さらなるビットコストの低減に向けたSuper 3Gの開発〜4.Super 3G試作装置および実験結果

4.2 屋内実験特性

(1)下りリンクスループット特性

1アンテナ送信時のMCS(Modulationand channel Coding Scheme)注意1をパラメータとした時の1受信アンテナ、1情報シンボル当りの平均受信信号電力対雑音電力密度比(ES/N0:Signal energy per symbol-tonoise power spectrum density ratio)に対するスループット特性の実験結果を図12に示す。ここで、帯域幅はSuper 3G(LTE)の最大帯域幅である20MHzを用い、チャネルモデルとしてはExtended Vehicular A 3km/h注意2を用いた。また比較のため、同一のチャネルモデルを用いた場合の計算機シミュレーション結果を併せて示す。図12より、シミュレーションに対し、実験結果における同一スループットを実現する所要平均受信ES/N0の劣化は1dB程度であり、シミュレーション結果とほぼ一致した妥当な実験結果が得られている。

図12 下りリンクスループット特性(1 アンテナ送信)

複数アンテナ送信(MIMO)を用いた場合のスループット特性を図13に示す。ここで、送受信アンテナ数はそれぞれ4つとし、ランク数をパラメータとした。チャネルモデルとしては、時速3km/hで、平均受信電力がパスごとに2dBずつ減衰する6 パスの指数減衰モデルを用いた。また、受信レベルに応じて最適な変調方式、符号化率を選択する適応変調(AMC:Adaptive Modulation and channel Coding)およびパケット誤り時に再送を行い、受信側で合成するH-ARQを適用した。H-ARQ方式としては再送時に誤り訂正能力を向上させるために異なる冗長ビットを送るIR(Incremental Redundancy)を用いた。その他の条件は図12と同じであり、アンテナ間のフェージング相関は0とした。図13より平均ES/N0=18dBにおいて、ランク2で100Mbit/sを実現できていることが確認できる。また、ランク4ではフェージング環境下において、最大240Mbit/sのスループットが達成できていることが確認できる。

図13 下りリンクスループット特性(複数アンテナ送信(MIMO))

(2)上りリンクスループット特性

MCSをパラメータとした時の平均受信ES/N0に対する上りリンクスループット特性の実験結果を図14に示す。ここで、帯域幅はSuper 3G(LTE)の最大帯域幅である20MHzを用い、下り同様チャネルモデルとしてはExtended Vehicular A 3km/hを用いた。また比較のため、同一のチャネルモデルを用いた場合の計算機シミュレーション結果を併せて示す。図14より、実験結果のシミュレーションからの同一スループットを実現する所要平均受信ES/N0の劣化は1dB程度であり、シミュレーション結果とほぼ一致した妥当な実験結果が得られている。

図14 上りリンクスループット特性

eNBからの正規化伝播損失に対するスループット特性を図15に示す。本実験ではeNBからの距離に対する正規化伝播損失を奥村−秦式を用いて計算し、信号減衰レベルを調整することによりeNBからの距離を等価的にパラメータとしてスループット特性を評価した。図15では、eNBからの距離が35mの地点における伝播損失を0dBとなるように正規化した値を用いた。ここで、UEの最大送信電力は24dBmとし、使用するRB数(割合て帯域幅)をパラメータNRBとした。また、送信電力制御には前述のFractional TPCを用いて、伝播損失に応じた送信電力を行い、さらに下りリンク同様、AMC、HARQを適用した。図15によりセル近傍においてはNRB=96(17.2MHz)の帯域を用いることにより、約50Mbit/sのスループットを実現できていることが確認できる。また、セル端のユーザは割り当てるRB数を少なくすることによりカバレッジの増大が実現できていることが確認できる。

図15 伝播損失に対するスループット特性

(3)遅延特性

Super 3G(LTE)の重要な技術的要求の1つである伝送遅延の短縮を検証した際の、遅延測定実験の構成を図16 に、pingコマンドを使って測定した往復伝送遅延を写真2に示す。往復伝送遅延は約12〜13msであり、eNB〜サーバ間の転送遅延やコアネットワークエミュレータ、サーバでの処理遅延を考慮するとSuper 3G(LTE)の目標値である片側伝送遅延5msをほぼ満足していることが確認できる。

図16 遅延測定実験の構成

写真2 遅延特性

  • 注意1 MCS:適用変調を行う際にあらかじめ決めておく変調方式と符号化率の組合せ。
  • 注意2 Extended Vehicular A 3km/h:3GPPで定義している移動環境を模擬したパスモデルの1つ。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。