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さらなるビットコストの低減に向けたSuper 3Gの開発〜1.まえがき

W-CDMA方式の国際展開も順調に進み、現在では欧州だけではなく、北米、アジアの地域を含めて約180以上の携帯電話事業者がWCDMA方式を用いた3G(3rd Generation)サービスを開始している。現在、ドコモがHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)注意1で提供しているパケットサービスの下り方向の最大データ通信速度は7.2Mbit/sであるが、技術仕様上HSDPAおよびHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)注意2を用いることにより、最大データ通信速度は無線基地局から移動端末までの下り方向で約14Mbit/s、上り方向で5.7Mbit/sが実現可能である。これらの技術を用いることにより、データ通信速度だけではなく、周波数利用効率も改善でき、ビット当りのコストの低減が可能となる。しかしながら、データトラフィック需要の増大およびコンテンツ大容量化が急速に進み、その一方で低料金、さらには定額制の要求も高まっている。これに対応するには、より一層のビットコストの削減が重要な課題である。

ドコモでは、長期的な3G の発展のため、2004年に「Super 3G」のコンセプトを提唱した。Super 3G はW-CDMA方式の拡張技術HSDPA/HSUPAを発展させた標準規格であり、3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)ではLTE(Long Term Evolution)注意3と称されている。Super 3G(LTE)ではさまざまな新規技術を採用することにより、以下3点の実現などを主な特長としている。

  • データ通信速度の高速化(具体的には下り最大300Mbit/s、上り75Mbit/s)
  • 遅延の短縮(具体的には接続遅延を100ms以下、無線アクセスネットワーク(RAN :Radio Access Network)内の片側伝送遅延を5ms以下に短縮)
  • 周波数利用効率の大幅な向上

Super 3G(LTE)の導入により、周波数利用効率の向上によるビット当りのコスト低減のみならず、低遅延・高速化を実現できるため、遅延要求の厳しいサービスや大容量ファイルの伝送などが可能となる。

本稿では、Super 3G(LTE)の標準化動向および伝送試作を用いた実験結果を中心にその開発状況を述べる。

  • 注意1 HSDPA:3GPPで規格化された、WCDMA方式に基づく下りリンクの高速パケット伝送方式。移動端末の電波受信状況に応じて、変調方式と符号化率を最適化する。
  • 注意2 HSUPA:3GPPで規格化された、WCDMA方式に基づく上りリンクの高速パケット伝送方式。基地局における電波受信状況に応じて、符号化率、拡散率、送信電力を最適化する。
  • 注意3 LTE:3GPPでLong Term Evolution として検討されている第3世代の拡張規格。ドコモで提唱しているSuper 3Gと同義。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。