国際ローミングSUPLによるFOMA位置情報機能の開発—現在地確認機能—〜1.まえがき
ドコモでは、従来からGPSとFOMA ネットワークを利用した位置情報サービスとして、現在地確認機能を提供している[1]。また、緊急時に自分の居場所を知らせたい、親が子どものいる場所を知りたいといったユーザニーズが高いことから、2006年春より、現在地通知機能、位置提供機能を提供している[2]。これらの機能を利用して、国内において「イマドコサーチ」、「ビジネスmopera GPSロケーション」などのサービスを提供しており、位置情報サービスに対するユーザニーズは高まりを見せている。同様に、国際ローミングアウトしている利用者においても、GPSによる位置情報検索機能に対するユーザニーズは高い。
これらのサービスを提供するための主なGPS測位方式として、自立測位方式とA-GPS(Assisted-GPS)測位方式が考えられる。自立測位方式では、測位演算に必要となる情報について、GPS信号をデコードすることにより取得するため、GPS信号の強電界環境が必要な条件となり、GPS測位を成功させることが困難となる場合が多い。一方、A-GPS方式では、FOMAネットワークから測位者の概略位置情報やGPS衛星の軌道情報など、移動端末がGPS測位に必要とするデータ(以下、アシストデータ)を配信する。これにより、GPS信号のデコード処理が省略可能となり、測位時間の短縮や測位可能なエリアの拡大が可能となるため、A-GPS測位方式を採用してきた。既存サービスでは、アシストデータの配信にはC-Plane(Control Plane)1を利用している。しかしながら、現状のドコモが採用しているC-Plane方式による位置情報提供機能を採用している海外事業者はおらず、国際ローミング時のGPS位置情報サービスを提供できていない。
OMA(Open Mobile Alliance)で規定されているSUPL(Secure User Plane Location)[3]は、移動端末とネットワーク間でアシストデータを送信するための通信ベアラにU-Plane(User Plane)2を利用したA-GPS測位方式である。SUPL に対応することにより、海外事業者ネットワークに依存せず、パケットローミングが可能な海外事業者であれば、A-GPSによる位置情報機能の提供が可能となる。
本稿では、国際ローミングで位置情報サービスを提供するためのSUPLによるGPS位置情報サービス基盤と、2009年夏モデル搭載のSUPL現在地確認機能の概要について解説する。
本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.17 No.2に、掲載されています。