報道発表資料

(お知らせ)スマートフォンを使ってストレスを推定する技術を開発
-慶應義塾大学、東京大学と共同開発-
<2018年3月19日>

株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室(以下、慶應義塾大学)、および国立大学法人東京大学人工物工学研究センター(以下、東京大学)と、日常生活でスマートフォンを使う中で、自身のストレス状態を推定できる技術(以下、本技術)を共同で開発いたしました。

本技術は、以下のデータと知見を組み合わせて開発しています。

  • スマートフォンから取得できる各種データ1
  • 慶應義塾大学の、ストレス状態における行動特性やストレス状態計測に関する精神医学・心理学の知見
  • 東京大学の、行動認識に関するセンサーデータ処理の知見
  • ドコモがこれまで培ったビッグデータ解析技術やAI(人工知能)技術

上記を元にしたストレス推定は、以下の手順で行っています。

  1. 精神医学の分野において、ストレス状態の客観的な計測方法の1つである心拍間隔(R-R間隔2)の揺らぎを解析し、ストレスを定量的に計測することで3、利用者のストレス状態を数値化(主に、慶應義塾大学の知見を活用)
  2. 上記1で心拍データの計測に協力いただいた方が保持しているスマートフォンの各種データを、行動特徴として数値化(主に、東京大学、ドコモの知見を活用)
  3. 上記1で計測したストレス値と上記2の行動特徴の数値の関係性をAIで学習し、ストレス推定モデルを構築(主に、ドコモの知見を活用)
  4. ストレス状態を推定したい利用者は心拍計を付けることなく、スマートフォンを普段通り使うだけで、スマートフォンから取得した行動特徴の数値を、上記3で構築したストレス推定モデルに照らし合わせることで、自身のストレス状態を推定

本技術により、利用者のストレス状態を推定し、定期的にフィードバックすることで、ストレスマネジメントの意識を高め、心身を健康な状態にする0次予防4をサポートすることが可能となります。
現在、本技術の汎用化を検討しており、こころのセルフケアを目的としたアプリケーションの早期実用化をめざしています。

  1. 各種データとは、加速度センサー、ジャイロセンサー、気圧センサー、照度センサー、位置情報、スマートフォン利用状況などのデータです。
  2. R-R間隔とは、心電図における波形の鋭いピーク(R波)の間隔のことです。
  3. 「循環器疾患と自律神経機能」 編集:井上博 医学書院
  4. 0次予防とは、一人ひとりに合った方法で、健康の維持・向上をめざし、病気を予防しようとする試みです。

別紙 共同開発の概要

1.目的・背景

2014年の厚生労働省の調査1によると、精神疾患の患者数は年々増加傾向にあり、メンタルヘルスに関する社会的な関心が高まっています。
現状、ストレスを計測する方法は、アンケートによる主観的なストレスを自記式に評価するものと、心拍などにより得た、生体情報を元に客観的に計測するものとの二種類があります。自身がストレスに気付いていないとメンタルの不調へ陥りやすいと考えられるため、本開発では生体情報を元にストレスを計測する方法に着目いたしました。
アンケートの場合は利用者による回答を必要とし、心拍間隔を利用する場合は測定に心拍計を必要としますが、本技術はスマートフォンを普段通り利用するだけで推定でき、アンケートの回答や利用者の測定が必要ありません。

2. ストレス推定モデルの構築方法

スマートフォン利用における各種データと心拍データを同一利用者から取得し、AIでストレスを推定するモデルを構築しました。

<推定モデル構築までの流れ>

  1. スマートフォンより得られる加速度などのセンサーデータ、位置情報、画面のON/OFFなどの端末の利用状況を示す各種データを利用し、移動パターンや歩行・静止などの身体的行動、電話回数などの他者との交流度合いなどストレス時に現れる特徴的な行動を約130種類の特徴として数値化します(図中①)。
  2. 約130種類の行動特徴の数値と、心拍データに基づいて計測したストレス状態(LF/HF)2との関係性をAIで学習し、ストレス推定モデルを構築します(図中②)。
  3. 構築したストレス推定モデルの正確性を確認するため、生体情報とストレス推定値を比較し評価します。

3. ストレス推定モデルの妥当性評価方法・結果

  1. 評価方法
    研究時におけるスマートフォン利用者のストレス値(LF/HF)を、スマートフォンの各種データ3から推定したストレス推定値と比較して、評価を実施します。具体的には以下の手順となります。
    1. 各利用者のストレス値(LF/HF)の平均値を計算
    2. 各日のストレス値が①の平均値より高いか低いかを、スマートフォンの各種データから推定
    3. 上記②の推定と心拍データから計測したストレス値と比較し、ストレスが高いか低いか正しく推定した割合を正解率とする
  2. 評価結果
    分析では正解率約70%の精度で推定を行うことができ、評価の過程において、移動距離やアプリケーションの利用回数などが自律神経バランスの指標と高い関係性を持つことがわかりました。

4. 各者の役割について

各者の役割について
役割
慶應義塾大学 精神医学、心理学の知見に基づきストレス状態における行動特性やストレス状態計測に関する調査・方式提案
東京大学 医工学連携の推進、加速度などセンサーデータからの行動推定手法に関する調査・方式提案
ドコモ ストレス状態推定モデル構築のためのデータ計測、ビッグデータ解析技術によるストレス推定 モデル構築のための特徴生成・モデル構築
  1. 厚生労働省 平成26年(2014年)患者調査による。
    統計表 PDFhttp://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/toukei.pdf
  2. 本技術においては、ストレス状態を自律神経のバランスとし、心拍間隔を周波数解析します。LF/HFにおけるLFとは低周波(Low Frequency)、HFとは高周波(Hi Frequency)の略語です。リラックス時などストレスが低いときにはHF成分が大きく、緊張時などストレスが高いときはLF成分が大きくなり、LF/HFでストレス状態を定量的に計測できます。
  3. 同意を得た利用者からデータを収集し、データはドコモ内での分析のみに利用しています。

報道発表資料に記載された情報は、発表日現在のものです。仕様、サービス内容、お問い合わせ先などの内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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