「5G経済圏」
から始まる
コンテンツビジネス
創世記

5Gの時代がついに始まった。

・超高速と大容量
・超低遅延
・多数同時接続

この3つを実現した「5G(第5世代移動通信システム)」をNTTドコモ(以下、ドコモ)が3月25日より提供開始した。

「クルマでの移動が飛行機になったようなもの」ともたとえられる5Gの進化。 通信速度は実に約100倍、通信量は1000倍に達する。

この劇的な進化によって、IoT、自動運転、AI、ロボットなどのさまざまな関連技術が発展することで、産業構造や我々の生活環境に大きな変化をもたらし、巨大な「5G経済圏」が生まれていく。

一方、コンテンツビジネスの世界でも大きな変化が起こっている。日本のアニメ、ゲーム、マンガなどのコンテンツが「ライブコンテンツ化」して、世界に巨大な市場を作ろうとしている。

5Gはコンテンツビジネスにどのようなインパクトを与えるのか?
5Gがもたらす未来の社会とはどのようなものなのだろうか?
そのために必要なものは何か?

いま話題を巻き起こしている『オタク経済圏創世記』を上梓し、コンテンツビジネスが「ライブコンテンツ化」していくことを提唱している、ブシロード執行役員であり社会学者でもある中山淳雄氏に話を訊いた。

1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでバンクーバー、マレーシアにて新規事業会社を立ち上げる。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本のコンテンツ(カードゲーム、アニメ、モバイルゲーム、イベント、プロレス)を海外展開。著書に『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』『ヒットの法則が変わった』(PHP研究所)などがある。

5Gで到来する「ライブコンテンツの時代」

──あらためて今、コンテンツビジネスの世界に起こっている変化について教えてください。

中山淳雄 マンガやアニメDVD、家庭用ゲーム、音楽CDなどのパッケージビジネスは1995年を境にして全体的に下り坂が続いていましたが、2010年ぐらいからアニメの動画配信やアニソンなどの音楽ライブや2.5次元ミュージカルなどエンタメ業界にも「例外的に」急成長する市場が生まれてきました。

電通総研「情報メディア白書」ダイヤモンド社、2017を元に山中氏作成

それらの事例に共通していたのが「ライブ感」のある装置で、デジタルデバイスを使ってサービス業のようにアップデートするコンテンツが、日本だけでなく世界も巻き込んで存在感を増してきています。これを私は「ライブコンテンツ化」と呼んでいます。

──ライブコンテンツ化。単純にライブのコンテンツ、という意味でしょうか。

いえ、それは本質ではありません。「ライブコンテンツ化」とは、単にその場でライブを見るだけではなく、そこにいるキャラクターや物語の成長そのものを、数か月から数年という時間軸で共時体験することで、コンテンツそのものの成長をユーザーが共有して楽しむものです。

──アニメや漫画、アイドルなどに特有なのでしょうか。

いわゆる二次元のオタクコンテンツが一番わかりやすい事例ではあります。アニメとマンガで浸透した想像上の二次元キャラクターが、歌舞伎やミュージカルといった三次元の世界で新しい世界観を魅せることで、よりユーザーはそのキャラクターや物語を深掘りして消費していくことができます。

ユーザーの目が肥えて高額になったアニメやゲームなど二次元の商品に対して、その量産が難しくなるにつれて柔軟性をもった三次元での展開とのコラボが志向されています。「ワンピース歌舞伎」などのように伝統芸能も、オタクコンテンツの力を取り入れ、お互いに活性化しています。

ただ、これだけにとどまらず、例えば手前味噌ですが、我々ブシロードが手掛ける「新日本プロレス」のようなスポーツコンテンツもそうです。現在、世界的な人気を博し、2019年7月期の売上高が54億円と過去最高を記録しました。ここ8年で約5倍に急成長していますが、これも「ライブコンテンツ化」に成功した事例でもあります。

