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さらなるビットコストの低減に向けたSuper 3Gの開発〜2.Super 3G(LTE)の動向

2.1 Super 3Gのねらいと位置づけ

HSDPAの導入により、W-CDMA技術を使用した3G移動通信システムは、数年にわたって市場の要求を満たし、他のシステムに対する競争力を確保できると考えられる。しかしながら、今後さらに伸びるマルチメディアトラフィックやユビキタストラフィックに対応するには、4Gを含めた長期的な技術進化が必要となる。4Gへの長期的な移行シナリオについて複数案を検討した結果、まず3Gを発展させ、そのうえに4Gを構築するシナリオが最適であると判断した(図1)。このため、ドコモはSuper 3Gのコンセプトを提唱した[1]。

図1 4G導入シナリオ

Super 3Gの目的は4Gへのスムーズな移行に加えて、W-CDMA方式の3Gを発展させることにより長期的に競争力を維持することにある(図2)[2]。

図2 Super 3Gのコンセプト

Super 3Gへの重要な要求条件は、データ速度の飛躍的な向上や周波数利用効率の向上だけでなく、「低遅延の実現」にある。低遅延を実現することにより、呼設定に要する時間(接続遅延)を短縮し、また通信中のデータ転送にかかる時間(伝送遅延)を低減することにより、TCP/IPなどのデータ伝送を高速に行うことが可能となる。

将来の移動通信の展望について議論しているITU-Rでは、2003年に「IMT-2000の将来の開発とSystems beyond IMT-2000のフレームワーク勧告M.1645」を承認した。この勧告には移動速度とデータ速度の関係が示されている(図3)。図に示すIMT-2000が3Gであり、System beyond IMT-2000の新しい能力が4Gで、現在IMT-Advancedと呼ばれている。また、Super 3G(LTE)はIMT-2000を拡張したもので、IMT-2000の枠内に含まれている。

図3 Super 3GとM.1645勧告の関係

4G(IMT-Advanced)では高い通信速度を実現するために、より広帯域で新しい周波数帯の割当てを期待しているが、Super 3G(LTE)ではIMT-2000用に割り当てられた追加帯域を含む周波数帯域を使用する。

Super 3Gは3Gの周波数帯域を使用するシステムであるが、W-CDMA方式が利用する5MHz以上の周波数帯域幅でも利用できる柔軟性のある運用を考慮に入れ検討している。導入にあたっては、設備投資や運用費用が安価で適正であることが前提となる。そのためには、無線ネットワークと移動端末にかかわるシステムアーキテクチャの複雑性を排除し、シンプルかつ安価なシステム構築を目指す必要がある。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。