1979年に日本電信電話公社へ入社し、ドコモの前身であるNTT移動通信網株式会社へ異動後、法人、人事、経営企画など、さまざまなドコモの経営戦略に携わり、副社長を経て、今年6月に社長へ就任した。
当時、NTTとして携帯電話の初号機(TZ-802型)の開発と実用化を手掛けるなど、それ以降移動体通信に従事してきた。
NTTが約66%のドコモ株式を保有しており、ドコモは、NTTグループ全体の約4割の営業収益、約6割の営業利益を稼ぎ出し、移動通信事業を担っている。
1992年に営業を開始し、来年25周年を迎える。
ドコモは、通信事業とスマートライフ領域の大きく2つの事業を展開している。通信事業は携帯電話サービスや光ブロードバンドサービスなど。スマートライフ領域は「動画配信」「音楽配信」「電子書籍」などのコンテンツサービス、クレジットカードサービスなどの金融・決済サービス、ケータイ補償サービスなどのあんしん系サポートなどである。
2015年度の通信事業収益は3兆6,898億円、収益構成比81%、スマートライフ領域収益は8,634億円、収益構成比19%となっている。
当初の収益構造は音声収入のみであったが、iモード誕生によりコミュニケーションが通話からメールへシフト、その変化により音声収入が減少したが、パケット収入の増が収益全体に寄与した。しかし、音声収入の減をパケット収入の増で補完することができれば良いが、お客様のご要望に応じた複数プランの導入などの取組みをしているため、音声とパケット収入だけでは収益全体の拡大は難しい。そこで、コンテンツサービス、金融・決済サービス、あんしん系サポートなど通信以外のスマートライフ領域の収入を増やす努力を現在行っている。また、音声収入とパケット収入の減少を止め、少しでも上げていくことにも注力している。
契約数シェアに関しては、当社がシェア45.4%、第1位である。
営業利益の推移に関して、2014年度は新しい料金プランを開始し、料金が安くなるお客様のプラン変更が短期間に集中したことで、営業利益に大きな影響が出た。しかし、2015年度以降は、この新しい料金プランをしっかり訴求し、ご家族でのご利用による上位パックのご選択やデータの追加購入を促進することで、2015年度の営業利益は7,830億円と回復した。今年度は9,100億円という目標を掲げ、必ず達成するよう経営を行っている。
2015年度は5,987億円、今年度は6,000億円を見込んでいる。
フリー・キャッシュ・フローの使途は、配当金、成長投資、自己株式の取得などである。
今年度は10円増配し、年間80円とする。
今年度の営業利益計画9,100億円から逆算すると、配当性向は46.2%と高水準である。
配当金の増配傾向が続いており、毎年増配できるとは限らないが、できる限り強力に推し進めていきたい。
現在(8/25現在)の配当利回りは3%となる。
銀行預金利息や国債など他と比較しても非常に良い利回りである。
今年の自己株式取得は5,000億円を上限に設定しており、既に約3,720億円取得した。残りは約1,280億円で12月31日まで極力上限近くまで取得したいと考えている。
営業収益は対前年318億円増の11,087億円。
営業利益は対前年639億円増の2,993億円。
設備投資は対前年40億円増の971億円。
フリー・キャッシュ・フローは法人税などの支払いにより対前年305億円減の349億円。
しかし、フリー・キャッシュ・フローは通年で6,000億円を見込んでいる。
通信事業の営業利益は対前年580億円増の2,704億円。
スマートライフ領域の営業利益は対前年59億円増の289億円。
各セグメントの営業利益は対前年を上回っている。
通信事業は新しい料金プランの導入により、1利用者当たりの月間平均収入(ARPU)が増えたことで営業利益が伸びている。スマートライフ領域も成長を続け、全体の営業収益と営業利益の増に貢献しており、今年度の営業利益は1,200億円を見込んでいる。
携帯電話契約数は7,000万契約を超え、7,161万。
スマートフォン・タブレット利用数は、契約数の半分弱の3,344万。
解約率は、対前年ほぼ横ばいの0.62%と非常に低い水準。
ドコモ光は、2015年3月から提供を開始し、契約数は対前年5倍の207万。今現在も契約が増えている。
新しい料金プランである「カケホーダイ&パケあえる」契約数は、対前年1.5倍の3,159万。
「カケホーダイ&パケあえる」の契約数が非常に増えたことで、営業収益と営業利益が伸びている。
3月1日からご利用の少ないお客様向けにシェアパック5を提供開始し、カケホーダイライトの適用範囲も拡大した。
6月1日からは、解約金の有無をお客様がご選択できる「ずっとドコモ割コース」と「フリーコース」の2つのコースを開始した。また、長くご利用のお客様向けに「ずっとドコモ割」の更なる拡大と、「ずっとドコモ割コース」をご選択いただくとdポイントを進呈する「更新ありがとうポイント」も開始した。
ARPU(1利用者当たりの月間平均収入)は減少傾向が続いていたが、直近では回復傾向が継続している。
これまで減少傾向が続いていた音声ARPUは、音声定額の料金プランを導入したことで直近では下げ止まってきている。また、パケットARPUは、さまざまなコンテンツサービスを多くご利用いただいていることで、上昇傾向にある。ドコモ光ARPUは、前四半期+40円と増加している。
スマートライフ領域の営業利益は289億円。年間では1,200億円を達成したい。
