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電波の生体への影響を調べるための共同検討における実験結果のご報告

-携帯電話基地局からの電波の安全性を再検証-

<2007年1月24日>

株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
KDDI株式会社
ソフトバンクモバイル株式会社
株式会社三菱化学安全科学研究所

携帯電話事業者3社(NTTドコモ、KDDI株式会社およびソフトバンクモバイル株式会社)は、2002年11月から携帯電話システムの電波の生体への影響について共同で検討を進めております。今回、その一環として実施した細胞実験(「細胞実験の概要」を参照)の結果についてご報告いたします。

本実験の背景

現在、携帯電話機や携帯電話基地局の電波については、世界保健機関(WHO)や欧米政府機関、日本の総務省(生体電磁環境研究推進委員会)は、電波防護指針値を下回る強さの電波によって、健康に悪影響を及ぼすという科学的な確固たる証拠は認められないとの認識にあります。
しかしながら、携帯電話を始めとする一般の方々の電波利用の急増に伴い、身近になってきた電波に不安を覚える方々がいることも事実であり、WHOや総務省(生体電磁環境研究推進委員会)は電波の安全性に関するより一層の研究を推奨・推進していることから、本研究もこれらの提言などに応えるべく電波の安全性を確認するために実施しました。

これまでの実験の経緯

この細胞実験は2002年11月から開始しており、一部の実験結果(細胞の増殖、遺伝子の働き、DNA鎖切断などへの影響)につきましては、影響がないことを2005年4月26日に中間報告させていただきました。その後も携帯電話基地局の電波の影響がないことを検証するために、残りの検討課題について引き続いて実験を実施しました。

実験結果

今回の大規模な細胞実験により、細胞レベルおよび遺伝子レベルでの電波の生体への影響が確認されませんでしたので、携帯電話基地局からの電波の安全性について改めて検証できたといえます。また、これまでに得た結果は、電波が細胞構造や機能(DNAや遺伝子の働きなど)に影響を与えてがん化するかもしれないとの主張を否定する科学的証拠の一つになるものです。

  1. 中間報告以降、継続して実験を実施した、細胞のがん化作用(形質転換)やストレスならびに細胞死の誘導(アポトーシス)に関連する遺伝子・たんぱく質への作用(情報伝達)についての検討項目においても、電波の影響は確認されませんでした([参考]を参照)。
  2. 5年間の実験では、細胞レベルだけでなく遺伝子レベルを含めた主要課題5項目全てについて、携帯基地局の電波の防護指針値と同レベルから10倍に相当する強度の電波で評価を行ったところ、電波の影響は確認されませんでした。
  3. 本細胞実験は、専門の研究機関(株式会社三菱化学安全科学研究所)に委託して実施したものであり、これまでの実験結果については下表の通り、国際会議ならび論文などで発表(一部予定)されております。
  4. 実施された実験結果の一部は既にWHOのデータベースに登録されており、電波と健康についての研究を進めているWHO国際電磁界プロジェクトの取り組みに貢献いたしております。

実験の特徴

  1. 今回の実験では、異なる特徴を持つ4種類のヒト由来の細胞(子供由来の比較的若い細胞を含む)および哺乳類の細胞1種類を用いて、がん化に関連する様々な指標を分析評価しました。
  2. 同時に細胞内で働いている約20,000個の遺伝子全てについて解析評価することで電波の生体への影響を幅広く検討しました。
  3. 従来の電波発射装置に比べて10倍を超える細胞数を同時に曝露(ばくろ)できる電波発射装置を用いており、世界的にも類の無い網羅的な実験を実施したといえるものです。
  4. 実験で評価した電波の強さは、携帯電話基地局の電波の防護指針値と同レベルから10倍に相当する強度としました。通常、携帯電話サービスで運用している基地局電波の強さは、本実験で設定した電波の強さと比較して非常に低いものであり、従来から生体への影響を心配する必要はないと考えられておりました。
本実験結果に関する対外発表状況
検討項目 発表先
細胞の増殖率 BEMS注意1 国際会議(2003年)
BEMS論文(査読結果待ち)
遺伝子の働き BEMS国際会議(2004年、2005年)
BEMS論文(査読結果待ち)
DNA鎖切断 BEMS国際会議(2004年、2005年)
BEMS論文(2006年掲載1件)
形質転換(細胞のがん化作用) BEMS国際会議(2006年)
BEMS論文(査読結果待ち)
情報伝達(ストレスや細胞死への作用評価) BEMS国際会議(2006年)
BEMS論文(2006年掲載2件)
  • 注意1 BEMS:
    Bioelectromagnetics(学会)。注意2
  • 注意2 BEMS会議では物理、工学、生物学、医学など、多方面の分野から電磁界の生体影響について研究発表および議論がなされています。

細胞実験の概要

細胞レベルおよび遺伝子レベルでの電波の生体への影響を調べることを目的とした本格的な細胞実験を2002年から実施してまいりました。本実験は、細胞・微生物を用いた各種安全性試験に豊富な経験と実績のある株式会社三菱化学安全科学研究所に委託しており、GLP注意1に適合した試験施設の三菱化学安全科学研究所で実施した信頼性の高い実験といえます。実験結果は、弘前大学医学部の宮越順二教授に医学・生物学的側面から、また、北海道大学工学部の野島俊雄教授に工学的側面から検証いただきました。
この細胞実験は、2002年実験開始当初に予定しておりました主要課題5項目の検討結果をもって終了いたしますが、国際的にも、電波の安全性について、継続して研究が推進されていることから、新たな課題について携帯電話事業者を中心に検討を行ってまいります。