2014年から展開している動画配信の「新日本プロレスワールド」は10万人の有料登録のうち、半分が海外ユーザーです。国内でも年間40万以上もの観客を動員するビッグコンテンツながら、配信を通してユーザーを「発見」することで、米国や英国、オーストラリアなど海外で興行を開催していく足掛かりになっています。

──普通のプロレスやコンテンツと何が違うのでしょうか。

いま人々の興味はSNSや配信などデジタルで始まります。そしてデジタルだけでぶつ切り消費をしてすぐに他のものに興味をうつしてしまいます。

だからコンテンツ自体がライブにアップデートを続け、次の試合で何が起こるかという大きな物語に関心を巻き込み、リアルの3次元でみる衝撃とデジタルの2次元でみるアップデートが連動しながら成長していかないと、ユーザーが「入り込んでくれる」ことはなくなります。

──5Gの特徴に超低遅延と多数同時接続があります。今後は国境を越えて10万人、100万人規模のバーチャルライブイベントも実現できるとも言われています。ますます「ライブコンテンツの時代」は進むのでしょうか。

そうですね。テクノロジーの理想は、それが存在することを忘れさせることです。水や電気のように生活のインフラに組み込まれ、そのインフラの上に新しいサービスが次々と開発される。

デジタルでありながら、同じ時間に同じ体験を共有している感覚にさせるほど、自然なものになれば、いまは2次元と3次元で交差している世界は、常に「2.5次元」にいるかのようなデジタル体験が身体化する状態になるでしょう。

通信速度もデータ容量も気にしなくなれば、今は「デバイス」を介さないと扱えなかったコンテンツを本当の意味で「ライブ」にするものになるでしょう。そうなったときに5Gは21世紀を代表するイノベーションになるのだと思います。

──スポーツだと、試合中継をマルチ画面で見られたり、試合中のデータが配信されたりするなど、5Gによって今までにない体験ができるようになりそうです。

従来の視聴体験は、時間の「アソビ」が大きすぎます。視聴しかやることがない。今の人はテレビやスポーツを見る時でも、スマホで何か調べながら見ていますよね。テレビでもスマホでも平面ウィンドウからの情報量が限られているので、その「視聴+α」でコンテンツがより多くのインタラクションを誘発する余地がまだまだあります。

サッカー観戦の場合、視聴者の総数や熱量を可視化したり、試合中に選手のヒストリーや過去動画を並行視聴したり、ライブベッティング(試合中に賭けられることができるゲーム)のように+αの遊びを追加していくこともできます。試合開始までにベッティングが終わるのではなく、試合の流れとデータによって株価のようにレートが変わっていく。

参加者の動きがそのレート自体をアップデートし、そのうねりや不確実性そのものもエンタメとして楽しむ。5Gによってインタラクティビティをデジタルに差し込んで視聴体験をより深くできれば、スポーツコンテンツも単なる放映権と広告とチケット・物販収入の世界から変わっていくはずです。

5Gが市場にインパクトを与えるために
必要なもの

──本日は中山さんにドコモ主催の「5G・新サービス・新商品発表会」を体験していただきました。印象に残った新サービス・新商品を教えてください。

超短遅延ライブ中継機「Smart-telecaster Zao-SH」(ソリトンシステムズ)は5Gを使って遠隔地でのリアルタイムコミュ二ケーションを可能にする

作業現場をオフィスからリモート支援する「遠隔作業支援ソリューション AceReal for docomo」(サン電子)

ウェアラブルヘッドセット「Magic Leap1」を使用してドコモと東宝が共同製作した「Tokyo Godzilla Museum」を体験する中山氏

ゲームやVRも体験しておもしろかったのですが、一番心に残ったのは、BtoBも含めた産業のインフラ自体を変えるサービスです。電気設備の保守管理を、施工者の映像をみながら遠隔にいる熟練者がリモートで指導していくプラットフォームなども、とてもドコモさんらしいと思います。

