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社長対談

2020年のさらにその先を見据えて

ドコモでは、株主・投資家をはじめとするステークホルダーのみなさまと対話をし、その声を経営に活かすよう努めています。今回はステークホルダーの代表として、経営における理論と実務において幅広い知見を有する松田千恵子氏をお迎えし、ドコモの価値創造と持続可能な成長に向けた取組みについて、吉澤社長と対談していただきました。

代表取締役社長 吉澤 和弘 × 首都大学東京 経営学研究科 教授 松田 千恵子氏

パートナーとの「協創」を拡大・深化

松田 まず、御社を取り巻く事業環境についておうかがいします。

吉澤 当社を取り巻く事業環境においては、競争が非常に激しくなってきています。この背景には、モバイル通信が個人だけでなく産業にとって不可欠なものになってきたことがあげられます。そして、テクノロジーがさらに進化することで、これまでなかった「新しい価値」を提供するサービスが出てくるのでないかという期待が高まり、それに伴って競争も激化しています。

このような「デジタルトランスフォーメーション」のうねりのなかで、社会に向けて「新しい価値」を提供するサービスを創出し、競争に打ち勝つには、パートナーとの「協創」が重要です。そこでドコモでは、中期戦略2020「beyond宣言」に取り組み、産業への貢献や社会課題解決に役立つビジネスの創出をめざしています。宣言から約1年間は、5G(第5世代移動通信方式)やAIなどのテクノロジーを事業化するためのトライアルを行い、新しいビジネスの立ち上げに取り組んできました。

» 「beyond宣言」から1年を振り返って

松田 まさに業界の先頭に立って新しい時代を切り拓いているわけですが、そのなかで、会社としての強みをどのように磨き込み、何を優先課題として取り組んでいくか、そうした戦略についてはどのようにお考えでしょうか。

吉澤 ドコモの大きな強みは、いつでも、どこでも、快適にご利用いただける安定した通信ネットワークです。2020年に提供を開始する5Gにおいても、これまでと同様に品質の磨き込みはしっかりと行います。ただし、ネットワークだけを提供してもサービスは成り立ちません。ネットワークに加えて、さまざまな「ビジネスプラットフォーム」をオープンにパートナーへ提供し、協創を拡大・深化させていくことが優先課題です。たとえば、個人認証のプラットフォーム、決済や課金のプラットフォーム、ポイントを進呈するプラットフォームなどを提供します。パートナーのアセットにドコモのアセットをプラスする「+d」の発想で、他にはない強いビジネス基盤を構築し、「新しい価値」を提供していく戦略です。

これまでは、個人のお客さまの利便性をいかに高めるかというところにウエートがあったのですが、今後は、さまざまな産業分野のプラットフォームとしてのニーズも広がっていくと考えています。

さまざまな
ビジネスプラットフォームによって、
「新しい価値」を提供していきます。

回線契約者から「会員」にシフト

松田 プラットフォームとしてサービスを提供していくにあたって、御社くらいの規模の会社になりますと、どんな分野にも対応できると思うのですが、どのようなことに優先して取り組んでいかれますか。

吉澤 基本的にはすべての産業分野を対象にできると考えています。ただし、パートナーにとっての優先課題や社会課題解決に貢献できるテーマを中心に取り組んでいきます。

たとえば、自動車でしたら、少子高齢化という社会課題に応える自動運転やコネクテッドカーなどがあります。ほかにも、大学病院が地域のお医者さんをサポートする遠隔診断アドバイスなど、当社がお手伝いできることはいろいろあるのではないかと考えています。

松田 次に、御社のお客さまに向けた取組みについては、いかがでしょうか。

吉澤 個人のお客さまに対しては、これまでより一歩進んだ「お得・便利・驚き」をお届けし、「絆」を深めていきたいと思っています。具体的には、もっとお得に使えるプランのご提案、dポイントによる還元などを続けていきます。ドラッグストアやコンビニエンスストアなどのパートナーの加盟店でもdポイントを「使える・たまる」ようにして、お客さまのメリットを拡大すると同時に、送客や商流の拡大につなげていきます。さらに、dポイントを使って投資体験ができるサービスをはじめました。これからも利用範囲を広げていきたいと考えています。

松田 ポイントを現金化するのでなく、通貨の代替のような形で流通させていく。まるで「ドコモ仮想通貨」ですが、今のデジタルの世界ではそれが十分可能ですね。

吉澤 通信以外のサービスが拡大するなかで、ドコモにとっての「顧客」の定義についても変えていこうとしています。ドコモは、これまで携帯電話の回線契約者を増やそうと一生懸命やってきたわけですが、日本の人口は限られており、携帯電話の普及率がすでに100%を超えていることから、回線契約をベースとした顧客基盤から、「会員ベースの顧客基盤」へシフトしてまいります。

