2GHz帯FOMA用屋外ブースタ装置の開発〜2.装置設計
2.3 ブースタ送信雑音と基地局上り回線容量
ブースタ装置の導入により、対向する基地局の上り回線容量は劣化する。設置前の基地局の上り回線容量Cに対する設置後の上り回線容量C' は式(1)で表される[5]。
ここでNbkはブースタ装置からの雑音が基地局で受信される電力、NBTSは基地局受信機の雑音電力、ηは基地局ロードマージン1である[3]。
表1に示す条件に従って、基地局とブースタ装置間のアンテナ利得を含む伝搬損(以下、伝搬損)と上り回線容量比およびブースタエリア半径の関係を図3に示す。ブースタ利得が大きく伝搬損が小さいほど、エリア半径は大きくなるが、容量劣化も大きくなる。
表1 ブースタ対向基地局容量の計算条件 | |
項目 | 数値 |
ブースタ下り出力電力 | 30dBm/carrier |
ブースタ最大利得 | 80dB |
ブースタ対移動局用アンテナ利得 | 11dBi |
ブースタ・移動局間伝搬モデル | 奥村-秦式 |
ブースタ雑音指数 | 7dB |
基地局受信機雑音電力NBTS | −103dBm/3.84MHz |
基地局ロードマージン | 1, 3, 6dB |
今回開発したブースタ装置は、伝搬損に応じてブースタ装置の利得を自動的に制御する機能が組み込まれている[1]。伝搬損92dB以上では伝搬損が小さいほど容量劣化が大きくなるが、利得制御が動作する伝搬損80〜92dBの範囲では容量劣化を一定値に抑えながらブースタ装置によるサービスエリアの構築が可能であり、図3において例えばロードマージン3dBに対して利得制御が動作する範囲では500m前後のエリア半径が確保できることが分かる。
- 1 ロードマージン:CDMA方式を用いた多元接続においては、複数のユーザが干渉を許容しながら同じ周波数を共有する。もともと持っている受信機の熱雑音と比較して、どのくらいユーザによる干渉量の上昇を許容するかをロードマージンという。
本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.15 No.1に、掲載されています。