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Super 3Gの技術動向 その1 Super 3Gの概要および標準化活動状況〜2.Super 3Gコンセプト

2.4 Super 3Gのイメージ

3Gの周波数帯域を使用するSuper 3Gは、無線アクセス方式に新しい技術を積極的に取り入れ、飛躍的な性能改善をねらっている。具体的には直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)注意1やMIMO(Multiple Input Multiple Output)注意2といった技術要素の採用を視野に入れている。遅延は無線区間のフレーム構造で決まる要素が大きい。このためSuper 3Gの要求条件である低遅延を満たすには、設計時に十分な配慮が必要となる。

無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)には、低遅延かつ安価なネットワーク構築ができるようシンプルなアーキテクチャを採用する。例えば、システムが複雑になることを回避するためのチャネル構成の簡素化注意3やシグナリングの最適化注意4、制御遅延短縮を図るための無線リソース制御機能の基地局への分散配置などが有効な手段として考えられている。

Super 3Gの無線アクセスを収容するコアネットワークには、All-IPネットワークを想定しており、3GPPではこのネットワークの技術仕様の検討を進めている。All-IPネットワークをSuper 3Gに導入する時点で、4G無線アクセスの収容が可能な構成としておけば、4Gの導入もスムーズに進められる(図4(a))。

また、Super 3Gは現行の3Gを置き換えるものではない。したがって、Super 3G端末は現行の3G機能も備えたデュアルモード端末になることが前提となる。通信エリアは3Gエリアにオーバーレイする形態で段階的に導入を進めていく(図4(b))。

図4 ネットワーク構築例

一方、Super 3Gはパケット交換サービスのみを対象としている。現行の3Gネットワークでは回線交換とパケット交換サービスの両方を提供しているが、Super 3Gはパケットネットワーク上のVoIP(Voice Over IP)注意5によって、回線交換サービスと同等のサービスを提供できるネットワークの実現を目指し、システム効率の向上を図る。

ただし、実際にサービスとして提供するか否かは各移動通信事業者の判断に委ねられている。回線交換ネットワーク設備を効率的に運用できる限り、サービスの提供は必然ではない。長期的には現行の3GシステムをSuper 3Gに全面移行することも可能である。これによりサービス展開や通信設備の経済性を考慮して、単独のパケットネットワークによる運用を移動通信事業者が判断することができる。

  • 注意1 直交周波数分割多重:デジタル変調方式の1つであり、マルチパス干渉への耐性を高めるため、高速な伝送レートの信号を多数の低速な狭帯域信号に変換し周波数軸上で並列に伝送する方式。高い周波数利用率での伝送が可能である。
  • 注意2 MIMO:複数のアンテナを用いることにより高速化を図る技術。
  • 注意3 チャネル構成の簡素化:パケット伝送に最適化したチャネル構成とすることにより、チャネルの種類およびチャネル間の遷移パターンを削減すること。
  • 注意4 シグナリングの最適化:冗長性を排除し、シグナリングビット、シグナリングシーケンス数の削減により高速かつ簡易なシグナリングを実現すること。
  • 注意5 VoIP:IPネットワーク上で音声データを送受信する技術。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.14 No.2に、掲載されています。