さらなるビットコストの低減に向けたSuper 3Gの開発〜3.Super 3G(LTE)無線方式概要

3.2 上りリンク無線アクセスSC-FDMA

上りリンクは下りリンクと異なり、移動端末の低消費電力化が非常に重要な要求条件である。特に送信部の電力増幅器は、移動端末の消費電力で大きな割合を占めるため、電力効率の高い増幅器の利用に適したアクセス方式の適用が必須となる。また、同じ最大送信電力の電力増幅器を仮定した場合、PAPRが低いアクセス方式ほど同じ受信性能を実現できるカバレッジエリアを増大することができる。このためSuper 3G(LTE)ではSC-FDMAが採用されている。以下、SC-FDMA無線アクセスの特長について述べる。

(1)可変帯域SC-FDMA

上りリンクにおいては前述のように移動端末の低消費電力化の観点から、送信すべきトラフィックの情報レートに応じた最小の送信電力でデータチャネルを送信する。送信信号帯域幅を広くすると周波数領域の伝搬路変動を平均化する周波数ダイバーシチ効果は増大する。しかしながら、必要以上に送信信号帯域幅を拡大すると無線伝搬路の推定に必要な参照信号の電力密度が低減するため、無線伝搬路の推定精度の劣化に起因して受信特性が劣化する。したがって、送信トラフィックの情報レートに応じた可変帯域幅のSC-FDMA無線アクセスが用いられる(図9)。上りリンクにおいて下りリンクと異なる点は、シングルキャリアの送信のみを許容する点であり、シングルキャリアの性質を維持するため、割り当てる周波数帯域は離散的ではなく連続する周波数帯域(連続するRB)を周波数スケジューリングによって割り当てる必要がある。また、サブフレーム内あるいはサブフレーム間で異なる周波数帯域を割り当てる周波数ホッピングを適用することで、周波数ダイバーシチ効果を得ることができるため高品質受信を実現することが可能となる。

図9 SC-FDMAの無線リソースの割当て例

(2)周波数領域のSC-FDMA 信号生成法

上りリンクのSC-FDMA無線アクセスでは、下りリンクと同様に、周波数スケジューリングにより各UEにシステム帯域の一部の周波数帯域を割り当てる。SC-FDMA信号の周波数領域での生成法としてDFT(Discrete Fourier Transform)-Spread OFDM が用いられている。DFTSpread OFDMの送信ブロック構成を図10に示す。DFT-Spread OFDMでは、UEはまず変調後の情報シンボル系列をDFT処理し、DFT処理後の情報シンボルを自分に割り当てられている周波数帯域にのみマッピングし、それ以外の周波数帯域は0をマッピングした系列に対して、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)注意1処理を用いることにより送信信号を生成する。DFT-Spread OFDM を用いることにより、下りリンクのOFDMAと同一のクロック周波数、サブキャリア間隔を実現できるという特長をもつ。

図10 DFT-Spread OFDM

(3)CPを用いる周波数等化の適用

SC-FDMA無線アクセスでは、自チャネルの遅延波からの干渉(マルチパス干渉)を抑圧する等化器が必要になる。周波数領域の等化処理は、時間領域処理に比較して演算処理量を小さくできるため実用に適している。この等化処理は、ブロック単位で時間領域信号を周波数領域の信号に変換する必要があるため、ブロック間干渉の影響をなくすためにCPをFFT(Fast Fourier Transform)ブロックごとに設けている。

(4)Fractional 送信電力制御

前述のように、SC-FDMAでは周波数領域において、ユーザ間の直交化が実現できるため、同一セル(セクタ)内ではCDMA のような干渉は生じない。このため、ユーザごとに送信電力制御の目標値を制御するFractional TPC(Transmission Power Control)が適用される。

Fractional TPCでは基地局に近いユーザの目標値を高く設定することにより、スループットの増大を実現し、セル端に近いユーザの目標値を低く設定することにより他セルへの干渉の低減を実現することでセル全体のスループットを向上させる(図11)。

図11 Fractional TPC

  • 注意1 逆高速フーリエ変換(IFFT):時間領域の信号の中に含まれる周波数成分とその割合を抽出する処理を高速に計算する手法である高速フーリエ交換(FFT)の逆変換。周波数領域の信号から時間領域の信号に変換する処理であり、FFTと同一の計算手法で実現できる。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。