今後スマートライフ領域の営業収益と営業利益を伸ばしていくことが非常に重要であると考えている。
コスト効率化は継続して努力しなくてはいけないと考えている。
直近の実績では対2015年度で250億円。年間では800億円の効率化を見込んでいる。
「更なる価値」の提供に向けた、重点戦略は3つある。
1つ目は、サービスの創造と進化。
2つ目は、+dの促進。
3つ目は、あらゆる基盤の強化である。
サービスの創造の進化の一つの事例として、スグ電がある。
簡単に電話の発着信を操作できるサービスで、今年の夏モデルから導入した。
画面に触れずに電話の発着信、着信を「消す」、電話に「出ない」といった操作をすることができる。
dマーケットは、動画、音楽、お子さまむけのコンテンツ、電子書籍などを配信している。
2015年度に1,500万契約を突破し、非常に大きな契約数となっている。
今年度は新たにdヘルスケアパック、dリビングを提供開始した。
2015年12月1日から「dカード」を提供開始している。
「dカード」は「DCMX」を名称変更し、リニューアルしたクレジットカードである。
ポイントカードと「iD」機能を搭載し、おサイフケータイ同様にクレジットカードをリーダーライターにかざすだけで決済できる。
「dカード」は1,668万契約。「dカードGOLD」は130万契約を突破した。
ドコモのご利用料金を「dカードGOLD」でお支払いいただくと、10%ポイント還元している。
+dとは、パートナーの皆さまとドコモの協創で「更なる価値」をお客様・世の中へ提供する仕組みである。
パートナーの強みとドコモの強みを足し合わせることで、もっとお得、もっと楽しい、もっと便利なサービスを提供していきたい。
+dの具体的事例として、ローソン様との取組みがある。
お買い物した際にdポイントカードをご提示いただくことでdポイントがたまる。
dポイント保有のお客様は5,850万であり、ローソン様へ送客を図っている。
ドコモではAI(人工知能)に関する研究にも取り組んでいる。そのAIを活用した+dの取組み事例は3つある。
1つ目は、タクシー利用需要予測の実現として、東京無線様、富士通様、富士通テン様と連携している。
ドコモのモバイル空間統計の人口移動に関する統計データを駆使し、タクシー需要が多いエリアへ適切にタクシーを配車する実証実験である。
2つ目は、自動運転サービスの実現として、九州大学様、DeNA様、福岡市様と連携している。
九州大学構内における2018年度下期のサービス開始に向けた無人の自動運転バスに関する実証実験である。
3つ目は、自動運転サービスの実現に向け、総務省の実証実験の委託先として決定した。
地図データベースのリアルタイム更新・配信技術に関する実証実験である。
+dの促進として、さまざまなパートナーの皆さまと連携を進めており、その協業先は既に70社以上となる。
このような取組みが評価され、MM総研大賞2016の「大賞」を受賞した。
あらゆる基盤の強化として、ネットワークの高度化に取り組んでいる。
ドコモの強みはネットワークが非常に強靭であることである。
現在は、PREMIUM 4Gとして375Mbps、370Mbpsを提供しており、さらに速度を上げ500Mbpsを今年度中に提供する。第5世代(5G)に関しては、2020年の提供開始に向けて研究開発をしており、5G提供により4K/8K映像を同時に伝送することができるようになる。
2020に向けて、5G、IoT、ビックデータ/AIといったドコモの技術を活用し、さまざまな産業へ貢献したいと考えている。
5Gでは、4K/8K映像伝送、AR/VRを含めた新たな機器開発分野での貢献。
IoTでは、ドローン、農業ICT、自動運転分野での貢献。
ビックデータ/AIでは、音声認識や自然対話技術を活用したロボット、多くの外国人旅行者の訪日を見据えた翻訳サービス分野である。
CSRは、持続的な企業価値向上に向けた取組みとして、経営そのものであると考えている。
「Innovative docomo」として、社会価値の協創という取組み。
「Responsible docomo」として、社会的責任の遂行である。
データ通信量あたりの消費電力量削減に取組んでおり、今年度は2012年度比で1/4に削減したいと考えている。
お子さまがスマートフォンやケータイを安全にご利用いただくため、トラブルを未然に防ぐ、ルール・マナーを身につける教室を開催している。これまで約57,500回、約860万人を対象に実施した。
災害対策は非常に重要である。
平常から全国ネットワーク状況の常時監視。
災害時にはネットワークの早期復旧が行えるよう防災訓練実施や、災害現場のサービスエリアを即座に確保する移動基地局車の配備などに取り組んでいる。
4月の熊本地震では、停電による電源断、バッテリー枯渇が主な原因で最大84局の基地局にサービス中断が発生した。
しかし、移動基地局車などを活用し1週間で復旧させ、大規模な災害に対して迅速に対応することができた。
社会への貢献や株主還元(配当+自己株式の取得)の充実によって、皆さまに長く愛される会社をめざしたいと考えている。引き続き応援をお願いしたい。
A1 貴重なご意見として受け止める。全ての株主の皆さまに平等にご満足いただくため、株主優待よりも配当という形で応えていくことが望ましいと考えており、現時点で実施していない。
A2 削減費用は数千万円程度。ニューヨーク証券取引所における取引規模は小さく、マイナス影響はないと考えている。