報道発表資料

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(お知らせ)スマートフォンの日常的な使い方から持ち主の集中力を推定する技術を開発
-慶應義塾大学、東京大学と共同開発-
<2019年4月12日>

株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室、文学部心理学研究室(以下、慶應義塾大学)、および国立大学法人東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター(以下、東京大学)と、スマートフォンの日常的な使い方から持ち主の集中力1を推定できる技術(以下、本技術)を開発いたしました。

本技術は、スマートフォン上の加速度などのセンサーデータ、位置情報データ、アプリの利用履歴データなど、スマートフォンの日常的な使い方から得られるデータ2から、人の行動やスマートフォンの使い方を約250種類の特徴量として数値化します。そのうえで、AIが特徴量から持ち主の集中力を推定します。例えば、集中力が低下しているときは、傾向として持ち主の身体の動きが多くなったり、普段よりもスマートフォンの画面を見る回数が増加したりしやすく、こういった行動の変化を観察することで集中力を推定することができます。

本技術により、例えば、トラックやバスの運転手の前日までのスマートフォンの使い方から、当日の集中力が低下する可能性が高いことがわかった場合、運転手自身が適切に休憩を取ることで業務パフォーマンスの向上に努めることができます。
また、企業が働き方改革を推進する一環として、就業者が自身の集中力を可視化し理解することで、働く一人ひとりの意識改革や非効率な勤務状況の見直しへの活用が期待できます。

さらに、適度なストレスは集中力を高める効果があることが知られているため3、2018年3月に開発したストレス推定技術4と組み合わせ、ストレスと集中力の状態から、人にかかるストレスが適切なものなのか否かを読み解くことができる技術の開発をめざします。

ドコモは、パートナーとともに新たな価値を協創する「+d」の取り組みの一環として、本共同研究成果のさらなる検証と実用化に取り組むことで、より働きやすい社会と安全な労働環境の実現をめざします。

  1. 本技術開発では、集中力を判断のスピードと判断の正確さとして定義しています。
  2. 実用化の際は、本人にデータの利用許諾をいただくことを前提にすることを考えています。
  3. 厚生労働省:こころの健康 気づきのヒント集
    PDFhttps://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-9.pdf
  4. 2018年3月19日(月曜)報道発表:スマートフォンを使ってストレスを推定する技術を開発
    https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2018/03/19_02.html

別紙 共同開発の概要

1. 目的・背景

一億総活躍社会の実現に向け、働き方改革として、長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現が求められています。長時間労働を是正するためには、働く一人一人の意識改革や非効率な勤務状況の見直しにより、集中力を高めることが重要です。
現在、人の集中力を客観的に計測する方法として、Go/NoGo課題1のように認知的コントロール機能2を計測する検査が知られています。しかしながら、実際の労働環境においては、定期的にGo/NoGo課題を実施し集中力を評価することは現実的ではありません。
そこで、本研究プロジェクトでは、Go/NoGo課題とスマートフォンの日常利用のビッグデータを収集し、Go/NoGo課題の結果を推定することで、持ち主の集中力を推定できる技術を開発いたしました。本技術により、持ち主はスマートフォンを普段どおり利用するだけで集中力を推定でき、Go/NoGo課題の実施は必要ありません。

2. 集中力推定モデルの構築方法

スマートフォン利用における各種データとGo/NoGo課題データを同一利用者から取得し、AIで集中力を推定するモデルを構築しました。

<推定モデル構築までの流れ>

  1. 集中力として人の認知的コントロール機能を客観的に計測するため、Go/NoGo課題を行い、利用者の集中力(GoとNoGoの成功率)を数値化
  2. 上記1でGo/NoGo課題を実施いただいた方が利用しているスマートフォンの各種データ(加速度などのセンサーデータ、位置情報、画面のON/OFFなどの端末の利用状況)3を、約250種類の行動特徴量(人の歩行・静止などの身体的動き、滞在地点情報などの移動パターン、SNSの利用頻度などの、認知的コントロール機能が低下しているときに現れる特徴量)として数値化(図中①)
  3. 上記1で計測した集中力の値と上記2の行動特徴量の関係性をAIで学習し、集中力推定モデルを構築(図中②)
  4. 集中力を推定したい利用者は、Go/NoGo課題を実施することなく、スマートフォンを普段通り使うだけで、スマートフォンから取得した行動特徴量を、上記3で構築したモデルに照らし合わせることで、自身の集中力を推定できる
図:推定モデル構築までの流れ図:推定モデル構築までの流れ

3. 集中力推定モデルの妥当性評価方法・結果

  1. 評価方法
    研究時におけるスマートフォン利用者の集中力(Go/NoGo課題におけるGoとNoGoの成功率)を、スマートフォンの各種データから推定した集中力推定値と比較して、評価を実施します。具体的には以下の手順となります。
    1. 各利用者の集中力の平均値を計算
    2. 各日の集中力の値が①の平均値より高いか低いかを、スマートフォンの各種データから推定
    3. 上記②の推定結果とGo/NoGo課題結果から算出した集中力の値と比較し、集中力が高いか低いかを正しく推定できた割合を正解率とする
  2. 評価結果
    分析では34人4を対象に正解率を平均で約74%の精度で推定できることを確認し、評価の過程において、朝の利用者の動きの活発さや、一日を通じてのスマートフォンの利用時間やSNSの利用回数などが利用者の集中力(Go/NoGo課題の成功率)と高い関係性を持つことがわかりました。

4. 各者の役割について

各者の役割表
  役割
慶應義塾大学 精神医学、心理学の知見に基づく認知的コントロール機能の状態と行動特性の関連性の調査、集中力の計測方式の提案
東京大学 医工学連携の推進、加速度などセンサーデータからの行動推定手法に関する調査・方式提案
ドコモ 集中力状態推定モデル構築のためのデータ計測、ビッグデータ解析技術による集中力推定モデル構築のための特徴生成・モデル構築
  1. Go/NoGo課題とは、Go(例えば指定の文字 P、Q、Tに対しできる限り早く反応する)、およびNoGo(例えば指定の文字Xでは反応を抑制する)の2つの反応を判断する課題であり、この課題を行うことで認知的コントロール機能(作業スピードと正確さ)を数値化できます。
  2. 認知的コントロール機能とは、やるべきことを早く処理し、やるべきでないことを抑制できるかの能力を表しています。
  3. 各種データとは、加速度センサー、ジャイロセンサー、気圧センサー、照度センサー、位置情報、スマートフォン利用状況などのデータです。
  4. 同意を得た利用者からデータを収集し、データはドコモ内での分析のみに利用しています。

報道発表資料に記載された情報は、発表日現在のものです。仕様、サービス内容、お問い合わせ先などの内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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