──工事現場や医療の現場など、身近なところでも活躍しそうですね。

例えば飲食の現場などはこれまで1人の職人が一度に教えることができるのは数人ぐらい。背中で学ばせることしかできないがその背中を見る機会が稀、という「教育の壁」みたいなものがありました。

ただ世界で日系飲食店はこの10年で2万店から10万店強になるほど日本食の料理人の需要が広がってます。5Gの時代は地理的・言語的障壁を越えて、1人の熟練者の技を広げ、かつ多店舗をマネジメントしていくことを技術的に可能にする凄いポテンシャルを秘めていると思います。

──B to Bという点ではどうでしょうか。

コンテンツビジネスは10兆円市場と言われていますが、BtoBの市場規模ははるかに大きい。ドコモさんは日本の通信を先導してきた30年の歴史があって、その中で顧客基盤やサービスについてはすごく大きなものをお持ちです。すでに確立されたユーザーベースがあり、そのサービス×5Gをどのようにコンサルティングして、アップデートしていくか。そういったサービスは、ドコモさんにしかできないことだと感じます。

──コロナショックの中で、リモートワークをはじめとする新しい働き方が出てきました。5Gは日本のビジネスパーソンを助ける大きな役割を果たすのでしょうか。

まさに今は大きな転換期です。新しいテクノロジーが登場しても、人々が実際に使ってみて習慣化するまでには、ものすごく時間がかかります。テクノロジーのあとにはUX(ユーザー体験)の壁があるんです。

しかし、今はみなさんが突然オンラインビデオ会議を使わないといけない状況になって、「あれ? リモートワークって意外と効率いいね」と思い始めている人もいるでしょう。東日本大震災のあとにTwitterが大きく普及したように、非常事態に別の習慣を「味見」したことにより、平時に戻った時にも行動習慣が大きく切り替わっている可能性が高い。

これから5Gインフラが浸透していきますが、今のこの非常事態が体験の普及速度を早めることになるでしょう。実際に中国内陸部では今回のコロナショックをきっかけにWi-Fiすらないところから一気に5Gインフラの普及を圧倒的なスピードで進めています。

──5Gが市場にインパクトを与えるには、何が必要になるとお考えでしょうか?

基軸のイノベーションだけでなく、補完するイノベーションが必要になると思います。

たとえば、ドコモさんのiモードはまさに「基軸イノベーション」としてモバイル消費のインフラを創り上げましたが、そのコンテンツ消費を1兆円市場にまで成長させたのはDeNAやGREEがアイテム課金のゲームプラットフォームを作ったからです。着うた・着メロで2000億つくって、ソーシャル空間を使ったガチャによる仮想アイテム課金という「補完イノベーション」ができて1兆円になった。

歴史上のイノベーションって単独ではなくて、常に連鎖的かつ積み上げ式なんですよ。インフラ整備に加えて、UXプラットフォームという補完イノベーションが起こったときに市場化が進んでいくでしょう。

このベン図は、僕がMBAで教えるときに使っている図です。

「Feasible(実現可能性)」は、5Gというインフラ。でも、それだけではユーザーの消費習慣は変わらないんですよ。

「Desirable(願望/欲望)」というユーザーの体験(UX)があり、視聴・消費習慣が文化としてできあがる。そこに
「Valuable(価値)」なビジネスモデルがマネタイズの手段として組み込まれ、音楽市場でいうCDコレクションやライブ記念グッズなどのようなビジネスになって、はじめて「経済圏」ができあがります。

5Gの場合、インフラとしてのポテンシャルを推し量るにはそこに補完される魅力的なUXサービスとマネタイズの仕組みが必要になります。技術が革新的だったとしても、従来の体験が便利になったり、お金を払う価値のある取引ポイントがなければ、「経済圏」を創り出すことはできないでしょう。

5Gで何かの番組を遅延なく高画質で見られるようになったとしても、それは旧来のモデルの延長線上なわけです。4Kも8Kも、あまりインパクトがなかったですよね。2時間の映画を3秒でダウンロードできるようになったとしても、可処分時間が変わらなければ、見られる映画の本数が変わるわけではない。

