親のための子どもスマホ'必修'講座 親のための子どもスマホ'必修'講座

INTERVIEW
2018.03.09
尾木先生に聞く!
なくてはならないスマホと子どもが上手に付き合うために

子どものスマホ利用について、さまざまな問題があり、メディアでもいろいろな議論が交わされています。そこで、子どもたちの社会では実際にどのような問題が起こっていて、子どものスマホ利用について、どのような取り組みが行われているのか。大人も含め、利用者は何に気を付けたらいいのか。「尾木ママ」の愛称で知られる、教育評論家で法政大学特任教授の尾木直樹先生にお話をうかがいました。参考になるお話をたっぷり聞かせていただきましたので、前編、後編にわたって、問題点と上手な付き合い方についてお伝えします。

尾木先生に聞く! なくてはならないスマホと子どもが上手に付き合うために

前編では、まず教育の現場では実際に何が起こっているのか。どんなことが問題なのか。初めてスマホを持つ小・中学生だけでなく、大学生の実例なども交え、お話しいただきました。

スマホをどれだけ上手く活用できるか

「ボクもね、少し前にガラケーからスマホに変えたんですが、やっぱり便利ですね〜」とにっこり笑う尾木先生。テレビで拝見する通りのやわらかな物腰と口調ですが、子どもたちとスマホについての問題点を伺うと、鋭いご指摘が次々と飛び出します。

「スマホ自体は便利ですが、問題はSNSの使い方です。最近のいじめの9割以上にSNSが関係しているのではないか?と思ってます。10年ぐらい前に「学校裏サイト」などの匿名の掲示板が社会問題になりましたが、そういったサイトは、大人がちゃんと探して、存在に気づけば、そのやりとりは覗き見ることができたと思います。一方で、最近のSNSでのやりとりは、大人に限らず、他の人が入っていけないことが問題なんです」

学生の中でのSNSの普及は2010年頃から爆発的に拡大し、大学生の99%、高校生の80%は何らかのSNSを利用しているとも言われています。

子どもの居場所を知ることができる、緊急時にすぐに親との連絡が取れるなど、ケータイやスマホを持っていてこその安心材料も少なからずあり、もちろん、そのためにお子さんにこれらのツールを持たせている保護者の方がほとんどでしょう。しかし、便利さと背中合わせに危険があり、まさに諸刃の剣。使い方をしっかり考えないと、さまざまなトラブルに巻き込まれることになりかねません。年齢が低いお子さんであれば、理解力や判断力の不足、年齢が上がれば反抗期などで親の言うことを聞かなかったり、あえて危険なことを試してみたくなったりする場合もあると思います。そうなると、さらに、悪質な大人や大人の世界との接触の危険も出てきます。

思春期のSNS活用で心配なポイント

尾木先生がSNSによるコミュニケーションに危機感を持ったのは、大学で指導していたゼミでのある出来事がきっかけでした。「2013年ごろでしたかね、突然ゼミが“崩壊”したんです! ゼミで扱ったあるテーマについて、次のゼミでその続きから始めようとすると、最初のテーマと全然ずれた話になってしまっていて……。びっくりしましてね、どういうことかとゼミ生に聞いてみたら、SNSで学生同士が勝手に話し合いをしていたことが原因だとわかったんです」

尾木先生が知らない内にゼミの中で学生だけのSNSグループができていて、ゼミが終わった後に、ゼミで扱ったテーマの議論がどんどん進んでいってしまうという問題が起きました。例えば、SNS上で発言力の強い学生がひとりいると、その学生の意見ばかりが通ってしまい、ゼミで決めたことが覆されたり、尾木先生が意図したこととは異なる方向に話が進んでいたこともあったそうです。

「これは大問題だと思いましてね、ゼミでルールを決めたんです。SNSでやっていいのは連絡のみ。議論はしない。何度か話し合いを重ねていく内に、ようやくそうした問題がなくなりました」

大学生であっても、こうしたSNSにまつわるトラブルは後を絶たたないと言います。尾木先生のゼミでは皆で話し合い、ルールを決め、それを守ることで問題解決できましたが、SNSの問題の本質はSNSの利用が先行し、ルール決めなどが後手にまわってしまっていることだと尾木先生は指摘します。

さらに、SNS上でのコミュニケーションで、尾木先生が危惧する点があります。それは「非言語コミュニケーション」と呼ばれる言葉によらないコミュニケーションです。「メール等によく絵文字やスタンプを使いますね。これは文章をソフトに伝えるために使われるのでしょうが、実際は人によって受け取り方が違い、誤解されたり、さらに誤解が誤解を生んで大問題に発展したりします」