すべての「dポイントクラブ会員」にさらなる価値を提供

私たちのいう「会員」とは、ドコモの回線契約の有無にかかわらずドコモのサービスを利用していただけるお客さまのことです。たとえば、すでに他社の契約者でありながら、dポイントやdカードなどのクレジットカード、dマーケットやAIエージェント「my daiz」などのサービスをご利用されるお客さまがおられます。さらに、ドコモが保有するこれらのパーソナルデータを活用することで、個人ごとにカスタマイズされた情報を送ったり、その人に合ったおすすめ商品・サービスの情報を送ったりすることも可能になります。

松田 近年、One to Oneマーケティング的な動きが盛んになり、御社がこれに取り組むことで、時代が変わるような大きな変化を感じます。

事業が広がるなか、
組織を束ねるグループ経営や
ガバナンスが重要になってきます。

コミュニケーションを通じて、オープンな会社へ

松田 事業が大きく広がっていくなか、組織を束ねるグループ経営や、マネジメントが健全に機能できるガバナンスが重要になってくると思います。

吉澤 社員が事業に前向きに、積極的に、そしてチャレンジ精神をもって取り組んでいけるよう、いわゆる「攻めのガバナンス」については、KPIやKGIに基づいた事業計画を立案し、PDCAを回しモニタリングしながら、実行しております。

「守りのガバナンス」では、当社の業務において多くの個人情報を扱っているため、人的にもシステム的にも情報管理を徹底しています。

また、コンプライアンスの面では、社員同士のコミュニケーションを重視しています。私は常々、「上司、部下であっても、目線を一緒にしてほしい」と口にしています。これは、「謙虚に、対等な立場で、お互いの話をよく聴きなさい」ということです。コミュニケーションの齟齬は、コンプライアンスの崩壊につながり、やがて不祥事を引き起こします。

松田 おっしゃるとおりです。昔の日本的なピラミッド型の組織では、上意下達があたりまえで、目線を一緒にという意識はなかったと思います。働き方が変わってきて、従業員をステークホルダーの一員としてとらえるようになってから、日本企業のガバナンスやコンプライアンスへの意識も変わってきたと思います。

コミュニケーションといえば、吉澤社長は、投資家とのミーティングや全国のドコモショップへの訪問を積極的に行っていらっしゃるようですね。

吉澤 投資家とは、年2回の海外IRロードショウ(北米・欧州)、国内IR、決算後の投資家ミーティング(中間期・通期)、個別ミーティングなどを通じて継続的な対話をしています。そして、毎月、全国のドコモショップを訪問し、店長やスタッフと話をし、お客さまの声をヒアリングしています。社長に就任してからの2年間で100店舗以上に出向きました。

こうしたコミュニケーションによって得た気づきを経営に活かし、ドコモをオープンな会社にしていきたいと考えています。そして、自分の考えやテリトリーのなかだけで仕事をするのではなく、多様性のある人材が切磋琢磨することで、新しいものが生まれていきます。つまり、オープンでなければ、イノベーションは生まれないのです。

松田 均質な人材がクローズドな組織のなかでひたすら頑張ることは、もはや生産性向上にはつながりません。御社が取り組んでいらっしゃるように、個人の能力を最大限に活かし、社内外のコラボレーションを促すことが、真の意味での価値創造につながるといえます。

2020年のさらにその先に向けて、独自の価値創造によって世の中の変革をリードし、持続可能な成長を果たされることを期待しております。

松田 千恵子氏

東京外国語大学外国語学部卒業。仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院経営学修士。筑波大学大学院企業科学専攻博士後期課程修了。博士(経営学)。(株)日本長期信用銀行、ムーディーズ・ジャパン(株)事業会社格付アナリスト、(株)コーポレイトディレクションパートナー、ブーズ・アンド・ カンパニー(株)ヴァイスプレジデント(パートナー)を経て、首都大学東京経営学研究科(大学院)教授、首都大学東京経済経営学部教授。現在、日本CFO協会主任研究委員、サトーホールディングス(株)社外取締役、日立化成(株)社外取締役、フォスター電機(株)社外取締役、キリンホールディングス(株)社外監査役、その他公的機関の経営委員などを務める。

中期戦略2020「beyond宣言」
2017年4月発表。2020年のさらにその先を見据えたドコモの中期戦略。5Gを軸に「新しい価値」の実現をめざしている。

5G(第5世代移動通信方式)
次世代の移動通信方式。高速、大容量、低遅延、多数の端末と接続できるといった特長をもつ。

+d
パートナーとの協創による取組みをドコモの頭文字をとって「+d(プラスディー)」と呼んでいる。

dポイント
携帯電話料金のお支払いだけでなく、お店での買物やネットショッピングでも、ポイントをためて、使うことができるドコモのポイントサービス。

ポイント投資サービス
dポイントを利用して投資体験ができるサービス「THEO+ docomo」を2018年5月から提供開始。

AIエージェント「my daiz」
お客さまが必要とする情報やサービスを適切なタイミングでドコモやパートナー企業より提案するエージェントサービス。

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