「通信」を越えた先に何があるのか

──ドコモが整えた5Gインフラの上に、どんなプラットフォームの覇者が現れるか注目ですね。

大切なのは5Gという技術を「通信」や「メディア視聴」にとどめず、BtoBビジネスを含めたインフラにしていくことが普及の足掛かりだと思っています。そのためには、マインドセットを変えることが大事だと思います。

蒸気機関の時代、工場は縦積みでした。蒸気を作るピストンの周囲にしかエネルギーが運べないので、工場はシリンダー装置を中心に2階建て、3階建てになった。その中を人間が行ったり来たりしながら機械に合わせていた。

しかし、その後、電気の時代になっても、工場は30年ほど縦積みのままだったそうです。だって「工場ってそういうものでしょ」というUXが普及していたから。30年経って、蒸気の基本を知らない世代が中心になると、電気は移動してもエネルギー効率がそんなに変わらないことに気づき、工場が平屋で横積みになり、人間のワークフローに合あわせて機械が配置できるようになった。

オートメーションやベルトコンベアみたいな生産技術って電化の時代のあとに始まるわけです。技術的にはもうわかり切っているのに「工場とはこういうものだ」というマインドセットだけが壁になっていた。

新しいサービスやプラットフォームは、今のスキームの外にいる人からしか生まれない。稲盛和夫さんが言っている「よそ者、若者、ばか者」ですね。

──中山さんは5Gが普及した未来の世界はどのような形になっていると想像されていますか?

「もしもし」がなくなる世界になると思います。

今は誰かと通信しようとすると、「もしもし」「聞こえてますか?」と会話できる前提にあることを音声だけで何度も確認しなければいけない。このラグがすごいストレスになっています。3Gだ4Gだと言われても、相変わらず「もしもし」がなくならない。そのような情報のラグがなくなった瞬間、本当に同じ場所でその人と出会ったかのようなスムーズさで話せる世界になる。

ヘッドフォンやゴーグルのような「意識する」デバイスを使わず、離れた場所にいても同じオフィスの隣の席にいるように「あ、そういえばさ」と話しかけることができる。相手が何をしているのかを画面越しに知るのではなく、空間ごと知ることができる。

そのためには、高速かつ安定的な通信が不可欠。データストレージとAIで会話の自動テキスト化と論点抽出ができれば、リアルで会っている以上に質の高いコミュニケーションをすることもできる。

こういうものが実現すれば、それこそオフィスそのものが必要なくなります。雇用場所として1人分確保しておくコストって結構バカにならないですからね。それが、5Gが普及した世界だと思います。

僕は、空間も含めて情報が立体にならない限りは5Gの真価は問えないと思っているんです。映画やテレビのような平面のメディアが始まって100年経ちましたが、今はまだデジタルでも、そのUXを保存した平面情報でさまざまなコンテンツが作られています。

画面のなかでの3Dって、結局は3Dに見える2Dですからね。僕はこれが早く立体になってほしい、と思っています。そういう時代がきっと来ます。

そうなったとき、コンテンツビジネスの世界も大きく変わりますし、人々の生活や教育や産業のインフラ全体も変わると思います。

ドコモさんにはぜひ「もしもし」がなくなった世界を見せていただきたいですね。「もしもし」を作ったのがNTTさんなら、「もしもし」に終わりを告げて新時代のコミュニケーションを切り拓くのは、ドコモさんの使命なのではないかと思います。

5Gベースのインフラが整ったとき、今、我々が使えていない時間とか頭の中のエネルギーが、大きく変わるんじゃないかと今からワクワクしています。

(編集:中島洋一 構成:大山くまお 撮影:吉田和生 デザイン:月森恭助 動画制作:佐々木健吾、高瀬瞬輔、早川裕貴、萬野達郎 [NewsPicks Studios])

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