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車載向けFOMAテレマティクスモジュールの開発とネットワークへの機能追加〜3.Self Activation機能

テレマティクスモジュールのユーザ識別子であるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)注意1の書込みを初期出荷時のみとし、以後、モジュール交換を行うことなく電話番号であるMSISDN(Mobile Subscriber ISDN number)注意2の変更・登録を可能としている。これにより、自動車の販売・流通(特に中古車市場での再利用)時にスムーズな対応が可能となる。

例として、テレマティクスモジュールの出荷から、車への組込み、ユーザへの納品までの一連の流れを図4に、詳細を以下に示す。

図4 Self Activation機能

まず、テレマティクスモジュールの初期出荷時に、テレマティクスモジュールへのIMSIの書込み(図41)およびHLR(Home Location Register)注意3に対するIMSI登録(図42)を実施したうえで自動車メーカに配送され在庫管理される(図43)。これにより、任意のタイミングで開通可能なモジュールとして管理されることになる。

サービス提供者である自動車メーカでは、ユーザからテレマティクスサービス注意4の利用を要望されると、テレマティクスモジュールを車に組み込むのと同時に、ドコモのテレマティクスモジュール開通拠点に利用申込みを行う(図44)。テレマティクスモジュール開通拠点では、開通対象のテレマティクスモジュールに対する電話番号の割付けを顧客管理システムより実施する。顧客管理システムはHLRに登録されているIMSIに対して、開通するMSISDNの割当てを行い、HLRはVLR(Visitor Location Register)注意5/MSC(Mobile Switching Center)注意6に対し、該当電話番号の暫定開通プロファイルを送信する(図45)。これにより暫定開通状態が生成され、テレマティクスモジュールからは開通用番号への発信のみが許容される(その他の番号への発信、着信、その他サービス利用はすべて規制される)。

その後、ユーザへの納車と合わせて開通用番号がダイヤル発信されると(図46)、顧客管理システムを経由してHLRに対し本格開通要求が送信され、HLRでは該当MSISDNの暫定開通状態注意7を本格開通状態注意8に変更し、さらに、VLR/MSCに対しテレマティクスモジュールを利用可能とする制御プロファイル情報を送信する(図47)。これにより、開通用番号のみへの発信制限が解除され、テレマティクスサービスの利用が可能となる。また、開通用番号へのダイヤル発信と同時に、テレマティクスモジュールの基本使用料金の課金が開始される。

このように、Self Activation機能の適用によりドコモ側での利用登録作業とは非同期でサービス開始可能となるため、自動車メーカで開通タイミングを自由に操作することが可能であり、ドコモへのサービス申込み後、車両工事に時間がかかり納車日変更が発生するようなケースにおいても、柔軟にサービス開始時期を変更可能となる。

さらに、電話番号変更にモジュール交換を必要としないため、テレマティクスサービス利用車の売買・中古市場への展開時などにおいて車両工事をすることなく、電話番号割当てを自由に行うことが可能となり、効率的な車売買の運用が可能となっている。

  • 注意1 IMSI:UIM内に格納される、移動通信で使用するユーザごとの固有の番号。
  • 注意2 MSISDN:3GPP上で規定される加入者に割り当てられる電話番号。
  • 注意3 HLR:3GPP上で規定される加入者情報の管理機能および呼処理機能を有する論理ノード。
  • 注意4 テレマティクスサービス:テレマティクスモジュールを利用したサービス提供者独自の各種サービス。
  • 注意5 VLR:3GPP上で規定される在圏加入者情報管理機能を有する論理ノード。
  • 注意6 MSC:3GPP上で規定される交換機能を有する論理ノード。
  • 注意7 暫定開通状態:本稿では、テレマティクスサービス開通用番号にのみ発信可能な状態をさす。
  • 注意8 本格開通状態:本稿では、テレマティクスサービス利用可能な状態をさす。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。