いよいよ来年に迫った2020年。世界中から多くの外国人観光客が日本を訪問すると見込まれている。中継を通して遠隔地から競技を観戦する人も多くいるだろう。全世界が注目する一大イベントを快適に楽しむためには、やはりテクノロジーが欠かせない。今回は「NTT R&Dフォーラム 2018(秋)」に展示されていた最新テクノロジーのなかから、2020年を彩るソリューションを紹介したい。

ARで近未来的な「おもてなし」を

透明なスクリーンをランドマークや物体にかざすだけで、解説や付加情報が表示される——そんなSFやアニメの世界で登場するデバイスが、現実のものになった。

透過型のパネルとセンサで構成された「CUzo Card」は、非常にシンプルでスタイリッシュなデザインとなっている。これは、データ処理やコンテンツ生成をすべてクラウド上で行うことで、デバイスに搭載する機能を最小限に抑えられているためだ。

クラウド上のシステムは、翻訳エンジン、音声認識エンジン、画像認識エンジンからなる。デバイスに搭載されたカメラをランドマークや地図にかざすと、画像認識エンジンがこれらを検知し、対象物に合わせた関連情報がARで提供される。スクリーンが透明であるため、景色を遮ることなく確認できるのもユーザーにとっては嬉しいポイントだ。

路上を走るマラソンランナーにCUzo Cardをかざして、選手の情報やそのときの順位などを確認するといったような使い方も考えられる。2020年を盛り上げてくれるツールの一つになるだろう。

またCUzo Cardでは、翻訳エンジンと音声認識エンジンにより翻訳機能も実現している。ここでも、透明スクリーンの価値が発揮される。透明スクリーンの両面から見えるという特長を活かし、たとえば自分側には日本語を、相手側には英語といったように表裏で異なる表示をすることで、顔を合わせながら異なる言語での会話が可能となる。

スクリーンをランドマークや物体にかざすだけで、解説や情報が表示されるCUzo Card

ARでの情報提供に加え、対面翻訳も支援してくれるCUzo Cardは、外国人観光客のおもてなしに最適なデバイスといえるだろう。

裸眼でもどこからみても3Dに見えるテーブル型スクリーン

モノや人が立体的に見えたり、奥行きが感じられたりする3D映画を劇場で鑑賞したことがあるという人も多いだろう。劇場で3D映画を楽しむ際には、一般的に専用のメガネが必要になる。ではなぜ、専用メガネを掛けると3Dに見えるのだろうか? その答えのキーワードとなるのが、「視差」とよばれる右眼と左眼の見え方の違いだ。

私たち人間の脳は、視差によって見ているものの奥行きや立体感を読み取っている。3D映像は、この脳の仕組みをうまく利用したものである。つまり、左眼に見えている映像と右眼に見えている映像を脳で合成した際に立体感を感じられるよう、専用メガネで視差を調整しているというわけだ。

しかし、今回NTTが開発した「360度テーブル型裸眼3Dスクリーン技術」では、メガネなしで、しかも360度どの方向からも3D映像を鑑賞することができる。

360度テーブル型裸眼3Dスクリーン技術

テーブル型スクリーンの直径は約120cm。スクリーンの上部にモバイル用の小型プロジェクタが60台ほど等間隔に設置されている。こうした複数のプロジェクタで各視点に応じた映像を投影する手法では、通常この4〜10倍程度の数のプロジェクタを配置し、3Dに見えるよう視差を生み出す必要があるというが、今回、人の視覚のメカニズムの知見を積極的に活用することで各視点の間を視覚的に補完する「リニアブレンディング」という技術を生み出し、それを光学的に実現する特殊なスクリーンを開発したことで、60台という少ないプロジェクタで360度かつ裸眼での3D映像を実現しているのだという。

この技術が発展していけば、たとえばスポーツバーのような場所でテーブルを囲み、自分の応援チーム側から観戦するという利用の仕方も考えられる。遠隔地にいながらも、より臨場感のある形でスポーツ観戦を楽しむことができるようになる未来は、そう遠くないかもしれない。

Photos : Tadayuki Uemura
Text:Hitomi Suto