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FOMAコアネットワークパケット処理ノードxGSNの開発〜2.xGSN開発の背景

2.1 PS分離の背景・目的

これまでのドコモにおけるFOMA網は、パケット交換(PS:Packet Switching)呼と回線交換(CS:Circuit Switching)呼の呼処理統合により、効率的に設備構築ができること、およびATMが必要なサービス品質(QoS:Quality of Service)を保証できる唯一の技術であったことから、ATMスイッチ部(ATM-SW:ATM-SWitch)ベースの交換ノードMMSを開発し、ATM網によりネットワーク設備を展開してきた。以下にMMSの特長を示す。

  • PS呼とCS呼を同一物理ノードで呼処理できる
  • 音声、データ、映像などさまざまな呼種のデータを同一回線上で送受信処理することにより、回線使用効率を高め通信コストを低減できる
  • パケット通信でありながら、ハードウェアによる高速スイッチングが可能である

これらの特長は特にノードコスト、伝送コストの削減に効果を示し、ディジタル携帯電話方式(PDC:Personal Digital Cellular)の設備と比較して大幅な設備構築費の削減に貢献できた。

しかし、近年のFOMA加入者の増加に伴うパケットトラフィック需要の拡大により、CS呼と比較してPS呼のトラフィック量はますます拡大することが見込まれている。これは音声サービスからi-modeに代表されるパケットデータサービスへと需要形態が大きく変化してきていることによるものである。また、この変化は世界的なIP(Internet Protocol)技術の展開と併せ、これまでのノードコスト、伝送コストの設計手法に対して、新しい見地により大きな設備効率を引き出せる状況となってきた。

一言で言えば、既存のドコモATM網においては、回線交換系サービスの基本呼処理技術をベースにパケット交換サービスを実現していたということであり、既成の交換階梯の考え方を踏襲し、PS呼とCS呼を同じATM回線設定方式により扱っていた。よって、例えばPS呼を他地域会社収容の接続ポイント名(APN:Access Point Name)に接続する際には、TMMS(Transit Mobile Multimedia switching System)を迂回する経路を取らざるを得ず(図11)、一般的なIPルーティングと比較して中継階梯の設備量(ノード、伝送回線)を増加させる要因となっていた。さらにPS呼の増加に比例して、この設備量の差分は拡大が予測される。これに対し、

  • 既存のCS/PS統合ネットワークを、PSネットワークとCSネットワークに分離し、PS呼はIPルーティング網の構成に則った最適な網設計を可能とし、網設備コストが抑えられる
  • 伝送路を既存のATMから一般的に設備構築費を抑えられるIPルータ網に置き換えることで、伝送路コストも抑えられる
  • IPルータ網においても既存のATM網で要求されていたものと同様のQoSの保証が可能である

といった効果により課題を解決することができるため、CS/PS統合ネットワークからのPS分離を行うこととした。

図1 FOMAネットワーク構成とPS分離移行概要

次にPS分離(xGSN導入)の移行形態と、その際のPS呼の流れについて説明する。

PS分離への移行手順は2つの工程(Phase1、Phase2)から成る。Phase1 は、LMMS(Local Mobile Multimedia switching System)からGMMS(Gateway Mobile Multimedia switching System)へのパケット用の接続をIPルータ網経由にする工程であり、PS分離の移行途中においても既存MMSと新規導入xGSNの間でリロケーション制御を可能とするために必要になるものである(図12)。また、Phase2はすべてのパケット機能をMMSから分離し、xGSNに収容する工程であり、PS分離の最終形態を示す(図13)。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.12 No.3に、掲載されています。