地域からのお知らせ(中国)

産学連携で海苔養殖の課題解決!
広島大学とドコモが栄養塩推定モデルに関する共同研究を実施
―研究期間:2018年10月1日(月曜)~2019年3月31日(日曜)―

2018年12月17日

国立大学法人広島大学
株式会社NTTドコモ 中国支社

 国立大学法人広島大学(以下 広島大学)と株式会社NTTドコモ中国支社(以下 ドコモ)は、2018年10月1日(月曜)から2019年3月31日(日曜)の期間で、海苔養殖現場での課題の一つである海苔の色落ちを解決するために共同研究(以下、本共同研究)を開始しました。
 海苔は、一般的に黒い色のものが良質とされており、海苔の色には、海水の栄養塩濃度が大きく影響します。本共同研究では栄養塩濃度を推定するためのロジックの確立をめざします。※栄養塩とは、生物が生命を維持するために必要な塩類の総称。
 なお、本共同研究には、岡山県農林水産総合センター水産研究所及び岡山県漁業協同組合連合会の協力を得ています。

 海苔の色落ちは、栄養塩濃度が一定の値を下回ると、数日後に発生することから、海苔生産者は栄養塩濃度をリアルタイムに把握し、迅速に対応を行う必要があります。しかし、栄養塩濃度の測定に必要なセンサーが高額なこともあり、一般的には、研究所などが測定しWebサイト等に公開した数値を利用していますが、データの公開頻度が月数回である海苔生産者が養殖海域のデータそのものでないといった課題を抱えていました。
 本共同研究は、海域現場に水温、塩分、植物プランクトン量を計測する安価なセンサーを設置し、計測データをドコモの通信機器にて送信し、栄養塩の推定を行うものです。海苔養殖場に上記センサーを搭載した通信機能付きのドコモの「ICTブイ」を設置し、リアルタイムで海域現場のデータを収集します。これを基に広島大学が、栄養塩を推定するロジックを検証します。栄養塩推定ロジックが確立すると、リアルタイムな養殖場の状況を基にした栄養塩推定データを海苔生産者へリアルタイムに提供することが可能となります。

 広島大学大学院工学研究科の作野裕司准教授は、以前より、海苔養殖の生産性向上を目的とした海苔養殖場周りの水質環境評価調査を行うとともに、リモートセンシング(遠隔計測)と呼ばれる学問分野において、世界でまだ実現されていない新しい非接触水質推定手法開発の一環として、人工衛星データを利用した沿岸の栄養塩推定手法の研究を行っており、今回の共同研究の実施に至りました。
 本共同研究は3~5年後の実用化をめざします。
 広島大学とドコモは、今後も、水産業の抱える課題解決にむけ、取り組んでまいります。

共同研究概要

1.研究題目

栄養塩推定モデルの開発

2.研究目的

安価なセンサーで計測したデータを説明変数とした栄養塩推定モデルを開発

3.研究内容

水温、塩分、植物プランクトン量データを解析することにより、栄養塩推定モデルを開発する。
解析においては、岡山県農林水産総合センター水産研究所が提供するデータ、岡山県漁業協同組合連合会の協力のもとICTブイで計測したデータを用いる。

4.実施期間

2018年10月 ~ 2019年3月

5.実施場所

  1. 研究実施場所
    国立大学法人広島大学内 広島県東広島市鏡山一丁目3番2号
  2. 実証フィールド
    岡山県海域の海苔養殖場等
    1. 西部海域(1点)
    2. 中部海域(児島湾沖)(2点)
    3. 東部海域(1点)

6.役割分担

  1. 広島大学の役割:栄養塩推定モデルの開発
  2. ドコモの役割:ICTブイによるデータの収集、スマートフォンアプリへの栄養塩推定値情報の配信

ICTブイを活用した栄養塩推定ロジック概要

よい海苔を作るために必要な栄養塩の供給源の一つが河川水です。川の流量が増えると栄養塩は多くなり、河口の塩分は低くなります。ただし、川から流れてきた栄養塩は、海の植物プランクトンの栄養にもなり、その量は減っていきます。ICTブイでは、水温・塩分・植物プランクトン量などが測れますので、それらと栄養塩の関係を季節や場所ごとにあらかじめ調べてモデル化することによって、ブイのデータから海苔の養殖場周りの栄養塩を推定しています。

「ICTブイ(I型)」ソリューション概要

ドコモの提供する海洋環境の"見える可"システム。水温や塩分など海洋データの現在値や過去からの推移データをスマホ・ケータイで確認可能。
ドコモは、2016年3月より東日本大震災の復興支援を契機として、宮城県東松島において海苔・牡蠣養殖業の課題解決のためICTブイソリューションを活用した取組を実施しており、九州(佐賀、福岡、熊本)、中国(岡山県)、中部(愛知県)、東北(宮城)で活用されています。

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