マルチプルアクセス方式について〜1.概要
移動通信では、複数のユーザが無線通信路を同時に共有して通信を行い、限られた周波数資源を有効に活用する必要があります。このための技術をマルチプルアクセスと呼びます。
マルチプルアクセスの実現方法としては、無線チャネルを多重・分離する方法により、周波数によって分離するFrequency Division Multiple Access(FDMA)方式、時間によって分離するTime Division Multiple Access(TDMA)方式、スペクトラム拡散を使用し拡散コードによって分離するCode Division Multple Access(CDMA)方式の3つがあります。
同時双方向通信(デュープレクス通信)を実現するには基地局から移動局への下りチャネルと移動局から基地局への上りチャネルが必要です。デュープレクス方式には、使用する周波数で分離するFrequency Division Duplex(FDD)と、同一周波数を時間で分離するTime Division Duplex(TDD)という二つの方式があります。FDMA方式では主としてFDDが、TDMA方式とCDMA方式ではFDDとTDDの両方が用いられます。
マルチプルアクセス方式の比較 | |||
項目 | FDMA | TDMA | CDMA |
周波数の使用法 | 同一周波数での干渉量に基づく繰り返し利用 | 同一周波数での干渉量に基づく繰り返し利用 | 同一周波数の使用 |
送信モード | 連続送信 | バースト送信(移動局)連続送信またはバースト送信(基地局) | 連続送信 |
異なる伝送速度への対応 | 困難 (マルチキャリヤ使用) |
容易 (マルチスロット使用/スロット長可変) |
容易 (マルチコード使用) |
システムの特徴 | 伝送速度が大きくなると等化器、干渉キャンセラが必要 | 多重度が大きくなると等化器、干渉キャンセラが必要 | DS-CDMAでは送信電力制御不可欠、RAKE受信で品質向上、干渉キャンセラが容易増加に有効 |
基地局間同期の必要性 | 制御チャネル(下り)は原則として同期必要 | TDMA-TDD:PHS, TDMA-FDD:PDC,GSM | ソフトハンドオーバのためには同期が必要 |
適用例 | アナログ携帯・自動車電話 | 同期が必要 | CDMA-FDD:IS-95 |
1999年3月作成