親のための子どもスマホ'必修'講座 親のための子どもスマホ'必修'講座

INTERVIEW
2018.03.23
心理学者晴香葉子先生に聞く
「子どものまわりがハッピーに!スマホを持たせる親が伝えたいコミュニケーション術あれこれ」

高校生の94.8%が利用しているスマホ。この数字は、いまやテレビの世帯普及率(96.7%)に迫るほどとなっており、高校生のスマホの所有は世間一般的に見てもごく当たり前となってきていることが分かります(平成28年度内閣府調べ)。近年このスマホの普及にともない「スマホいじめ」といった、親世代には馴染みのないトラブルが発生し、問題視されています。自分の子どもを守るためにも、まずは親世代が正しい知識や対策方法について考えることが大切です。

今回は作家/心理学者/心理コンサルタントとして、各種メディアで活躍する晴香葉子さんに、心理学の専門的な見地から、中高生とスマホとの関係性や、スマホトラブルを回避するための具体的なアイデアについてお話を伺いました。

心理学者晴香葉子先生に聞く「子どものまわりがハッピーに!スマホを持たせる親が伝えたいコミュニケーション術あれこれ」
スマホによって記憶ではなく記録に残るようになったコミュニケーション

スマホが普及することで、私たちの生活は大きく変化しました。そんな中、昔と比べて中高生たちのコミュニケーションはどのように変化しているのでしょうか。

晴香先生は「365日24時間、スマホを介したコミュニケーションが可能になったことは子どもの精神面においてものすごく大きな変化である」と指摘しています。というのも、以前は子どもが一人で過ごす時間が一定時間ありましたが、他者とのつながりが途切れないようになった今、子ども達にとって精神的にある一定の緊張感が持続した状態になっているといいます。また、記憶ではなく、記録に残るコミュニケーションになったことで、「曖昧なこと」や「ごまかし」がきかなくなったことも、大きな変化の一つといいます。

家庭では、子どもたちが分からないことがあると以前なら親に答えを聞いていたところを、今ではインターネットで調べることによって答えを導く習慣があります。これらにより、若年層からコミュニケーションの中に「納得感」を強く求める傾向がでてきていることもスマホが及ぼした子どもへの影響と言います。

コントロールが肝になる!スマホは翼のようなもの

無意識に影響を受ける存在となったスマホ。その存在は中高生にとって、どんなものなのでしょうか。

晴香先生はスマホの存在を「見えない翼」と表現。「中高生にこれだけスマホが普及している今、自由に活動するためには不可欠な存在。同時に、それを使いこなすスキルも求められる」と指摘します。

スマホが導くバーチャルの世界では、世界中どこへでも飛んでいけたり、瞬時に集うこともできます。行動範囲や可能性を格段に上げてくれる一方で、依存し過ぎたり、コントロールする力がないと歩き方を忘れてしまうような怖い側面も持ち合わせているのです。

「スマホは使い方が複雑で日々進化している。そのため、スマホを買い与える立場である親が子どもよりも理解していることが非常に大切。機能が増えれば増えるほど親の負担は増えると思うが、スマホを提供する企業側も世の中の問題をキャッチして、それを解決するためのサービスを提供している。リスクマネジメントの意識を持って、子ども以上にスマホの機能について理解してついていく努力が必要」と話します。

「子供の安全を守るために提供されているサービスは使いこなすべき」と晴香葉子さん。見えない翼の効果を最大限引き出す方法は、親次第でもあるようです。

心理学者晴香葉子先生に聞く「子どものまわりがハッピーに!スマホを持たせる親が伝えたいコミュニケーション術あれこれ」
危険が潜む!?匿名性のあるSNSでの「共通の趣味や関心ごと」

スマホの存在が、中高生たちのインターネットとの距離をさらに縮めています。インターネットやSNSに溢れる情報が必ずしも正しいとは限りませんが、今の中高生たちは顔が見えない、知らない人とのコミュニケーションに、あまり抵抗を感じていないように見えます。その実情はどのようなものなのでしょうか。

中高生を対象に、ベネッセ教育総合研究が行った調査(2014年)によると、オンライン上で知り合った人がいる比率は、中学生で24.7%、高校生で24.3%。さらに、趣味のつながりからオンラインを通じて情報発信やコミュニティーへ参加している人が、中学生で21.8%、高校生で22.4%にのぼりました。

「同じ音楽が好き、同じアイドルが好きといった“共通の趣味や関心ごと”があると、相手が見知らぬ人だということをつい忘れてしまう。つまり、顔が見えない相手とコミュニケーションをとることへのハードルがぐっと低くなってしまう傾向にある」と、晴香さんはその危うさを指摘します。

SNSを通じて関心を広げ、世界とつながりを持ち、新しい関係性を築けることは素晴らしいことですが、そのコミュニティーを通じた出会いの安全性は危うく、多くの危険が潜んでいるということをお子さんへ認識させる必要があるのかもしれません。