  • 注意1 GLP:
    GLP(Good Laboratory Practice:優良試験所基準)とは、医薬品や化学物質などの安全性評価試験の信頼性を確保するため、試験施設が備えるべき設備、機器、組織および人員、試験操作の手順書などについて定められた基準です。日本では、厚生労働省、農林水産省、環境省などがそれぞれの分野で基準(GLP基準)を定めています。

[参考]電波の生体への影響を調べるための共同検討における実験結果

本細胞実験は、携帯電話基地局の電波の生体影響を評価することを目的に実施しました。実験に使用する電波照射装置はドコモが設計・開発し、ホーンアンテナと誘電体レンズを組み合わせた開放型電波照射システムを取り付けた細胞培養装置で、第三世代移動通信システム(IMT-2000)で規定されるW-CDMAの電波を発生させることができます。また、装置の特徴として、照射装置に49枚(電波照射、非照射を合わせて98枚)の培養皿を設置することが可能であり、電波を照射する群と照射しない群を同時に実験できるため、電波照射を評価した従来の研究と比較して、大規模な実験ができ、多様な細胞変化を同時に評価することができます。この電波照射装置については、2004年に国際学術論文誌のBEMS Journalに審査を経て掲載されました(Iyama et al., BEMS 25: 599-606, 2004)。実験は三菱化学安全科学研究所鹿島研究所の専用実験室で行い、照射装置は外部の電波を遮断可能な電波暗室に設置しました。実験には、原則として由来の異なる複数のヒト細胞を使用しました。一方は正常ヒト胎児あるいは小児由来の細胞で、他方はヒトの脳腫瘍由来の細胞です。
電波照射は携帯電話基地局の電波に対する防護指針値を基準に、電波強度を等倍から10倍の範囲で行い、また、電波照射の時間は各評価項目について予備実験を行った上で感度良く変化を検出できる時間を設定しました。実験では、電波を照射した時(電波照射群)の変化を、電波を照射しない時(非照射群)と比較しました。
判定する項目は、従来の論文などに報告されている項目から、社会的リスクに対する安全性を評価する場合に必要となる項目に、高い関心がもたれている発がん性に関する項目を加えた下記5項目を主要課題と判断し選択しました。

  1. 細胞の増殖
  2. 細胞のDNA鎖切断に対する影響
  3. 細胞のがん化作用(形質転換)
  4. 遺伝子の働き(遺伝子発現)
  5. ストレス、および細胞死の誘導(情報伝達)に対する影響

(1. 、2. と4. の一部の結果については、既に中間報告済であり、3. 、4. の一部と5. について、今回追加して報告しています)

評価項目1. ならびに2. は従来から用いられている基本的な評価です。評価項目3. のがん化作用に対する評価実験では、現時点でヒト由来の正常細胞からがん化細胞を形成させる試験法が確立されていないため、評価手法が標準化されたマウス由来の細胞を使用する実験手順に従って最大41日間電波照射し、細胞のがん化について評価しました。電波の照射時間が最大で96時間であった他の評価実験と比べて、極めて長い期間電波を照射し、その影響を評価しました。評価項目4. の遺伝子の働きの評価では、従来法による評価(項目1. や2.)とは異なる最新の分子レベルの評価にまで踏み込み、約40,000種のヒト遺伝子を網羅的に測定できるDNAマイクロアレイを使用して、細胞の増殖に関与する遺伝子の働きならびにストレス、および、細胞死に関連する遺伝子の種類と働きの変化を同時に測定しました。この測定は、遺伝子の働きを判定する方法として生命科学分野でも最新の技術です。評価項目5. のストレスに対する評価は、ストレスによって誘導されるHsp27というタンパク質の変化を指標とし、また、細胞死の誘導に対する評価は、p53というタンパク質の変化(第一段階)、p53が変化した場合のさらに細胞死に至るまでの情報を伝達するタンパク質の変化(第二段階)並びに、細胞死によって生じる細胞の変化(第三段階)の3段階の変化を指標に実験を行いました。
以上の評価項目について電波照射実験を行った結果、防護指針値を基準とする電波強度の等倍から10倍の範囲の電波が、1. 細胞の増殖、2. 細胞のDNA鎖切断、3.細胞のがん化作用、4. 遺伝子の働き、5. ストレス、および細胞死の誘導に影響を与えないことが科学的に確認できました。遺伝子の働きとしては、細胞の増殖、ストレス、および細胞死に関連する遺伝子をはじめ、がん化に関連する評価に関し、実験に用いた細胞で働いている約20,000遺伝子に対して、電波の影響のないことが確認されました。本共同研究の成果は、生命活動の基本である細胞増殖とそれに関わる遺伝子の働き、並びに、発がんに関連する細胞内の変化とそれらに関わる遺伝子の働きに携帯電話基地局の電波が影響しないことを再確認したものです。
本共同研究の詳細な結果と成果については、過去3年間に国際的専門学会のBioelectromagnetics年会を中心に研究成果を発表してまいりました。また、研究成果をまとめた3報の論文が、国際学術論文誌のBEMS Journalに内容を審査・評価され、受理・掲載されました(Sakuma et al., BEMS 27: 51-57, 2006, Hirose et al., BEMS 27: 494-504, 2006, Hirose et al., BEMS: in press)。

【電波照射装置】
電波照射装置

【細胞実験風景】
細胞実験風景

報道発表資料に記載された情報は、発表日現在のものです。仕様、サービス内容、お問い合わせ先などの内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。なお最新のお問い合わせ先は、お問い合わせをご覧ください。

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