地域からのお知らせ(東北)

令和2年度 先端技術を活用した宮城地区西部の課題解決事業
(農業分野における地域活性化)の実施

2020年12月4日
株式会社NTTドコモ東北支社

 株式会社NTTドコモ東北支社は、仙台市の「令和2年度 先端技術を活用した宮城地区西部の課題解決事業(農業分野における地域活性化)」の採択を受け、中山間地農業の実証事業を実施いたしました。

 本事業は、令和2年3月31日(火曜)付「先端技術を活用した宮城地区西部の課題解決計画」に則り、少子高齢化や人口減少、休耕地の増加が進む宮城地区西部において、農業分野における地域活性化の取り組みを展開していくものです。
 事業の推進にあたり、自然環境に配慮した農薬・肥料不使用の早期湛水深水管理の水稲栽培技術1を採用することで、通常雑草の影響で収量確保が難しい付加価値の高い水稲の収量確保および、情報通信技術(ICT)機器を活用することによる高齢化や人口減少の進む中山間地域での農業作業の省力化・収益向上の実現を目指し、実証を行いました。

【実証結果】
 栽培技術とICT機器の活用および、地元生産者の協力により中山間地の水田において農薬・肥料不使用で水稲を栽培できることを実証し、実証圃場(約8a)において約170kgのコメを収穫できました。地元生産者からは「想像以上の実りだった」と評価をいただきました。
 また、水田センサーによる綿密な水位管理を行うことで、課題となる雑草の繁殖を抑え、農薬不使用ながら実証圃場内の除草作業を一切行うことなく収穫を迎えることができました。

 本事業の結果を踏まえ、次年度以降は先端技術活用による更なる省力化、宮城地区西部の地域ブランド米の創出、農地拡大(休耕地の減少)や農業従事者への技術指導を進めていくことで、宮城地区西部のみならず、中山間地域が活性化する新しい農業モデル(中山間地農業デジタルトランスフォーメーション、SDGsに対応した農業経営)の実現を目指します。

※1 農薬肥料不使用の早期湛水深水管理の水稲栽培技術は、農薬を使用せず、独自の圃場整備や細かな水管理による雑草の繁殖を抑制する技術。また、水田の養分が雑草に奪われず、水稲に十分に吸収されるため、肥料を使用せず、収量確保も同時に実現する技術。水田センサーを使用することで、綿密な水位管理を行います。

令和2年度 先端技術を活用した宮城地区西部の課題解決事業(農業分野における地域活性化)」の概要

1.目的

ICTを活用した早期湛水深水管理水稲栽培による地域活性の有効性の確認

2.実施期間

2020年7月3日(金曜)~2020年11月30日(月曜)

3.参加自治体・法人などの役割

仙台市

事業の企画・運営
対象地域の生産者との調整
株式会社NTTドコモ東北支社 事業の実施
早期湛水深水管理水稲栽培の技術指導
ICT機器の提供
新川実証田管理グループ 実証圃場の提供
水稲栽培の実施

4.実施内容

①中山間地の水田おける農薬肥料不使用の水稲栽培の実施
②ICTを活用した圃場管理技術の提供による見回り作業の省力化

農薬肥料不使用の水稲栽培技術 早期湛深水管理

農薬肥料不使用の早期湛水深水管理の水稲栽培技術概要:
秋耕から代掻きまでの圃場整備技術と細かな水位管理技術により、圃場内の雑草生育を抑制する。
また、細かな水位管理は水稲の生育を促し、農薬肥料不使用ながら経済的に農業を継続できるだけの収量の確保を実現する技術。

ICTを活用した圃場管理概要:
水田センサー(PaddyWatch PW-2300)を圃場に設置し、遠隔で監視することで、緻密な水位管理を必要とする水稲栽培を最小限の圃場作業で実現する。

5.実施結果

①中山間地の水田での農薬肥料不使用の水稲栽培において、ICT技術を使って圃場管理を行うことで、有機農業の課題となっていた除草作業を行うことなく、農業経営可能な水準の収穫につなげることができた。

(実施圃場)

雑草の抑制を確認
(比較圃場1)

株間に雑草を確認
(比較圃場2)

雑草多数

実施圃場:早期湛水深水管理での水稲栽培を実施した圃場
比較圃場1:田植までは実施圃場と同じ作業工程だが、通常の水管理で栽培した圃場
比較圃場2:田植を行わず放置した圃場

・除草作業0回
※通常の農薬不使用の栽培の場合、栽培期間中に3名で3日程度の除草作業を実施することから、9人日の作業削減効果と判断
・慣行農法で約312kg/8a(6.5俵/反)のところ、農薬肥料不使用で約170kg/8a(約3.54俵/反)
※農薬肥料不使用米の市場価格(500円~1,000円/kg)を鑑み農業経営可能な水準と判断

②ICTを活用することで、圃場管理の省力化を確認できた。
・水位の確認作業が、通常生産者宅⇔圃場往復10分/回が、スマートフォンで確認3分/回となって、7分/回削減


■宮城地区西部の生産者の主なコメント:
・「初めての農法で半信半疑だったが、想像以上の実りだった」
・「今後も成果を上げ、若い担い手の参入につながればいい」
・「(実証圃場では)思ったほど、雑草が出なかった」
・「今期は水位を下げる時期が遅くなったため、倒伏した稲が増え収量が減ってしまった」

中山間地の農地において、農薬肥料不使用で水稲栽培を実施できることを確認。通常の農法に比べ栽培にかかる経済的負担(農薬・肥料の費用)の軽減、ICT活用による農作業の省力化、収量の確保を確認することができた。稲の倒伏対策を行うことで収量増を目指しつつ、販売による経済的な効果・その他関連作業の評価については継続的に検証を行う。

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