リアルとデジタルの融合で、新宿がもっと魅力的に - 「XRシティ SHINJUKU 」から見えた新しい街づくりの可能性

INDEX目次

  1. 先端技術でつくる未来の街の姿
  2. いつでもどこでもファッションショーが楽しめる
  3. 高層ビル街の一角に新たな形の憩いの場が誕生
  4. 5G時代にはXRがさらに日常生活に溶け込んでいく

乗降客数が世界一多いとされる巨大ターミナル駅、新宿。人の流れは1日を通して途絶えることがない。その結果、新宿という街では多くの人やカルチャーが交差し、多様性や賑わいが生まれている。ここに、最先端のテクノロジーを掛け合せたら、どんなことが起きるだろうか?

そうした新たな街づくりの可能性を探る取組みが「XRシティ SHINJUKU」だ。NTTドコモと小田急電鉄で取組んでおり、2020年11月18日から、XR技術を用いた未来の街を体験できるさまざまなコンテンツが新宿駅周辺において展開されている。今回は、その様子についてレポートしていく。

先端技術でつくる未来の街の姿

NTTドコモでは「XR」が生活インフラとして普及することをめざしている。XRとは、VR/AR/MRなどの現実世界を拡張する先端技術の総称で、それぞれ、現実/仮想世界に“入り込む”ことができる(=Virtual Reality, 仮想現実)、現実に仮想世界を“重ねる”ことができる(=Augmented Reality, 拡張現実)、現実に仮想世界を“融合させる”ことができる(=Mixed Reality, 複合現実)といった特徴がある。現状ではゲームやエンターテインメントに用いられている印象が強いかもしれないが、今後さまざまな領域での活用が期待されている技術だ。

その一つが、街づくりである。XRシティでは、街中のいたるところに3Dコンテンツやパーソナライズされた情報が融合した未来の街の姿を再現していこうとしている。特に今回は、小田急電鉄とともに、新宿を支える企業や自治体、教育機関などさまざまなパートナーの協力を得て、新宿という街の新しい魅力を創出するための施策を展開している。

「XRシティ SHINJUKU」は大きく分けて、「XR Collection/XR Museum」、「XR Wonder Park」、「WIZARD」、「XRアプリ」という4つの体験からなる。ここでは、XR Collection/XR MuseumとXR Wonder Parkについて詳しく紹介したい。

いつでもどこでもファッションショーが楽しめる

多くの百貨店やデパートが集まる新宿は、ファッションの街でもある。小田急百貨店新宿店本館 入り口の階段では時折ファッションショーなどのイベントが行われることもあり、ファッショントレンドの最先端を楽しむことができる場としての価値がある。しかし、コロナ禍においては、大勢の観客を集めてのイベント開催は難しい。 人々が密集しないようにするなど多くの制約があるなかで、ファッションの文化を取り戻すにはどうしたらよいか——そうした課題に応えられるのが、XRだった。

2020年11月18日から23日までの期間限定で、小田急百貨店新宿店本館 入り口の階段付近では「XR Collection」としてXR技術を活用したファッションショーが開催されていた。会場に敷かれた赤絨毯にスマートフォンやタブレットを向けると、現実にいないモデルたちが、きらびやかなウォーキングを繰り広げはじめる。

イベント施設を貸し切った一般的なファッションショーとは異なり、モデルが実際の街の中を歩くことで、一つひとつのスタイルをよりリアルかつ身近に感じることができる。また、スマートフォンやタブレットをかざす角度を変えれば、衣装の細部の様子までも見ることができるため、XRならではの楽しみ方が可能だ。

また、同じ会場では、「XR Museum」として、アート作品の展示も行われており、フォトグラメトリーという技術により工芸品をXR空間に再現した作品のほか、現実の世界では実現が 難しい動きのあるアート作品などもXR空間上で鑑賞することができた。

XR Collection/XR Museumには、アーティストやクリエイターの卵である学生たちへ、コロナ禍によってなくなってしまった卒業制作発表の場をARで提供するという意義もあった。アプリをダウンロードすれば誰もがその瞬間からファッションショーや展示を見ることができるようになるため、観客は一度に同じ時間に集まる必要がない。XRを活用したwithコロナ時代の新しいファッションショーやアート鑑賞の形といえよう。

現実を拡張するXRとファッションやアートとの融合は、さらなる可能性を秘めている。今後は、百貨店のショーウィンドウや大自然の中、自宅でのファッションショーやアート展示など、これまで考えられなかったような場所での展開も期待される。XRは、感情や感性をより深めていく体験を現実世界のあらゆる場所に生み出すことができるのだ。

高層ビル街の一角に新たな形の憩いの場が誕生

専用アプリをダウンロードして、スマートフォンやタブレットを空中にかざせば、実際の街や建物が歪んで空間に穴が空いたり、生垣や植木が顔の形に変化して喋りだしたり……。新宿駅南口付近の新宿サザンテラスでは2020年12月27日まで、デジタルと現実世界が融合する体験を味わえる「XR Wonder Park」が開催されている。

XR Wonder Parkは、ミライからやってきた時空潜水士の「ホロ」というキャラクターとともに、時空の歪みに落ちてしまった「ミライノカケラ」を探して実際の街を回遊するというストーリー仕立てのXRアトラクションで、物語を進めるなかで発生するさまざまなトラブルをミッション形式で解決していくといった内容になっている。新宿サザンテラスのXR空間上にメッセージを残し、他のプレイヤーとのコミュニケーションを楽しむことも可能だ。

実は、この取組みは、建築関係の制度で定められている「公開空地」という土地の有効利用施策の一つでもある。公開空地とは、ビルやマンションの敷地内でも一般の歩行者が自由に通行または利用できる区画のこと。常設的な建物をつくることができないため、その活用方法が模索されている。

キッチンカーなど移動可能なものを置いて賑わいを生み出す取り組みはこれまでにも行われてきているが、XRを使えば現実の空間に大掛かりな設備を設置することなく場所の価値を高めていけるため、まさに公開空地の活用にうってつけの技術といえる。

高層ビル街の一角でありながら開放感のある新宿サザンテラスの広場に、ARを用いた仮想世界でのエンターテインメントを掛け合わせることで、子どもから大人までが楽しめる新しい形の憩いの場が生まれる。そして新宿は、多様性にあふれるより魅力的な街になっていくだろう。

5G時代にはXRがさらに日常生活に溶け込んでいく

この先5Gが本格化すれば、場所を問わず、より高精細なXRコンテンツをスムーズに手元のデバイス に読み込めるようになる。今回は一部エリアかつ期間限定での展開だが、近い将来、XRが日常生活に当たり前に存在する時代がやってくるだろう。未来の街は、きっと、デジタルとリアルが融合した感動やワクワクに満ちあふれている。