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3GPP LTE/SAE標準仕様完成における活動と貢献〜4.3GPP TSG RANにおける活動と貢献

4.2 LTEの特徴および各WGにおける活動

LTEの要求条件とともに、2006年6月まで議論されたのが、SI(Study Item)である。RANは5つのWGから構成されており、SIでは合意された要求条件を満たすシステムの検討が、毎会合、各WGにおいて深夜まで精力的に議論され、検討結果の合意事項や性能評価結果はTR25.912にまとめられている。これらTRのエディタとしても、ドコモは貢献している。SIの完了後は詳細仕様を策定するWIへ移行し、2009年3月の仕様凍結に至っている。

各WG の活動の概要およびドコモの活動について簡単に説明を行う。

(1)RAN-WG1

物理レイヤの検討を行うRANWG1では、無線アクセス方式として、複数の方式が提案され議論されたが、FDD(Frequency Division Duplex)/TDD(Time Division Duplex)の共通性の重視などを考慮し、最終的にはドコモを含む多数の企業が推す下りリンクOFDMA、上りリンクSC-FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)が採用されている。OFDMは、広帯域伝送で影響が大きくなるマルチパス干渉に対する耐性が高く、サブキャリア数を変更することで広範囲な周波数帯域幅に柔軟に対応ができる。一方、上りリンクとしては、移動端末(UE:User Equipment)のピーク電力対平均電力比(PAPR:Peakto-Average Power Ratio)の低減による低消費電力化が重要な要素である。SC-FDMAはシングルキャリアのためPAPRを低減し、さらにユーザ間を周波数上で直交化することにより、セル内のユーザ間干渉が大幅に低減できる。さらに最大スループットや周波数利用効率の大幅な改善を実現するために、適応変調やHybrid ARQ(Automatic Repeat and reQuest)など既存の技術に加えて、MIMO(Multiple Input Multiple Output)や周波数領域スケジューリングなどのさまざまな技術を取り入れることにより、周波数利用効率の大幅な改善を実現している[20][21]。ドコモでは、これらの技術を含む多くの分野に対して数多くの技術的寄書を入力し、LTEの性能改善に貢献するとともに、副議長およびラポータとして、議論の推進のための課題のリストアップやRAN-WG1の技術検討結果をまとめたTR25.814[22]のエディタとしても、LTE の推進に貢献している。

(2)RAN-WG2

無線プロトコルの検討を行うRAN-WG2では、VoIPサポートの能力を有しながら、PSドメインにフォーカスすることにより、移動端末の状態数を3Gから大幅に削減し、RRC(Radio Resource Control)Connected modeとRRC idleの2状態のみとし、さらにトランスポートチャネル注意1の数の大幅な削減を実現し、シンプルかつ効率的に無線プロトコル構成を実現している。その結果、遅延の削減のみならず、試験パターンの削減による試験コストの低減を実現している[21]。ドコモは、数多くの技術的な寄書を入力するとともに、議論を推進させるための数多くのモデレータ注意2や標準仕様のエディタを務めるなど、仕様の完成に貢献した。

(3) RAN-WG3

RAN アーキテクチャの検討を行うRAN-WG3において、無線制御局のないフラットなアーキテクチャを構成することにより、伝送路インタフェース数の削減を実現し、シンプルかつシームレスなハンドオーバを実現している(図5)。ドコモは数多くの技術的な寄書を入力するとともに、標準仕様のエディタとしても貢献している。

図5 RAN アーキテクチャ

(4)RAN-WG4

移動端末、基地局装置の無線パフォーマンス規定および基地局の試験仕様を策定するRAN-WG4においては、システム内/システム間の干渉検討、不要輻射などに関するスプリアス規定や受信感度などのRFのパフォーマンス規定の策定、ベースバンドの受信性能やモビリティ性能に関するパフォーマンス規定の策定が行われた。ドコモは、オペレータの観点からの要求条件とともに、シミュレーション結果などの技術検討面に関しても非常に多くの寄書を入力し、LTEの信頼性、安定性、性能の向上を牽引している。

(5)RAN-WG5

移動端末のコンフォーマンス試験注意3仕様を策定するRAN-WG5 においては、移動端末の無線送受信に関するパフォーマンスおよびLTE/SAEの通信プロトコルの試験仕様策定が行われた。ドコモは非常に多くの寄書を入力し、実運用を想定した試験用パラメータや試験手順を規定するなど、LTE/SAEシステムの相互接続性の向上の議論を推進した。また、RAN-WG5の議長や仕様のエディタを務めるなど、仕様完成に大きく貢献した。

RAN-WG1〜5において、ドコモはSI/WIの技術的な寄書を入力し(合わせて約3,000件)、LTEの性能向上、信頼性の向上、安定化などを牽引するとともに、LTE に関するいくつかの仕様のエディタを務め、さらにLTEのラポータカンパニーとして、議論の方向性、3GPP内の複数のグループ間の調整やLTE スケジュールの調整および管理など、技術面以外でもLTEの標準化を牽引した。最後に、LTE/SAEの標準化作成中にドコモが担った3GPPの役職を表1に示す。

表1 3GPP TSG RANでの役職
議長/副議長 TSG RAN副議長
TSG RAN-WG5議長
TSG RAN-WG1副議長
LTEラポータ TSG RAN
TSG RAN-WG1
仕様のエディタ TR 25.912
TR 25.913
TS 36.211(co-editor)
TS 36.322
TS 36.412/422
TS 36.508
TS 36.523-1 (co-editor)
  • 注意1 トランスポートチャネル:複数の論理チャネルを束ねて効率よく物理チャネルにマッピングするために中間層に定義されるチャネル。
  • 注意2 モデレータ:電子メールで議論を行う際にとりまとめを行い、WGで報告を行う役割。
  • 注意3 コンフォーマンス試験:機能が正しく動作されているかを検証するための適合試験。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.17 No.2に、掲載されています。