例えば、外国人に絵文字やスタンプを見てもらうと、日本人の私たちとは全然違う受け取り方をするものもあるそうです。コミュニケーションは、言葉を尽くしてもなかなか伝わらないことがあるにもかかわらず、言葉なしで思っていることをきちんと伝えるというのには、やはり無理があります。絵文字やスタンプのみのやり取りは、トラブルのきっかけになることが少なからずあることを、認識しましょう。

尾木先生に聞く!なくてはならないスマホと上手に付き合うために
スマホが世界のすべてになってしまう

大人にとっては、スマホは単なるコミュニケーションツールのひとつであり、SNSもその一部です。しかし、尾木先生によれば、子どもたちにとってはそうとは限らないようです。
「子どもたちにとってSNSでのやりとりは、実生活へと直結します。人間関係や学校生活への影響が大きくて、一度使い始めたら“なくてはならないもの”になってしまうのです。つまりSNSこそがリアル……ということになってしまうんです」

子どもたちは、大人のようにバーチャルとリアルを明確に区別できない場合もあります。物事の本質を捉え、自分自身を客観視する能力においては、まだまだ学び始めている段階のため、スマホの中で起こっていることが生活のすべてに思えてしまうことも少なくないようです。それこそが、ネットいじめやひいては自殺などにもつながってしまう危険性をはらんでいます。実際、SNSでのトラブルは大人の世界でも少なからず起こっているのですから、子どもだけでは手に負えない問題であることもうなずけます。

ある年齢以上の保護者にとっては、自身が子どものときにはケータイやスマホなどなかったわけですから、子どもたちとは違った意味で、バーチャルとリアルが混在する世界観自体が、理解しにくいこともあります。大人が想像する以上に、子どもたちも、子どもたちを取り巻く環境も大きく変化していることを認識しなくてはならない時代になってきているのです。

子どもの成長に影響を与えるスマホ

子どもがスマホを持つことについて、尾木先生は大人が一定の理解を示さなければならない部分もあるといいます。

「“思春期”というのは、親離れが始まり、精神構造上、友だちとつながることを強く求める時期なんですね。昔、コンビニの前などで夜遅くまで若者たちがたむろしておしゃべりしていたでしょう? あれが、今はスマホの中で行われているんです。つまり、スマホは大人が思う以上に、子どもたちにとって、なくてはならない存在になっているのです。そこは理解してあげないといけませんね」

リアルからバーチャルへと“場”は変わっても、思春期の子どもたちが求める世界は共通ということを、若者だったころにスマホを持っていなかった世代の大人たちが、理解と学習をしなければならないわけです。

「一方で、思春期の子どもには“ひとりになる時間”も大切なんですね。自分がひとりであることを認識し、自分は何者なのかと悩む。そういう時間を経て、葛藤がきちんと昇華されることで、人としての成長、そして自立があるんです」

その面において、スマホに依存してSNSを使ってばかりいると、常に誰かとつながっていることになってしまいます。親はもちろん、友だちとも離れて、ひとりで考える時間を持つことが自立のためにはとても重要だということを、親子共々認識する必要があるのです。

これは、大人もちょっと耳が痛い部分もあるかと思います。親は子どもの“誰かとつながりたい”という気持ちへの理解を示しつつ、ひとりで考えたり悩んだりする時間を持てるようにリードできると理想的ですね。たとえば、親子で「スマホデトックス」する時間を定期的に持ってみてはいかがでしょうか?

もちろんあります、スマホのメリット

問題ばかり挙げましたが、もちろんスマホにもイイところはたくさんあります。子どもの居場所の検索や連絡以外に、どのようなプラス面があるのか、尾木先生にうかがいました。

「まず、地球規模で物事を捉えるグローバルな視点が持てるということですね。スマホがあれば、ダイレクトに世界とつながれるんですから。そして、リサーチ力がつきます。以前ならひとつのことを調べるにも本や辞書を当たったりして相当の時間と労力がかかったわけですが、今はネットで検索するだけで、すぐにさまざまな情報にアクセスできます。一方で、ネットの情報は玉石混交です。その情報を精査し、正しく利用することができる『ネットリテラシー』も身につけなければなりません。上手に安全に活用できるなら、スマホはグローバル社会を生き抜くための、なくてはならない必須アイテムと言えるでしょう」とのこと。

ますます、上手な使い方を考える重要性が出てきますね!

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