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Super 3Gの技術動向 その2 Super 3Gの技術検討〜2.物理レイヤ技術コンセプト提案

2.2 上りリンクSC-FDMA

上りリンクは下りリンクと異なり、移動端末の低消費電力化が非常に重要な要求条件である。特に送信部の電力増幅器は移動端末の消費電力で大きな割合を占める。つまり、同じ最大送信電力の電力増幅器を仮定した場合、ピーク電力対平均送信電力比(PAPR:Peak-to-Average Power Ratio)が低いほど、同じ受信性能を実現できるカバレッジエリアを増大することができる。以下、SC-FDMA無線アクセスの特徴について述べる。

(1)可変帯域SC-FDMA

上りリンクにおいては前述のように移動端末の低消費電力化の観点から、送信すべきトラフィックのデータレートに応じた最小の送信電力でデータチャネルを送信する。送信信号帯域幅を広くすると周波数領域の伝搬路変動を平均化する周波数ダイバーシチ効果は増大する。しかしながら、必要以上に信号帯域幅を拡大すると無線伝搬路の推定に必要なパイロット信号の電力密度が低減するため、伝搬路の推定精度の劣化に起因して受信特性が劣化する。したがって、図3に示すような送信トラフィックの情報レートに応じた可変帯域幅のSC-FDMA無線アクセスが用いられる。

図3 可変帯域幅のSC-FDMA無線アクセス

(2)周波数領域のSC信号生成法

上りリンクのSC-FDMA無線アクセスにおいても、下りリンクOFDMAと同様に、LocalizedおよびDistributed FDMA双方の信号送信法が用いられる。Localized FDMAは通常のシステム帯域の1部の連続した周波数を割り当てるFDMAと同一である。下りリンクと異なる点は、上りリンクではシングルキャリアの送信のみを許容する点である。Localized FDMAは主にデータチャネルで用いられる。上りリンクにおいても時間・周波数領域の伝搬路変動を利用したスケジューリングが検討されており、基地局からLocalized FDMAでデータチャネルを送信するサブフレームおよび周波数帯域が割り当てられる。一方、Distributed FDMAは、図1(b)に示すように離散的な周波数成分(スペクトラムがくしの歯のように離散的になる)を用いた信号送信法であるが、下りリンクのOFDMAの場合と異なり、時間領域においてはマルチキャリア伝送のような送信信号のレベル変動はない。したがって、PAPRの増大を招かない。Distributed FDMAは、くしの歯状に広い帯域に信号を拡散することにより、周波数ダイバーシチ効果を得ることができることから、共通チャネルなどへの適用が検討されている。SCのDistributed FDMA信号の周波数領域での生成法としてDFT(Discrete Fourier Transform)-Spread OFDMが提案されている。DFT-Spread OFDMの送信ブロック構成を図4に示す。DFT-Spread OFDMは、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)注意1処理を用いることにより、下りリンクのOFDMアクセスと同一のクロック周波数、サブキャリア間隔を実現でき、SCのDistributed FDMA信号をOFDMと共通的に生成できるメリットがある。

図4 DFT -Spread OFDM ブロック構成

(3)Cyclic Prefixを用いる周波数等化の適用

SC-FDMAアクセスでは、自チャネルの遅延波からの干渉(マルチパス干渉)を抑圧する等化器が必要になる。周波数領域の等化処理は、時間領域処理に比較して演算処理量を小さくできるため実用に適している。周波数領域の等化処理は、ブロック単位で時間領域信号を周波数領域の信号に変換する必要があるため、ブロック間干渉の影響をなくすためにCyclic PrefixをFFTブロックごとに設けている。

  • 注意1 高速フーリエ変換:時間領域の信号の中に含まれる周波数成分とその割合を抽出する処理を高速に計算する手法。一方、周波数領域の信号から時間領域の信号を作成することをIFFTと呼び、同一の計算手法で実現できる。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.14 No.3に、掲載されています。