メディア系付加価値サービスを提供するメディア処理ノードの開発〜1.まえがき
映像、音声やテキストなどのメディアデータを活用したさまざまなサービスが提供される中、ALL-IPネットワークの構築やLTE(Long Term Evolution)1の導入により、高速回線を活かしたマルチメディアコミュニケーションサービスの実現が可能となる。またこれに伴い、新たなメディア系コミュニケーションサービスをいち早く実現し、新たなネットワークの付加価値をユーザへ提供することが求められている。
新しいメディア系コミュニケーションサービスを提供するために、サービス提供システムは拡張性をもち、容易に機能追加が行えるような構成であることが望ましい。このような要求を実現するため、メディア系サービスに特化し、ユーザに対する付加価値を提供する機能を具備したメディア処理ノード(MPN:Media Processing Node)を構築した。MPNでは、音声、映像およびテキストをメディアデータとして取り扱う既存のサービス(表1)を集約し、ユーザへ提供するとともに、新たなメディア系サービスを生み出すことを可能とするシステム基盤を具備している。さらに、MPNではこのような基盤を構築するにあたり、新たな設計方針の下に開発を行ってきた。
表1 MPN上で動作するサービス | |
メディア | サービス名 |
音声 | メロディコール 留守番電話サービス モバイラーズチェック 衛星クレジット公衆 |
映像 | 映像留守番電話 映像ガイダンスサービス |
テキスト | ショートメッセージ ショートメール |
これまでは、サービス単位で制御を行うサービス制御部と、サービスに特化したメディア処理を実施するためのサービス部品に分割されていた(図1(a))。このような設計方針は、個々のサービスに特化したシステムの最適化という観点からは有効であるが、複数サービスを導入するために開発期間とコストがかかるというデメリットもある。
一方、今回MPNでは開発期間の短縮を目的として、サービス単位でサービス制御部とサービス部品を配備するのではなく、それぞれのサービス制御部がサービスを実行するうえで、必要なサービス部品(イネーブラ*2)を共通的に活用するようにしている(図1(b))。またMPNでは、市場の優れた汎用技術を取り込むことができるようなシステム設計方針に基づいて、システム構築を行っている。
本稿では、メディア系付加価値サービスを提供するにあたり構築したMPNの構成ならびに新たな設計方針に基づいた開発について解説する。
本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.17 No.1に、掲載されています。