ポジティブなコミュニティーを作るためのコミュニケーション術

もちろんスマホを持つことで得られる良いことはたくさんあります。「リアルタイム性」や「手軽さ」によって、私たちのコミュニケーションは円滑になっています。待ち合わせの連絡やテスト勉強の相談といった実用的なことから、一人でいるときでも思わず笑ってしまうようなたわいもないことまでいつでも簡単に共有できるようになったのです。

また、Facebookの調査によると、相手に気持ちが伝わる「情動感染」は、SNSでも起こることが明らかになっており、これもうまく利用することができると話す晴香葉子先生。「良い感情が集まっている環境の中に身を置くことで自分の心を良い状態に保つことができます。逆に、匿名性の高いコミュニケーションでは、心理学的に攻撃性が高まることが実証されているのでネガティブな感情が集まりやすいサイトの閲覧などは極力控えることも重要」と言います。

他にも「笑顔・感謝・ユーモアは“多幸感”を増やせるキーワード。この3つが入るコミュニケーションをすることで多幸感を得ることができます。相手が辛そうなときにはこの3つを意識して優しい言葉をかけることで相手の心の温度を上げてあげることができます。スマホの場合はさらに、表情が伝わりやすい絵文字やスタンプを送るのもテクニックのひとつ。相手を思いやって、お互いにポジティブな関係性を築いていけるようなコミュニティーに身を置くことが大切」と、スマホを通じたコミュニティーを自分の味方にする具体的なテクニックを教えてくれました。

いじめや仲間はずれにも使われやすいSNSですが、1対1の関係性を強化する効果もあると晴香先生は言います。「ただ1対1のコミュニケーションは、こっそりと悪口を言ったりしやすい傾向に。時には悪口や愚痴をこぼしてしまうことももちろんあると思いますが、SNSは“記録”が残ってしまいます。大きなトラブルに発展してしまう可能性もあるので要注意!」とそのリスクについてもお話いただきました。

さらに、SNS上での自分の好感度を上げるコツについては、「初頭効果*1と親近効果*2が重要。最初と最後に相手を思いやったポジティブな言葉やスタンプを残すことで、相手に良いイメージを残せる」とのこと。

*1:最初に与えられた情報が後の情報に影響を及ぼす現象
*2:人や物に対する第一印象が長い間残り続ける

心理学者晴香葉子先生に聞く「子どものまわりがハッピーに!スマホを持たせる親が伝えたいコミュニケーション術あれこれ」
中高時代は人生のトライ&エラーの時期。SNSもその一つとして捉えてみては

親としては、子どものスマホ利用について心配が尽きません。子どものコミュニケーションのトラブルに対して、大人はどう考え、どんなスタンスを取ればよいのか、最後に晴香葉子さんがアドバイスをくれました。

「スマホがない時代だからといっていじめがなかったかというと、そうではない。形が変わっただけなのではないか。テクノロジーの進化として登場したスマホは、生活を豊かにするためのものとして生み出されたものなので、そのためには積極的に利用し、ネガティブな部分については、注意は払いつつもあまり神経質に考えすぎないほうがいい」と言います。

さらに「自分が子どもの頃のことを考えると、それほど良いコミュニケーションを友人と取れていたかというとそうではない。いろいろな言葉を聞いて傷ついた。意地悪な子もいたし、自分も意地悪をしてしまったこともあると思う。むしろ、今の子どもたちのほうが、コミュニケーション力が高く、お互いを傷つけないようにすることが上手。

傷つかないように配慮ができるようになった分、傷つきやすくなった現代っ子。言葉に弱い子は、言葉に励まされやすい傾向があるので、親御さんにもその点は是非意識してほしい。中高時代は、たくさん失敗をすることで、自分が本当に付き合いたいのがどんな人たちなのかが徐々に見えてくる大切な時期。トライ&エラーの場として、いろいろなコミュニケーションを試す練習ができるよう、親としてそばで見守ってあげることも良いのではないか」と語ってくれました。

「スマホは、コミュニケーションの重要なツールとして日常生活にあるのが当たり前という現代。今後ますますITテクノロジーを介したコミュニケーション力というのは、求められていくと考えられる。スマホは、コミュニケーション能力を磨く場としての活用も可能」という言葉が印象的でした。ロールモデルとなるようなスマホの利用を親たちが行うことで、子どもたちのスマホ環境がよりポジティブなものになるようにしたいものですね。

ライター:Yukie Liao Teramachi(8歳と3歳の子どもを持ち、上の子にはガラケーとiPad を持たせているママライター)

  • 親世代とは違う!?イマドキ子どもたちのコミュニケーション事情
  • 子どもを守るために、知っておきたいスマホ利用時のトラブル例と対策
  • (後編)子どもにスマホを持たせるの……アリ? ナシ?
  • (前編)尾木先生に聞く!なくてはならないスマホと上手に付き合うために
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