、LTEよりも広帯域の周波数帯域幅や多数のアンテナを用いるMassive MIMO(Multiple Input Multiple Output)※20技術を適用することが想定されるため、既存のCPRIを用いるとフロントホールの所要伝送帯域が激増する。例えば、LTE導入当初の一般的な構成(20MHzシステム帯域幅、2送受信アンテナ、2 MIMO送信レイヤ、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)※21)の場合、ユーザデータレート150Mbps程度に対し、フロントホール所要帯域は2Gbps程度であるが、NRの検討に用いられた構成例(100MHzシステム帯域幅、32送受信アンテナ、8 MIMO送信レイヤ、256QAM)の場合、ユーザデータレート4Gbps程度に対し、フロントホール所要帯域は約160Gbpsも必要となる。この課題を解決するために、CU-DU間の機能分離(functional split)を見直し、DU側へ機能を移すことで所要伝送帯域を低減することが検討された。例えば、下りリンクの機能部において、MIMO送信レイヤごとの信号をアンテナごとの信号へ拡張する機能をDUに配置することで、フロントホールではアンテナごとの信号伝送ではなく、MIMO送信レイヤごとの信号伝送となるため、「アンテナ数÷MIMO送信レイヤ数」の割合でフロントホールの所要帯域の低減が可能となる。さらに、PHYレイヤ(物理レイヤ)の機能部をすべてDUに配置する場合、すなわち、MAC(Media Access Control)レイヤ※22とPHYレイヤの間でCU-DUを分離する場合、フロントホールでは量子化されたIQ※23信号ではなく符号化前のユーザデータビット列の伝送となるため、ユーザデータレート相当まで所要帯域を低減することが可能となる。
NRのSI(Study Item)※24では、このような新しいCU-DU機能分離とマルチベンダでの接続を実現するためのオープンなCU-DU interfaceが議論されており、ドコモも積極的に寄与している。新しいCU-DUの機能分離としては、フロントホールに使用され得るさまざまな伝送ネットワークに対応することを考慮して、想定するフロントホール遅延によってLower layer splitとHigher layer splitの2つの機能分離が検討された(図4)。Lower layer split(図4(a))では、フロントホール所要帯域を低減しつつ、MACスケジューラやPHY処理も含めた高度なセル間連携による無線性能向上も可能とする、MACレイヤとPHYレイヤの間、もしくはPHYレイヤ内での機能分離が主に検討された。Lower layer splitでは、TTI(Transmission Time Interval)単位の処理を行うMACレイヤとPHYレイヤがCU-DU間を跨る構成をとるため、フロントホールに使用される伝送ネットワークが高い遅延要求を満たすことを前提とする。一方、Higher layer split(図4(b))では、遅延のより大きい伝送ネットワークをフロントホールに用いる場合も、フロントホール所要帯域を低減しつつC-RANによる集約メリットを享受可能とする、PDCPレイヤとRLCレイヤの間での機能分離と、その機能分離を用いたCU-DU間のインタフェースをF1インタフェースとしてRelease 15で標準規定することが合意された。

図4 CU-DU機能分離の構成例

図4 CU-DU機能分離の構成例

  1. CPRI:無線基地局の内部インタフェース仕様。産業団体でもあるCPRIによって規定されている。
  2. レイヤ2:OSI参照モデルの第2層(データリンク層)。
  3. レイヤ3:OSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)。
  4. Massive MIMO:非常に多数のアンテナを用いるMIMO伝送技術の総称。
  5. QAM:QAM(直交振幅変調)とは、変調方式の1つであり、振幅と位相の双方を利用して変調する方式。64QAMの場合は64(2の6乗)種類のシンボルが存在するため、一度に6ビットを伝送可能であるのに対して、256QAMの場合は256(2の8乗)種類のシンボルが存在するため、一度に8ビットを伝送可能である。
  6. MACレイヤ:レイヤ2におけるサブレイヤの1つで、無線リソース割当て、データマッピング、再送制御などを行うプロトコル。
  7. IQ:複素デジタル信号の同相(In-phase)および直交(Quadrature)成分。
  8.  SI:「実現性の検討および仕様化すべき機能の大まかな特定」作業のこと。

4. 5G無線アクセスネットワーク

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.25 No.3(Oct.2017)に掲載されています。

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