報道発表資料

商業施設などの実利用環境で2Gbps以上の「5G」ミリ波通信実験に成功
<2015年11月26日>

株式会社NTTドコモ(以下ドコモ)は、世界の主要ベンダーと協力し、第5世代移動通信方式(以下5G)の実験を進めておりますが、2015年10月13日(火曜)に東京都港区の六本木ヒルズ森タワーでノキアソリューションズ&ネットワークス株式会社(以下ノキアネットワークス)と5G技術検証実験を実施し、ミリ波1 の周波数帯(70GHz帯)を用いて、実際の商業施設における受信時2Gbpsを超える無線データ伝送に成功しました。
これまで商業施設のように、基地局からの見通しを確保しにくく、複雑に反射を繰り返す環境では、直進性が強く、特に減衰が大きいミリ波のような高周波数帯の電波を用いた無線データ伝送を実現することは難しいと考えられていました。本実験では、このような環境においても、電波の放射エリアを特定方向へ集中させるビームフォーミング機能2 と、移動する端末の動きに合わせ電波を送信するビーム追従機能3 により、高速無線データ伝送が可能であることを実証しました。

また、2015年11月12日(木曜)に韓国(水原市)でサムスン電子株式会社(以下サムスン電子)と5G技術検証実験を実施し、28GHz帯の高周波数帯を用いて、基地局から見通しのある道路上を時速約60kmで高速移動するお客様環境を想定し、120mm×60mmのスマートフォンに内蔵可能な新たな小型アンテナを利用して、受信時2.5Gbps以上の無線データ伝送に成功しました。
本実験では、減衰の大きい高周波数帯の電波をより遠方に届かせるため、多数のアンテナ素子を用いたビームフォーミング機能およびビーム追従機能を駆使することにより、高速移動環境における無線データ伝送を実証しました。

ノキアネットワークスやサムスン電子との実験結果のほか、エリクソン、富士通株式会社、ファーウェイとの5G実験で得られた成果の詳細は別紙のとおりです。

これらの実験成果は、2015年11月26日(木曜)、27日(金曜)にドコモR&Dセンタで開催するイベント「DOCOMO R&D Open House 2015」にてご覧いただけます。

ドコモは、2020年までに5Gの通信ネットワークをお客様へ提供することをめざし、今後も最先端ネットワークに関する研究開発に取り組んでまいります。

  1. ミリ波は、周波数30〜300GHz、波長1〜10mmの電波で、EHF(Extremely High Frequency)とも呼ばれます。
  2. ビームフォーミング機能とは、電波の位相や振幅を制御し、特定の方向に強い電波を出す機能です。
  3. ビーム追従機能とは、移動端末の動きに合わせて電波の方向を変えることにより安定した通信を実現する機能です。

別紙 5Gに関する各ベンダーとの実験概要

1. ノキアネットワークスとの無線データ伝送実験

2015年10月13日(火曜)に東京都港区の六本木ヒルズ森タワーの商業施設にて、基地局からの見通しを確保しにくく、電波が複雑に反射を繰り返す環境での無線データ伝送実験を行い、ミリ波の周波数帯(70GHz帯)を用いて、実際の商業施設における受信時2Gbpsを超える無線データ伝送に成功しました。
本実験では、基地局アンテナを商業施設内の1か所に設置し、基地局から30〜90m離れた商業施設内の通路で携帯電話端末に相当する移動局装置を動かすことにより実施しました。
これまでミリ波帯の電波は、直進性が強く、減衰がより大きいことから、通信エリアが基地局からの見通しのある狭い範囲に限られ、移動通信サービスでの利用が難しいとされてきました。
本実験では、電波を特定の方向へ集中することによりビームを形成し、電波を遠くまで届け、さらに移動する端末の動きに電波を合わせることにより、基地局からの見通しが確保しにくく、電波が複雑に反射を繰り返す環境での通信エリアの狭さを解消し、ミリ波の移動通信への利用の可能性を高めました。
また、六本木ヒルズ森タワーの25階に基地局を設置し、屋外の地上階にて移動局装置を動かす実験も行いました。今後も5Gの実用化に向け様々な環境での屋外実験を実施する予定です。

実験概要
  1. 実験場所 : 六本木ヒルズ森タワー(東京都港区)
  2. 周波数帯 : 70GHz帯
  3. MIMO多重1 : 1(なし)
  4. 同時接続移動局装置数 : 1
画面イメージ:【図1】実験環境(六本木ヒルズ森タワー商業施設)、【図2】測定結果画面、【図3】実験環境(六本木ヒルズ森タワー屋外)

2. サムスン電子との無線データ伝送実験

2015年11月12日(木曜)に韓国(水原市)にあるサムスンデジタルシティ周辺の公道において28GHz帯を用いて実施した本実験では、自動車での高速移動など、お客様の実際のご利用環境における高速無線通信を実証するため、多数(96素子)のアンテナを用いたビームフォーミング機能とビーム追従機能を駆使した無線データ伝送実験を行い、受信時2.5Gbpsを超える無線データ伝送に成功しました。
本実験は、120mm×60mmのスマートフォンに搭載可能な小型アンテナを使用した移動局装置を自動車に搭載し、基地局装置をビル屋上に設置するというように、自動車での高速移動時の実際のご利用環境を想定した無線データ伝送実験を実施し、基地局からの見通しがある測定コースを時速約60kmで移動局装置が移動した場合において、受信時2.5Gbps以上の無線データ伝送を確認しました。
本実験では、電波強度の減衰が大きく、これまで移動通信サービスでの利用が難しいとされてきた高周波数帯について、自動車や電車などでの移動時における5G高速通信での利用の可能性を実証しました。
今後は、日本においても電波免許取得後に屋外実験を開始する予定です。

