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車載向けFOMAテレマティクスモジュールの開発とネットワークへの機能追加〜1.まえがき

日本における携帯電話の契約者数が累計で1億契約を超え、一般の携帯電話市場が成熟期を向かえる一方で、自動販売機や決済端末などに組み込んだ通信機器を利用して、テレメトリングのようなデータ通信を実現するマシンコミュニケーション市場は、需要がますます高まっている。

そうした中、一般の乗用車やトラック・重機といった商用車などの車載向けマシンコミュニケーション市場においても、通信機能を有した車載通信ユニットを搭載し、事故の軽減や渋滞回避といった安心・安全サービスの提供、カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)と連携した車内マルチメディア環境の提供、さらには運行管理・遠隔監視などのサービスを提供するといった、ITS(Intelligent Transport Systems)注意1分野への利用が急速に進んできている。

こうした車載向けマシンコミュニケーション市場の需要に対応し、ITSのさらなる普及と新規ビジネスの展開を図るため、ドコモ初となるFOMAテレマティクスモジュールTM01-SA(以下、テレマティクスモジュール)を開発した(写真1)。

写真1 FOMAテレマティクスモジュール

車載環境においては、安心・安全への高い要件から、環境条件の厳しい中で確実に動作できることが求められるため、極めて高い耐久性、信頼性が必要とされる。テレマティクスモジュールは、このような過酷な条件にも適合できる点、車側の車両制御回路であるECU(Electronic Control Unit)注意2との接続インタフェースを有していることにより車両制御と連動した機能提供が可能となっている点が、通常の携帯電話やFOMAユビキタスモジュール®注意3(以下、ユビキタスモジュール)と違った大きな特徴である。

ドコモにてすでに提供している組込み型モジュールであるユビキタスモジュールは、パケット通信専用端末として、マシンコミュニケーション市場において利用されてきた。こうしたパケット通信機能に加え、テレマティクスモジュールは、車内におけるハンズフリー通話あるいは車以外にも組込み機器に内蔵した状態で通常の電話として利用するための音声通話機能や、カメラによる車両内外の遠隔監視やアルコールチェックシステムといったような映像を利用したサービスを実現するためのテレビ電話機能を搭載している。モジュール市場における適用範囲例を図1に示す。

図1 モジュール市場における適用範囲例

本稿では、まず、テレマティクスモジュールの概要について述べる。さらに、ネットワーク機能の高度化として、自動車の販売・流通(特に中古市場での再利用)時にスムーズな対応が可能となるSelf Activation機能について述べる。この機能を導入することにより、例えば故障モジュール交換、車両買い替えに伴うモジュール切替え、ユーザがテレマティクスモジュールを製品に組み込んでサービスとして利用開始する時点からの基本使用料金の課金開始など、ユーザニーズに合ったさまざまな運用条件に柔軟に対応することができる。

  • 注意1 ITS:通信技術を用いて、車両管理や道路交通などを快適にする交通システム全体の総称。
  • 注意2 ECU:自動車を制御するためのマイクロコンピュータユニット。
  • 注意3 FOMAユビキタスモジュール®:(株)NTTドコモの登録商標。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。