分子通信の実現に向けた分子配送実験に成功

<2008年3月27日>

NTTドコモ(以下ドコモ)は、国立大学法人東京大学の須藤 和夫教授(東京大学大学院総合文化研究科)・竹内 昌治准教授(東京大学生産技術研究所)との共同研究により、生体分子を使って情報を伝達する分子通信の実現に向けた分子配送実験に世界で初めて成功しました。

分子通信とは、ドコモが世界に先駆けて提唱した、従来の概念とは全く異なる新たな通信方式です。通信工学と生化学とを融合することで、これまで困難とされていた興奮や感動、ストレス、疾患等の情報を分子で伝送する通信技術を目指しています。今回の実験では、化学エネルギー注意1 によって動作するモータータンパク質注意2 と、人工的に合成されたDNAとを利用して、特定分子を特定場所に配送することに成功しました。この分子配送機構には、外部電源や外部制御が不要であり、自律的に動作する微小な生化学分析器(バイオチップ)注意3 の実現に大きく寄与します。

本技術が実用化されれば、応用展開例の1つとして、バイオチップを搭載した携帯電話(バイオチップ携帯)で、検査対象となる汗や血液に含まれる生体分子を直接検査し、疾患分析やストレス診断を行うことが考えられます。携帯電話を通じて検査結果を医療機関へ送信することで、家庭や外出先でも、簡単・手軽に、高度な健康管理(毎日健康診断)が可能となり、病気の発生・進行を未然に防ぐ予防医療を実現することも可能となる見込みです。バイオチップ携帯は、医療・健康分野の他にも、水質検査などの環境分野や、相性占いなどのエンターテイメント分野にも適用可能となる見込みです。

今後は、分子配送対象となる分子の種類の拡張や、分子配送機構のバイオチップへの組込みなど、分子通信の実現化に向けた更なる研究を共同で進めてまいります。

  • 注意1 化学エネルギー:
    分子の化学反応によって取り出されるエネルギー(燃料として使われる)。
  • 注意2 モータータンパク質:
    化学エネルギーを使って自律的に運動するタンパク質。通常、体内において、筋肉の力発生や、細胞内の分子輸送などを担っている。
  • 注意3 微小な生化学分析器(バイオチップ):
    指先サイズのマイクロチップに、生物・化学実験を行う器具や薬品を小型化して組み込んだもの。通常は実験室で行う化学分析や化学合成がマイクロチップ内で行える。

分子通信技術の概要

  • 通信工学と生化学とを融合した新たな通信方式
  • 生物界での分子を使った情報伝達機構注意1 を、人為的に制御可能な通信システムとして構築
  • 現在の通信技術を置き換えるものではなく、補完する技術

分子通信技術のイメージ図

  • 注意1 生物では、分子を使って、これまでの通信技術では符号化が困難な感情や感覚といった生化学的な情報を伝達したり、運動や記憶といった生化学的な作用や動作の制御などを行っている。

今回実験に成功した技術の概要

  • 一本鎖(いっぽんさ)DNA注意1 同士の二本鎖(にほんさ)形成反応注意2 によって、特定分子を輸送担体へ荷積み(下図1.)
  • 特定分子を荷積みした輸送担体を、モータータンパク質による駆動力で伝送(下図2.)
  • DNAの鎖交換反応注意3 によって、特定分子を輸送担体から荷降ろし(下図3.)

成功した技術のイメージ図

なお、本技術の一部については、2008年1月13日から1月17日に米国アリゾナ州ツーソンにて開催された国際会議 21st IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS’08)の予稿集144ページから147ページに掲載されております。また、更なる詳細は、国際学術論文誌Smallの2008年4月号(Volume 4, Issue 4, April 2008)に掲載される予定です。

  • 注意1 一本鎖DNA:
    二重らせん構造を形成している二本のDNAをほどいた状態の一本の紐状のDNA。4種類の塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)の組み合わせによって構成される。
  • 注意2 二本鎖形成反応:
    二本の一本鎖DNAが結合し、二重らせん構造を形成する反応。相補となる特定の塩基同士(アデニンとチミン、グアニンとシトシン)が結合する。
  • 注意3 鎖交換反応:
    二本鎖を形成していたDNAが一旦ほどけ、ほどけた一本鎖DNAの一方と第三の一本鎖DNAとが二本鎖を形成し直す反応。

バイオチップ携帯の実現イメージ

  • 携帯電話にバイオチップを搭載し、検査対象となる汗や血液に含まれる生体分子から、疾患分析やストレス診断を行う
  • 携帯電話を通じて分析・診断結果を医療機関へ送信することで、家庭や外出先でも、簡単・手軽に、高度な健康管理が可能であり、病気の発生・進行を未然に防ぐ予防医療を実現

バイオチップ携帯のイメージ図

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