実験概要
  1. 実験場所 : サムスンデジタルシティ周辺道路(韓国 水原市)
  2. 周波数帯 : 28GHz帯
  3. MIMO多重 : 最大2ストリーム
  4. 同時接続移動局装置数 : 1
  5. 移動局アンテナ : 120mm×60mmのスマートフォンに内蔵可能な小型アンテナ
画面イメージ:【図4】実験装置外観、【図5】高速移動時における伝送実験

3. エリクソンとの無線データ伝送実験

2015年11月19日(木曜)に神奈川県横須賀市のドコモR&Dセンタの電波暗室内において実施した本実験は、ドコモのめざす5Gの要求条件のひとつである「10Gbpsを超える高速無線通信」を実証する取り組みとして実施し、15GHz帯の高周波数帯を用いた「マルチビームMIMO2」により、受信時最大10Gbpsを超えるリアルタイム高速無線データ伝送に成功しました。
今後は、電波免許取得後に屋外実験を開始する予定です。

実験概要
  1. 実験場所 : ドコモR&Dセンタ(神奈川県横須賀市)ANNEX-R棟 電波暗室内
  2. 周波数帯 : 15GHz帯
  3. MIMO多重 : 4ストリーム
  4. 同時接続移動局装置数 : 1
画面イメージ:【図6】実験環境(電波暗室内)

4. 富士通との無線データ伝送実験

2015年10月26日(月曜)に神奈川県川崎市にある富士通株式会社KSPビルのシールドルームで実施した本実験では、高密度に分散配置された複数の基地局(光張出し構成)が互いに協調して送信することで干渉を低減し、単位面積あたりのシステム容量を増大させる技術の検証を行いました。
従来は高密度に基地局を展開すると互いに干渉しあうため、システムの容量を基地局の数に比例して増大させることが困難でしたが、4.6GHz帯の周波数帯を用いた「基地局の協調伝送技術3」により、4台の基地局が協調して同時に信号を送信し、4台の移動局装置が同時接続を行うマルチユーザMIMO伝送により、4台全ての移動局装置の合計で受信時最大11.03Gbpsの無線データ伝送に成功しました。
今後は、より高密度に基地局を設置した環境で、伝搬環境や移動局装置の位置などの情報も活用することにより、さらに容量を増大させる技術の実験を開始する予定です。

実験概要
  1. 実験場所 : 富士通株式会社KSPビル(神奈川県川崎市)シールドルーム内
  2. 周波数帯 : 4.65GHz帯
  3. MIMO多重 : 8(4ユーザ×2ストリーム)
  4. 同時接続移動局装置数 : 4
画面イメージ:【図7】実験装置、【図8】実験環境(シールドルーム内)、【図9】協調伝送技術の測定結果

5. ファーウェイとの無線データ伝送実験

2015年11月18日(水曜)に中国(成都市)で、2.3GHz帯を用いて、ドコモ、ドコモ北京研究所、ファーウェイが共同で実施した本実験では、多数の端末接続、システムの大容量化を実現する技術の検証を行いました。
マルチユーザMIMO4 技術で同時データ伝送可能な移動局装置の数を増やすことを目的として、64個という多数のアンテナ素子を搭載した基地局と、屋外に配置した24台の移動局装置との間で大規模なマルチユーザMIMO伝送を行いました。さらにマルチユーザMIMOに加え、「非線形プリコーディング技術5」を適用しました。
これにより通常のマルチユーザMIMO伝送から通信品質をさらに向上させることが可能となり、LTE-Advancedの移動局装置を使用したマルチユーザMIMO伝送の屋外実験の際に得られたセルあたりの周波数利用効率6 の3.6倍となる43.9bps/Hz/Cellを達成しました。
今後は、日本においてさまざまな5G技術の実験を開始する予定です。

実験概要
  1. 実験場所 : 中国(成都市)
  2. 周波数帯 : 2.3GHz帯
  3. MIMO多重 : 24(24ユーザ×1ストリーム)
  4. 同時接続移動局装置数 : 24
  5. アンテナ数 : 基地局側…64送信アンテナ、移動局装置側…2受信アンテナ
  1. MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)多重とは複数のアンテナから、異なる信号を同時に同じ周波数を用いて送信することで周波数利用効率を向上させる技術です。
  2. マルチビームMIMOとは、基地局から複数のビームを用いて異なる信号を、同時に同じ周波数を用いて移動端末に対して送信することにより、ビームによって電波の強度を強めつつ、MIMO多重伝送の効果を得る(周波数の利用効率を向上させる)技術です。
  3. 基地局の協調伝送技術とは、同じ周波数帯の電波の干渉を低減するため、ある移動端末に対して複数の基地局が協調して信号を伝送することにより、移動端末が受信する信号の品質を向上する技術です。
  4. マルチユーザMIMOとは、同一時間周波数において、複数ユーザに対してMIMO伝送を行う技術です。
  5. 非線形プリコーディング技術とは、基地局の送信時に、非線形演算処理を用いてあらかじめ移動局間の干渉を抑えて送信することにより、多数の移動局に対して干渉を抑えつつ同時に高品質送信を実現する技術です。
  6. 周波数利用効率とは単位周波数あたりに送信可能な情報量のことで、単位はbps/Hzです。

報道発表資料に記載された情報は、発表日現在のものです。仕様、サービス内容、お問い合わせ先などの内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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